宇宙人に失礼でした
どうやら、この大原家での生活はどう考えても、長引きそうだった。
ただ、ひたすら甘い。
この砂糖大盛り地獄のような蓮司が毎日迫ってくる。
甘さに胸焼けを起こしそうだ。
それを真田さんに漏らしたら、
「ああ、青春ですね~~」
などと言い放つ。
もうね、あなたには正直期待していないです。真田さん。だって、青春なら普通、ラブラブで、相手の意思を尊重し合うと思う。まあ、そんな経験ないけど、イメージ的にはちょっと喧嘩して、「ナニナニ君、バカーー!」とか言って、相手が「ナニ子、大好きだーー!」とか言い合いながら、お互い成長するんじゃないのか?
いや、待て。似たような会話しなかったか? 誰かさんと?
冷や汗が出てきてしまう。
気のせい、気のせい。
あの大魔王はそんな甘ったるい青春なんて言葉、合いません。
何故なら、蓮司のそんな甘さも一度、アパートに帰りたいっと言っただけで、「約束を守るってことは人間大事だよな」と、言いながら、鬼蓮司が現れるのだ。
あ、正確に言えば鬼エロ蓮司だ。そうなったら、手に負えない。手当たり次第、またあのマークを付けられて、羞恥プレイが繰り返される。
これになると、もう自分の脳みそも溶け出して、信じられないような声が、自分から出てしまう。
恥ずい!
物凄い。
何度もそんな声が出ないように自分の精神統一が一番と思い、そろばんの「ねがいましてーっ」とか、「寿限無寿限無……」とか、色々な呪文を唱えたが、まだその効果は出ていない。
口から漏れるあられもない声を出す自分にムカつく。まだ、寿限無では、海砂利水魚まで言葉がたどり着かない。
しかも、あのオンボロアパートはすでに、私が去った、いや、巻き寿司女状態で連れ去られてから、その日のうちから解体作業が始まったと真田から聞かされた。荷物があんまりないせいで、ものの30分程度で全て大原の家に収納される。
つまり、帰るところは無くなったのだ。
「真田さん、はっきり言いますけど、これって拉致監禁って言うじゃないですか? 絶対そうですよね」
この曲者、同僚に闘いを挑んだ。蓮司には言えないことをこの人にぶつけてみた。何か打開策が見えてくるかと思ったからだ。
「あははは、美代様、日本語が間違ってますよ。そう言うのは、所謂、同棲生活って言うんです」
「…………」
おい、出た。もう怖いものが何もない。
どうやらこの大原財閥のお屋敷、勘違い大魔王が住んでいるようだ。
「あ、間違えました。大変申し訳ないです」
物凄い申し訳なさそうに頭を下げた。
そうだよね、そういう態度が正しいと思うよ。
監禁しているのやっと気がついた?
学校には行かせてもらっているけど、SPの皆様に見られている感、マジあるよ。絶対に見張っているよね。
ここで何かの希望が見えた。そうだよね。間違っているよ。あなたの日本語!
「まあ、美代様も気分を直してください。それは新婚生活って言うんです」
なぜ悪化!
真田さん、もうあなたね、日本人とは呼ばない。宇宙人だよ。絶対。
あっているの四字熟語以外、全て違うから!
そもそも結婚なんてしてないし、どうしてくれるんだ、この状態。
あ、それは宇宙人に失礼かっと真剣に考え込んだ美代だった。