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お赤飯は、要らないと思います

 早朝の光が差し込んでいる。

 恥ずかしさで死にそうな私が大原家の門をくぐる。

 な! なぜかいつもよりも数の多い人数の使用人が玄関口で並んでいた。

 こんなに数がいると知らなかった。その中に、見覚えのある顔を見つけて、さらに顔が熱くなる。


 「お帰りなさいませ。蓮司様、美代様」

 「うむ。帰った。状態はどうだ? 真田」


 燕尾服をきちっと着こなしている眼鏡男が答えた。


 「全て整っております。今現在、美代のお荷物をお運びいたしますので、それはすぐに終わる予定です」

 「わかった。ご苦労」


 どんどん屋敷中に連れて行かれて、例の蓮司のプライベートな空間に辿りつく。白いソファにシーツの寿司状態で降ろされる。横から山川が『ちょっと』と言って、蓮司を連れていく。だが、巻き寿司女に一言忘れない。


 「動くなよ。わかっていると思うが……」


 わかっているよ。うごけないよ、手も足も塞がれてんだ。自由になりたいが、そうしたら裸になってしまう。

 猛獣が去った後、ドアを出ようとしていた真田さんを呼ぶ。


 (真田さん!!)


 私の呼び声に振り返った真田が、仕方がないといった顔をしながらこちらにやって来た。


 「さ、真田さん! 蓮司会長が! 勝手に、連れてきたんです!!」

 思わず同僚のよしみで助けてくれるかもしれないと望みをかける。


 「……まさか、ご冗談を、美代様」

 「マジです。マジです。真田さん!」

 「うーーん、あ、美代様。質問されませんでしたか?」

 「え?」

 あの一緒に住もう宣言みたいなやつ? そうなの?

 「まあ、されましたけど、返事しませんでした。と言うか返事する暇なかったです!」

 「あーー、残念ですね。それは、承諾って意味です」

 「なっ! 真田さんまで、そんなこと、ひどい!!」

 「美代様、ここまで来ちゃいますと、私としても、手の施しようがなくてですね~。申し訳ありません」

 「ええーーーー、そんな同僚のよしみで助けてくださいよ!」

 「大丈夫です。いざって時には、必ず美代様のお力になりますから! あはははっ」


 え! 何、その笑い!

 今、だから、そのいざって!!

 何度も言いたい! ピンチは今なんです!

 あ、思いだしたよ。真田さん、難聴だったよ。


 真田がそんな風にいなくなってしまったので、その後、床の上をゴロゴロ転がってシーツから脱出しようとしていた時に、蓮司が帰って来た。


 その哀れな子供を見る目で見ないでほしい。寿司巻きにしたの、貴方だから!っと言いたかったが、自分の状態を考えて言えなかった。

 散々揶揄われながら、シーツを巻き取られた。はあ、やっとシーツから解放された。明るいところでシーツを取られたから、恥ずかしさのあまり、バスルームに走り隠れ込み、目の前にあったバスローブを羽織った。また出たら、イタズラされそうだったので、『学校に行くから!着替えぇ、ください!』っと、連発して着替えをやっとゲットした。


 洋服ってすごいよ。こんな安心するんだっと感動して、ホッとしていたら朝食を食べようと言うことになる。だが、ダイニングの様子がいつもと違う。いつもいてくれているメンバーがいない。いや、正確にはいる。松田シェフは厨房だし、真田は何故か壁際に立っているだけなのだ。伊勢崎さんは見当たらない。時々、誰かと話すために真田が抜けたり入ったりしている。どうやら、サシで会長とご飯らしい。


 今日は朝から和食のようだ。だが、普段、家庭の朝食に絶対出ないものが並んでいて驚愕する。

 しかも、なぜ、朝から赤飯。

 祝い事、あったのでしょうか?


 「何故に赤飯なんですか?」


 聞くのをよせばいいのに、開いてしまった自分の口が呪わしい。


 「……バカ、美代。昼間っからそんなこと聞くなよ」


 顔を赤らめた蓮司がホクホク顔で赤飯を食べている。

 おい! そちらさんが勝手に赤飯出したんだよ。しかも、壁際の真田さんもね、その肩笑い、バレているから!



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