唯の野盗に非ず
戦闘描写難しい…
読者にちゃんと状況が伝ってるかしら…
甲斐国 新府城付 C区農村
神歴33年9月17日
銃声が鳴り響く。敵が別動隊に向けて撃っているんだろう。
「この辺りか。止まれ!」
敵の側面まで到達した。
民家を挟んで敵と対峙する。
別動隊が引きつけ役となってこちらには気付いていない…筈だ。
民家の陰から立野上等兵は膝撃ち、自分は立撃ちの体勢をとる。
「お前は1番手前、おれは奥の奴をやる。1人やったらすぐ退けよ!」
ダンッダダンッ
上等兵の一発目の発射を合図に引き金を引いた。
敵の腹を撃ち抜くのが見えた…その矢先
敵の1人が瞬時にコチラを照準し突撃銃を発砲してきた。
ズドドドドッ
上等兵は私を遮蔽物の中に掴み入れると同時に、私を庇うように立ち上がった。
完全に敵の不意を突いてたはずなのに…
バスバスバスッ
「立野さん‼︎‼︎」
立野上等兵が撃たれた!
半身が遮蔽物の陰から出ている。急いで引き込む。
「ぬぐっ、ウッ…さん付けかよ…」
良かった、まだ話せる。
傷口を確認すると、足に2発、腕に1発被弾していた。このままでは出血多量で死ぬかもしれない。
「立野上等兵、止血を行います。耐えて「いい…戦闘を優先しろ…」
どうしよう、どうしよう、迷いが思考を停止させ、感覚が鈍くする。
背後から聞こえる足音に気付けない程に。
「ゔ…後ろっ!」
立野上等兵に言われ、ハッとなり振り返る。小刀を持った野盗がこちらに走り寄ってくる。
「ぅっ、うわ」
初弾発砲からそのままだ。
銃を取って排給弾する時間は無い。
「キェエエエアアアア‼︎‼︎」
野盗が奇声を上げる。奴は小刀を突き刺すように持ち直した。
覚悟を決めなくては。
「うおおおおオオオ‼︎‼︎」
自分を奮い立たせるよう叫ぶ。
右手でナタを持ち、左肩の辺りに右手拳が来るように構える。
左腕を胸の前に位置し、防御体勢をとり、若干前屈みになりながら足を踏みだす。
ズムッ「ぐっ、」
敵の小刀が左腕を刺し抜く。
それと同時にナタを振り抜いた。
ざグリ
刃は野盗の首を捉える。だが、斬り落とすまではいかずに途中で止まった。
敵は白眼を向き、半笑いのまま息絶えた。
「たっ、立野上等兵!血が…飯野!大丈夫か⁉︎」
米倉だ。野盗の制圧は終わったのか。
良かった…
安堵した途端、体が重くなり足に力が入らなくなる。だんだん視界が狭くなっていった。
◇ ◇ ◇ ◇
甲斐国 新府城 衛生室
結局気を失ってしまった。
あの後立野上等兵と私は駆けつけた衛生班の処置を受け、今は順調に回復している。
あの時は気付かなかったが、自分も被弾していた。
別動隊では怪我2名、戦死1名だそうだ。あまり関わらなかった人だった為か、イマイチ実感が湧かなかった。冥福を祈りたい。
米倉に聞いた所、野盗が蹴破ろうとしていた倉庫には、数名の子供が居たとのこと。新府城で世話をするそうだ。その子らを護るために戦った村人たちに敬意を表す。
突撃銃を持っていた敵…すなわち立野上等兵を撃った奴はただの野盗では無かったらしい。
米倉が言うには、今まで見た事の無い銃を所持し、胸ポケットには赤地にレンチとクワが描かれた布が入っていたそうだ。
長田軍曹はそれを見て怪訝な顔をしていたと。
一体それが何なのかは分からない。
ただまあ、初戦は生き残れたんだ。それを喜ぼう。
いずれにせよ原隊復帰はまだ先だ。
そう思い、ベッドで寝ている立野上等兵を横目に眠りについた。
ヒノモトノタビ 読んで下さりありがとうございます!
次話から主人公が米倉二等兵になります!
よろしくお願いしますm(__)m