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ヒノモトノタビ〜東方軍人録〜  作者: イチ
第1章 甲斐国 2人の二等兵
9/17

お届け先:甲府城

米倉二等兵 主人公

長田軍曹 米倉の上官

竹中ミツト 商人。

陳レイ 竹中の護衛

甲斐国領内 町跡

神歴33年9月22日



長「起きろ米倉。出発するぞ。」


米「お、おはようございます!すみません、すぐ準備を!」


バックパックから朝食の煎餅と漬物を取り出す。

もう出発するという事は、歩きながら食べるのだろう。


ガチャ

管理人室に陳が入ってきた。


陳「様子を見て来た。もう象皮熊は居ない。

…さあ、旦那。起きて下さい。もう大丈夫ですよ。」


陳が竹中を起こす。


竹「ヒッ…ああ、朝か…。ずっと、夢の中で、あいつの鳴き声が聞こえてたんだ…。」


長「…」


米「大丈夫ですか?もうすぐ出発します。荷物をまとめて下さい。」


竹「分かりました…!」


急いで荷物をまとめる竹中。その様子を、陳は眉をひそめて心配そうに、長田は訝しげに見つめていた。


(何かあったんですかね…)

少し気にはなったが、考えている時間は無かった。


米「準備良し!いつでも行けます!」


長「了解。」


ドアを静かに開け、長田と陳はクリアリングをしながら入り口へ向かう。

64式小銃を素早く動かし、咄嗟の事態に対応できるようにする。


長「異常無し。」


陳「こちらも異常無し。」



外に出ると、朝日が目に滲みた。思わず手をかざしてしまう。

(あんな暗い所で寝ましたからね…仕方ない。)


長「良し。

いいか、ここからは建物や瓦礫が多くなる。気をつけて歩けよ。」


米「了解!

みなさん、朝食です。足元に気をつけながら食べてください。」


皆に煎餅と漬物を渡す。


(城だったらジャムが有るんですけどねぇ…)


足元に注意を払いつつ、歩きながら煎餅を頬張る。


昼頃には甲府に着くだろう。



◇ ◇ ◇ ◇


甲斐国甲府城



「着いた…!」


石や廃材で造られた壁の中に入る。

中は城下町が広がっていた。奥に甲府城が見える。


倒壊したビルから資材の切り出しをしている者、商売小屋を出す者。走り回る子供。

新府城とはまた違った活気だ。


米「私、初めて甲府に来ました。いや〜、大きいな…」


長「感動している所悪いが、予定より遅れている。早めに情報部隊長の下へ向かうぞ。」


長田が歩き出す。


米「了解です!」


陳「俺たちも行くのか?」


長「ああ、一応。」



城壁ではためく旗に描かれているのは武田菱。

甲府城についた。


長「新府城から来ました。長田軍曹です。」


門兵「ああ、話は聞いている。通れ。」


鍛冶曲輪門かじくるわもんから中へ入り、階段を登りきった所を左へ曲がった。

情報隊舎に入る。


長「新府城から来ました、長田軍曹です。情報部隊長はおられますか?」


「あちらの隊長室におります。」

近くにいた一等兵が答える。


長「ありがとう。2人はここで待っていてくれ。」


竹中と陳が頷く。


(渡す荷物を出しておこう)

布に包まれた銃を肩から下ろし、バックパックから書類を取り出す。


コンコンッ ガチャ

長「入ります。

新府城第2歩兵分隊所属、長田軍曹です。荷物を届けに参りました。」


「よく来た。予定では昨日だったが…まあ急ぎではない。」


苦言を呈されてしまったがら長田は表情を変えない。

気にする様子も無く、 情報部隊長が銃に巻かれていた布を取り始めた。


「さて、鹵獲した銃をここに送るということは…ああ、95式歩槍…か。やはりなぁ。この文書の内容も大方予想がつくよ。」


長「野盗の1人が持っていました。ですが斥候にしては…」


(長田軍曹はもう予想が…?)


「マヌケ。だな。だが奴らはそんな真似は絶対にしない。宣戦布告と考えても良いかもしれんな…っと、まあ今のは忘れてくれ。」


米「…失礼ですが…奴ら とは一体何なのですか?」


長「米倉ァ‼︎」

米倉は一度ビクッと体を動かしたが、すぐに真っ直ぐと前に視線を戻した。


「良い。知りたがるのが若者の良い所さ。

奴ら、とは【共産主義者】の事だ。我々の自由主義的な考えや日本帝国の帝政とは相容れぬ思想を持つ者達なのだよ。」


長「申し訳ありません!出過ぎた真似を。」


「気にするな。今後も君は奴らと交戦するかもしれん。

だが奴らは獣蟲や無法者では無い。

これだけは忘れるな?『正義の敵はまた別の正義』なのだと。遠い昔の言葉さ。」


ジリリリン!

電話が鳴る。

「ちょいとごめんよ。」


情報部隊長は電話を取りながら何やらメモを取っている。


(『正義の敵はまた別の正義』…ですか。

最近新府城に送られる武器弾薬が増えていたことも絡んでいるのかな。)


チラリと長田軍曹を見る。


(鬼の顔ですね…)


だが、米倉と目が合うと一度目力を強めただけで、溜息をしながら前を向いてしまった。


ガチャ

「ふー…さて、このメモを外の2人に渡してくれ。

宿泊場所等が書いてある。」


長「了解しました。」

長田がメモを受け取った。



「君たちはこのまま司令の元へ向かってくれ。緊急の用事だそうだ。

…あと、君らの商人護送任務は取り消された。」


米「え」

思わず米倉が小さく漏らした。

ヒノモトノタビお読み頂きありがとうございます。


かなり危ないワードを出しましたが、いかなる団体、国家を貶める意図はありません。

今後ともよろしくお願いします。

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