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忘れ物お届け係、ペンを届けて雇用主を救う

 蓮司会長の上に堂々と乗っかっている超美人の女性が切れる。


 「な、何あんたたち、入っているの! 失礼な!」


 なんとなく状況を判断した美代は、売られた喧嘩を買ってしまう。


 「あんたこそ、何やってんだよ。この化粧濃いケバケバ女!!」


 なぜかその男を襲っている女がムカついて、啖呵を切ってしまった。


 やばい。そんなつもりはなかった。でも、喧嘩は続いてしまう。

 「あんたこそ地味女の配達員のくせに、こんなところに勝手に入ってきていいと思っているの?」

 まさに、盛りのついた猫のように、そのタイトな洋服で胸をあからさまに誇張し、フェロモンむき出しのまま女が喚く。


 「ああ、いいんだ。俺が頼んだ」

 バリトンの低い男の声が、部屋に響く。しかも、微かに笑っているではないか?


 なに? やっぱりお邪魔だったのだろうか? あと、なんでその地味女っていう肩書き入れるんだ。必要なくないか?


 彼の白いシャツは、ボタンが外れ、前の胸が色っぽく開けている。

 蓮司は手を出し、美代からペンが入っている紙袋を受け取る。


 「ありがとう。助かった」


 美代は蓮司が違う意味で『ありがとう』と言ったのではないかと感じた。


 その後、女は恥ずかしくなったのか身を整えている。もちろん、ご案内という名目で警備員たちが下のロビーまで見送ることになった。しかし、フェロモンむき出しの女性はセリフまで残していくことを忘れない。


 「蓮司さん、今日はまた邪魔が入ったから、また今度ね……」

 軽くウィンクをして、その女性は出て行った。もちろん、私に対して睨みを忘れない。


 蓮司は自分のネクタイをぎゅっと直すだけで、なにも言わない。


ーーあれ、もしかして、本当にお楽しみだったのかしら……それは、大変悪い事をしたかもっと、ちょっと反省する。


 だが、この一件から、この私の『忘れ物係』が、なぜか秘書たちのおねー様方から、『地味女、よくやった』となぜか褒められる。て、いうか地味っていう形容詞いらなくないか? と、疑問に思うが、まあそれは置いておいて、秘書室前を通るとみんな最高の笑顔を向けられるようになってきた。


 しかし、一番の問題点はここではない。最近、会長様はもっと忘れ物がひどくなってきたような気がする。女よけのレベルではない。なぜか毎日呼ばれる日々。正直、こんな忘れっぽい男が、あの大原財閥の総裁って、まずいんでないか。


 学校が終わってホッとしているのもつかの間、必ず呼ばれる。大学の講義と講義の間に呼ばれたりと、とにかく忙しい。幸い、私の大学は、大原家の本宅と蓮司が主にいる会社のちょうど中間にあり、まあ渋滞がなければ、車で15分ぐらいの距離だから助かった。必ず伊勢崎さんが送り迎えをしてくれる。


 ファイル、ネクタイ、またお気に入りのペン、書類、本、財布など、なぜ忘れるんだと首をかしげる。予備ぐらいオフィスにないんですかと言いたいが、いつもそれで真田と一悶着だ。


 しかも、ときどきやっぱり女が絡んでいるところに遭遇する。幸い、絡みだけの目撃で済んでるが、忘れものがなければ、こんな場面に会わなくて済む。


 いやー、他人のイチャイチャなんて、見たくもございませんから、どうぞ会長様、お忘れないものはないようによろしくお願いいたします。


 そんなことを心に思っていても、まったく眼光がするどい会長の前では、借りてきた猫のようにおとなしい私。(まあ啖呵切っちゃったこともあるけど……)


 はぁーーっ。本当に忘れ物はよしてほしい。by 忘れ物お届け係






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