終戦記念日にはほうとうを
登場人物
飯野ユウジ 二等兵 本編主人公
立野リュウヤ 上等兵 飯野の世話役
甲斐国 新府城
神歴33年9月16日
長い列を並び、ようやく夕食を受け取る。今日はほうとうだ。
「ずいぶんと豪勢な食事ですねぇ。今日は何かありましたっけ?」
「バッ…カお前…今日は日本帝国との終戦記念日だろ?」
そうだ忘れていた。今日は日本帝国との和平から丁度5年目だ。
「あ〜〜、そうでしたね。あの頃はガキでしたし、実感湧く前に終わりましたからね〜」
「それも上官方のおかげだろ?まったく、しっかりしてくれよ…」
ズゾゾ
会話を止め、ほうとうを啜る。
座学で習ったな…
…日本帝国。旧東京、埼玉及び神奈川北部を支配する帝国だ。
元々小さな地下都市国家だったが、東京メトロ全駅を掌握したことにより力をつけた。
現在は積極的に地表にも拠点を置き、他勢力の取込、制圧を繰り返している。
真偽は定かではないが、『神皇』という存在がいるらしく、自国を前日本国の正式継承国だとしている。
しかし、西にあるという「大和神国」も、『天の帝』の存在から同様の主張をしているそうだ。
まあ、意見がぶつかっても遠すぎて戦争にもならんだろうが。
ズゾゾ ズズッ
「しかし、先の戦争で我が国は帝国の直接的支配は受けずに済みましたけど、結局工業品関係は頼っている部分が多いですよね。」
「んまーね。それでも ウチはウチ!ってとこ守れたのはデカイと思うがね〜」
そう言うと立野上等兵は汁を飲み干す。
マズイ、早く食べ終わらなければ!
「うちが帝国に勝てた理由って言えば、
周りを囲む自然要塞 山!
負けしらずの最強騎馬隊!
そしてなにより…」
ジジジジガ〜ジジッジジッ
救援信号だ。
「警報発令。C区の農村が野盗に襲われている。
規模は不明、野盗は銃を所持しているとのこと。
現地警備兵が対処中。」
たしか騎馬隊は出払っているよな…
「第2歩兵分隊、狙撃第1班、衛生第1班出撃用意。大手門前。」
「さあ出番だ飯野!行くぞ!」
「はい‼︎」
急いで具ごと汁を飲む。申し訳ないが片付けは他の者に任そう。