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ヒノモトノタビ〜東方軍人録〜  作者: イチ
第2章 鎌倉 Remember YOKOSUKA Harbor
16/17

鋼の剣

鎌倉 横須賀基地

神歴33年10月6日



「ほら!あともう少しだ!走れ!」


ダダダン ダダダッ

後衛部隊の援護射撃に守られ、アンナはなんとか仲間の元まで走った。


「ハア…はぁ、グスッ…ハァ…」


息が切れ、涙が息を整えるのを邪魔する。


生き残った前衛部隊は6人。ほぼ壊滅状態だ。


「キツイだろうが、我々は少しずつ後退する。

腰を下ろす暇はないぞ。」


後衛の小隊長が生き残りに告げる。


(やっぱり…こんなの無理なんじゃ…)


そう思った矢先、近くから聞き覚えのある声がした。


米「話を聞いて想像していたものより、よほど恐ろしい獣蟲達ですね。」


長「銃撃も通らん。投函物は返される。と、なると…」


米「あれしかないですね。」



列車で話した甲斐国の調査員だった。


柊「な、なんであなた達がここに⁉︎」


長「視察の一環だ。ただ、このままだと我々にも被害が及びそうだからな。手伝おう。」


それを聞くと、米倉は苦笑した。…



◇ ◇ ◇ ◇



村「すいません、横須賀基地も視察しようと…」


「はあ!?今日軍事作戦が行われると、あそこは危険だと申し上げたでしょう⁉︎」


村「いやほんとすいません。ボクモトメタンデスガ。」


「何てことだ…おい!後方部隊から数人引き抜いて、正面ゲートへ向かわせろ!車両も回せ!

調査員を死なせたら全員の首が飛ぶぞ!


…ったく。こんな上しかいない国と同盟なんて…」


村(ほんとに人員は不足してるんだな。

…2人とも死ななければ良いが。)



◇ ◇ ◇ ◇



米「村井中尉なら上手くやってくれますね。」


米倉はボソリと呟いた。



柊「こんなとこ来てなんなの?もう…無理よ…」


長「そうか。なら銃をよこせ。他の者!戦えぬなら我々に銃をくれ。後…爆弾だ。」


小隊長「待て、急に来て一体なんだ?」


長「我々は甲斐国の調査員…もとい軍人です。

このままでは作戦を成すことは出来ぬと我も認識しています。」


小隊長「…そうだな。で、その甲斐国の軍人とやらが何をする気だ。」


長「入り口付近の建物上階に突き出た突起物がありました。

根元を爆破すれば道に落とせます。あの蟹にうまく当てられれば…敵は後退するでしょう。」


小隊長「それをやると…?なぜ、あんたが。」


長「…昔、あんたと同じような思いをしたんだ。」


小隊長はこの作戦を立案した上層部に憤りを感じていた。それを見透かされたのだ。


小隊長「…わかった。この信号銃を。

爆破準備できたら鳴らしてくれ。それまで後退はギリギリのぺースで行おう。」


長「了解だ。」


2人の前衛部隊の兵士が武器を渡した。


長田にはM16A3

米倉にはM4


柊「みんな!私に爆弾を!

…お願い、私も行くわ!荷物運びでも何でもやるから!」


なぜこんなに必死になったのか。ただ、行かなければいけない気がした。


米「いや、危な「いいぞ、来い。」え。」


柊「ありがとう。」


長「よし、行くぞ。米倉、走りながらバックパックから紐を出しとけ。」


米「はい。」


3人はゲート入り口に向かって走り出した。



米「言っていいのか分かりませんが…アンナさん切り替え早いですね。」


柊「自分でも驚いてる。…きっと神の思し召しね。」


絶えず銃声が鳴り響く。

(みんな頑張ってる…)


長「ここだ。」


見ると塀の向こう、すぐに建物があった。

上へ目を向けると、巨大な剣のような物が突き刺さっていた。


長「あのハシゴが見えるか?爆破準備が出来たらあれで下に降りるからな。」


米「了解!

足場になります。塀を越えましょう!」


米倉は塀に背中を付け、膝を曲げたアンナ。

長田は米倉の膝と手を足場に塀を登った。


米「さあ、今の要領でアンナさんも!」


柊「ご、ごめんなさいね。」


不慣れな面持ちで、塀を乗り越えた。

塀の上に残っていた長田は、米倉を引き上げ建物へ向かう。


遠方からグロブスタが近づいてくるのが見えた。


(ここから降りたらまた戦闘ね…)


長田・柊・米倉の順で建物内部に入った。目的階は4階。

階段を駆け上る。


段々銃声が近づいて来た。(急がなくちゃ…)


ハア…ハア…


階段を駆け上がり、息が切れる


(キツイ…後1階…)


目的階に着いた。いくつかオフィスのような部屋がある。


長「あの部屋だ!」


1番奥の部屋へ入る。


そこには、あの突起物。

巨大な剣…であれば刃先の部分が壁から出ていた。

だが、驚いた事に、人が入るようなスペースがある。


(何これ…)


長「恐らく航空兵器というものだろう。」


そう、突き刺さっていたのは、航空自衛隊の戦闘機F-15だった。


長「よし、米倉は隣の部屋の窓から外の様子を見てくれ。あとハシゴの状況もな。」


米「了解!」


長「あんたは爆弾を出しておいてくれ。」


柊「分かったわ。」


タタッ

米倉は部屋を出て、隣へ向かう。


長田は紐を伸ばし、細工の準備をしていた。


その時、


ダダダッダダダッ


「「‼︎」」


隣から銃声が響く。

とっさに長田はM16A3を持って走り出した。


バババババ ダダダッ


ガシャン バキバキッ


2つの銃声の後、何かが窓が割れ、何かが壊れる音がした。

足が竦んでいたアンナが隣の部屋を見ると、2人が割れた窓から下を見下ろしていた。


柊「どうしたの?」


米「隣にグロブスタが…

殺しましたが、奴が落ちる時にハシゴを掴み、そのまま壊していきました…」


長「階段を駆け下りる訳にはいかん。

倒壊の可能性が高い。」


米倉がチラリと外を見る。もう後衛部隊が見えている。


米「…時間が無い。何か手段を見つけます。

長田軍曹は爆弾の設置を!

行きましょうアンナさん!」


柊「はい!では私は向こうを!」


必死に脱出法を探る2人。

長田は手榴弾を各所に設置していた。

手榴弾のピンに紐を括り付ける。

そして、ギリギリまでピンを緩ませた。


アンナは各部屋を見回る。ロープを見つけたが、明らかに短い。


(何か!何か無いの…)


爆弾を設置した部屋の向かい側を調べる。


(ん?)


ボロボロのカーテンに隠れて膨らんでる箇所がある。


アンナは、窓際に何か設置してあるのを見つけた。

カーテン、ガレキやホコリを取ると文字が浮かぶ。


柊「Emergency escape bag…緊急事態袋?

このレバーで動くのかな…」


グッと力を入れるが、レバーはビクともしない。

そこに米倉が来た。


米「ダメだ…何か見つかりました?」


柊「もしかしたらこれで脱出出来るかもしれない!

レバーを引っ張って!」


アンナに促され、米倉はレバーを引いた。


ボンップシューーー


すると、布で出来た筒が地上まで伸びたのだ。


長「これを滑っていけということか。

破れなければ良いがな。」


手に紐を持った長田が後ろから声をかけた。


長「良くやった。米倉、紐を持っていろ。俺が合図したら、紐を引け。

そうしたら、そのままそこから降りろ。」


米「了解!」



長田が爆破部屋の隣から信号弾を発射した。


ヒューーー パン!


信号弾が鳴り響く

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