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ヒノモトノタビ〜東方軍人録〜  作者: イチ
第2章 鎌倉 Remember YOKOSUKA Harbor
14/17

京急路線道中談

お久しぶりです。

お盆で色々忙しかったです(言い訳)

ゴメンなさい…

「鎌倉」領内 輸送列車

神歴33年10月6日



ゴトンッ!!


1度大きく列車が揺れた。


柊アンナはハッとして顔を上げ、ふと窓に目を向けた。

丁度ボロボロの駅を通る所だった。


『京急富岡』


そう書かれた標識が過ぎていく。


(降車駅はまだ先ね。)


…あの日。横須賀が燃えた日。

グロブスタはかなり広範囲まで上陸し、三浦半島の大楠山・阿部倉山の麓まで進出した。


しかし元は海の生物。


現在は少数のグロブスタ歩哨が内陸部を巡回するに留まり、他の大部隊は横須賀基地及び海中に潜んでいるそうだ。


海に向かって突出している横須賀基地は居心地が良いのか。

それとも私達の武器がそこにあるのを理解しているのだろうか。


(…緊張してきたわ。)


アンナは上大岡駅かみおおおかえきの地下で受領した作戦要領を見返しながら、説明を思い出した。



◇ ◇ ◇ ◇



「諸君らが召集された理由は他でもない、横須賀の解放の為である!

周りを見渡してみよ!見知った顔も多いのでは無いか!?諸君らは自らの手で故郷を取り戻すのだ!」


「「オオオオオ!」」


「本作戦の説明を行う!

我が軍は奴等、グロブスタの発生源を特定した!」


「何…?」「一体どこだ?」


「それは、浦賀水道に半沈した航空母艦である!!」


「こーくーぼかん?」「たしか船じゃなかったかしら。」


「その破壊は容易では無い。しかし!それを成せる兵器が横須賀基地には有るのだ!

故に横須賀基地の解放が必要不可欠!!諸君ら予備役の力が必要なのだ!!」


「「オオオ‼︎横須賀‼︎解放‼︎」」


「目標の横須賀基地の入り口は3つ!

正面ゲート、三笠ゲート、ヴェルニー公園付近の裏口である!

諸君らは正面ゲートから突入し、敵に接触したならば、引き付けつつ後退せよ!

その間に正規部隊が他2つのゲートから進入し、敵の背後を取る!」


「引き付け役か…」「逃げるだけなら大丈夫じゃないかしら?」「やりましょう‼︎」


「後方には付近をウロつく敵の散兵への対処部隊もいる!安心してくれたまえ!

軍民一体でこの作戦を成功させるぞぉ‼︎‼︎

横須賀を忘れるな!」


「「オオオ‼︎横須賀を忘れるな‼︎」」



◇ ◇ ◇ ◇



(そう。私達は引き付け役。主な戦闘は正規部隊がやってくれる。)


あの日を思い出すと、怒りや憎しみが込み上げてくる。

だが、それと共に恐怖も。

やはり奴らと戦うのは怖い。


アンナは深呼吸して自分を奮い立たせた。


(仇を…とらなきゃ!)



ガラガラ


隣の車両から人が移って来た。3人の男だ。


(緑色の迷彩服?もう1人は…制服…将校かしら。)


昔、ハドソンの友人だという将校に会ったことがある。その将校が着ていたものによく似ている。


すると迷彩服を着た小柄の若い兵士が、アンナのすぐ後ろの席を指差した。


米「村井中尉、長田軍曹!向こうの席が空いてますよ!」


長「おう。

村井中尉、どうぞ」


村「ありがとう。」


3人がアンナの後ろに座った。


(聞いた事の無い訛り。鎌倉の人間じゃないわね。)


村「2人共お疲れさま。しかし、まあ…この乗り物は凄いな。」



…輸送列車

鎌倉は、戦争により途切れ途切れになってしまった線路や列車を修理し、再利用する事に成功した。

使用しているのは上大岡駅からの京急線下りと、上大岡駅から横浜駅までの地下鉄である。

鎌倉の輸送列車はその高い軍事・工業力を保つのに一役買っている。


長「横浜駅はかなり緊張していましたね。

横須賀では大規模な反攻作戦。人手が足らんのでしょうな。」


村「ええ。…あの外交官、急に作戦が早まっただの、まだ同盟を結べてないのにだのと呟いていたなぁ。」


米「丸聞こえでしたよね…」


(同盟…やっぱりこの人達は別の国の人ね。よし、聞いてみよっと!)


後ろに体を捻り、ひょこりと首を出す。


柊「こんにちは!ねえ、お兄さん方は何処から来たの?」


小柄の若い兵士が顔を赤らめながら答えた。


米「かっ、甲斐国から来ましたっ!ここここから北西にある国で…」


長「米倉。落ち着け。」


強面の兵士が半ば呆れ気味に諭した。


柊「驚かしてごめんなさい!聞いたこと無い場所だな。

あ、私の名前は柊アンナ。横須賀で農業をしてたんだ。」


米「アンナさんですね!私は米倉モトキって言います。

農業ですか。最近軍に入ったのですか?」


柊「ううん。私は予備役。今回の横須賀奪還作戦に参加するの。」


この時、村井は長田が怪訝な表情になったのを見た。


柊「私達の故郷を奪い返すんだ…!」


長「なあ、柊…と言ったか。持っている作戦要領を見せてくれないか?」


柊「え、ええ。どうぞ。」


長田が目を通そうとしたその時


キィーーーガタン


列車が停まった。


ドタドタドタ バン!


勢いよくドアが開き、鎌倉軍兵が入ってきた。


「第7分隊気をつけ!降車駅に到着した。

荷物をまとめ、すぐさま降りよ!

視察団の3人はこちらへ。」


(えっ、ちょっ、待って返してよ!)


なんと3人は先に降りてしまった。


(ああああ〜〜…バレませんように…)



◇ ◇ ◇ ◇



米「お、長田軍曹⁉︎それアンナさんに返さなかったんですか?」


長「ああ。色々と引っかかった。

…なんだ。もう惚れたのか?」


米「あっ⁉︎はっ!ほっ!?ほれ!?」


2人のやり取りを見て、村井中尉は困ったように笑っていた。



長「すまんすまん…

村井中尉。やはりこの国の保有武器は凄いですな。

予備役ですらあのレベルだ。」


村「ああ、M4…だったかな?確かにそうだね。」


長「だが上のレベルはどうでしょうかね。この作戦は余りに無謀だ。」


アンナの作戦要領をヒラヒラさせながら、長田は呟いた。


長「彼女を含め、正面ゲートの予備役は皆死ぬぞ。」

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