美代 ベットの中で責任を取らせられる
あのまま蓮司の部屋にシーツ巻きにさせされて、拉致された。
真田さんの声が廊下に響いたのだけは覚えている。
「美代様 ありがとうございます!!」
いや、騙したので私なんだって! と思いながら、真田に答えたかったが答えようとした直後、口を蓮司の手で塞がれた。
「いま他の男の名を話すのは得策じゃないぞ。美代。ここで襲われたいか?」
野獣の目線が美代を殺す。
その後、このまるで新婚のように抱っこされてベットインさせられた美代は、甘いマスクと獣のような睨みで蓮司の質問責めに合う。
「美代、何故、一人の時間が必要なんだ……」
怪しい瞳で蓮司が見つめてくる。ただそれだけで身体が何故か火照ってくる。彼の潤っている唇を見ているだけで美代が何に侵食されていく。
「え、あっ、あああ、あのーー」
いまいち歯切れのない言葉で美代は答えた。
「何故だ?……美代」
「答えられないなら身体に聞いてみるぞ」
「え? ひぃ! ダメ!」
蓮司がその大きな逞しい身体を美代に寄せた。その唇が美代に堕ちていく。悪魔の口付けだ。
「答えろ……美代……何故なんだ?」
「ああ、だって、蓮司が……いつもいるから!」
「……どこにだ?」
「ひぃ、だめぇ……」
「答えろ、美代、どこに俺がいる?」
「いや、蓮司!」
「お前が答えるまでやめないぞ」
美代は蓮司の嵐にようなキスを受け続け放心状態となる。
「隣に、いつも、わたしの隣に、い、いるから」
「ふふ、やっと言ったな。でも、なぜそれが困るんだ?」
「だって……ひぃ、いや、蓮司が……」
「俺がどうした?」
「……過ぎるから!!」
「なんだ、聞こえん……」
段々ヤケになってきた美代が叫んだ。
「や、優し過ぎるから困るの!!」
蓮司の美代の曲線の身体をなぞっていた指が止まる。
「優しいから?」
「…………ひっく、そう、イジワルなのに、や、優しくて、ひっく、ムカつくんだけど、ひっく、なんだが、よくわかんない!!えーーーーんっ」
しゃっくりなのか泣きべそなのかよくわかんないような美代の訴えが続いた。
蓮司は美代の頭を優しく撫で始める。
「俺はお前とずっといるって言ったよな?」
「それが、困るんです!」
「どう困る……?」
「………そ、そんなの、聞かないで、欲しい」
「何故困るんだ? 俺はお前が好きなんだ。仕方がないじゃないか?」
「そんなっ、信じられ……ない…!!」
美代は蓮司によってベットの上で骨抜きにされた。彼の愛の告白は永遠に続き、その熱い眼差しを熱量が美代を粉々にさせていく。
「蓮司………もうダメ……」
「わかったか? 俺がお前を愛しているとわかったのなら、ここで辞めてやる……」
ベットの上でぐったりとしている美代はこくんっと美代は頷いた。もうそれしか気力がない。
「……くそっ。ある意味残念だな。俺は最後までお前としたいんだぞ……」
美代の身体がびくんっと硬直する。
「……ふっ、まだダメか。子供だな……美代は」
急に真剣な蓮司が美代を見つめる。そして、一度立って、何か戸棚から出した後、またベットに戻ってきて美代の胸の真ん中あたりにその大きな手を置いた。
急に胸近くに手を置かれ、美代は慌てた。
「……か、会長! 何?」
「……美代、お前のここに……俺がいつもいたいんだ。そして、こうやって、いつも裸で抱き合いたい……」
その蓮司の手から心臓に直接体温を感じる。
「!!!」
蓮司の置かれた大きな手の下の心臓がきゅんと痛くなる。
「……自分に許すか? ……ここに……俺のスペースを作ってくれないか」
「スペース? い、意味わかんない!」
温かさを感じる手の重みで、美代はいま蓮司が自分の急所を知っているのだと確信した。
先ほどとは違う恥ずかしさが身体を駆け抜け、顔に赤みが走る。
「な、何言ってんですか? 蓮司は?」
「ふ、お前はおかしいな。蓮司と呼び捨てしたかと思ったら、急に会長になったり、なんだかローラーコースターに乗っているような気分だ」
美代をまた蓮司が抱きしめた。
「他の男のところに行くのは許さない……それだけは無理だ。そいつを殺すかもしれない」
「え! 会長、物騒過ぎます!」
「真田のベットに行った件、責任取ってもらうぞ……」
「え、はい、今ですか?」
美代はものすごい痛みを耳に感じた。その時、指先にもなにか感じだが、耳を噛まれた痛さが勝り美代は全く気がつかなった。
「イ、イターーーーイ」
蓮司が美代の耳を噛んだのだ。鉄のような味が蓮司の口の中に広がる。
「なんでだろうな。こんな血の味でさえ、お前のものは甘く感じる……」
すらっと通った鼻梁を美代の首筋に寄せながら蓮司が話す。
「これがお前の今回の責任だ。了承するか?」
「痛いですよ!! 会長! もう! でも、これで済むならありがたいです。いいですよ」
「本当か? 今なら撤回というか余地をやってもいいが……」
「え? いいですよ。女に二言はないです。今ので結構です」
なぜか悪魔の笑みを見た様な錯覚を覚える。
え、なんか間違えたのだろうか? そりゃー痛かったし、多分、耳は切れているよ。見なくてもそんな感じがする。顔がたこ焼き状態の真田さんに比べれば、全く穏便な措置だった。だが、そんな気持ちも次の蓮司の言葉で吹き飛んだ。
「ああ、美代。とうとうお前は俺のもんだな…。これから気をつけて行動してくれよ……俺の愛しい婚約者さん」
は?
何をおっしゃるの?
とぼけた御曹司?
こ、婚約者って誰ですか?
咄嗟に寒気が襲う。先ほどの指先の感覚を思い出した。
どうしよう、自分の手が怖くて見れない。
だが、満面の笑みの蓮司が下を見ろと促してきた。
ま、まさか!!
それでも、なにをふざけた事を言っているの?と言い返したいがために、思い切って下を見た。
「な、なんでかな……幻覚がみえるんですけど……」
「何言っているんだ。今、お前が了承したって言ったじゃないか? 二言はないんだろう?」
大豆、いやなんだろう、そら豆よりでっかい透明の光るものが付いている指輪が私の薬指に付いていた。
「あの………これ……まさか……」
「まあちょっと普段遣いじゃないよな……。それはまあフォーマル用だ。こっちにカジュアル用もあるが、あとで適当にデザイナーを見繕って普段遣いのを作ろうな」
なぜか蓮司のバスローブのもう一個のポケットから、小ぶりと言っても本来なら規格外でもありそうな大きさの宝石がついたリングを出してきた。
「ぎゃーーーーーあーーー!!」
元祖、地味女の断末魔の雄叫びが館に鳴り響いた。