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ヒノモトノタビ〜東方軍人録〜  作者: イチ
第2章 鎌倉 Remember YOKOSUKA Harbor
13/17

左足の記憶

第2章突入!!

今章は戦闘多めになるかと思います。


「鎌倉」領内 輸送列車

神歴33年10月6日



酷く揺れる車内。

揺れに身を任す兵士達。

誰1人として口を開かないが、その顔ぶれは女性や初老が目立つ。


その中に1人、赤毛の若い女性がいた。少し大きめの青迷彩服の名札には

『柊 アンナ』。

彼女は鎌倉軍予備役である。


彼女は左足の痣をさすりながら、半年前の忌々しい記憶を反芻し、その瞳に怨嗟の炎を燃やしていた…


◇ ◇ ◇ ◇

ー半年前ー


彼女は、横須賀郊外にある大農家の娘だった。

両親が必死で守ってきた自慢の大きな畑や、海がよく見える牧場が誇りであり、周辺の食料供給の任を継ぐのが夢であった。


…鎌倉では、男女問わず13歳になると、軍の訓練を受ける。3年間の訓練の後、軍人となるか予備役となるかを選ぶ。


アンナは訓練を終えて1年、すなわち17歳だった。

仕事も大分任され始め、その日も父と一緒に畑仕事をしていた。


柊「お父さん、あっちの作物は見てきたよ!みんな元気に育ってる。そっちはどう?」


「ああ、順調だよ。そろそろ休憩にしようか!

あっちで作業をしているハドソンくんにも伝えて来てれ。

…私よりお前が行った方が彼も喜ぶだろう?」


アンナは顔を赤らめ、


「わかった!」

嬉しそうに小走りで呼びに向かった。


…ハドソンは優秀な兵士であったが、獣蟲との戦いで左目を傷付け、左手の小指と薬指を失った傷痍軍人である。

予備役となり、働き口を探している所をアンナの父に拾われたのだ。



「…やれやれ」

父は小さく首を振りながらそう呟いた。


(ハドソンは仕事を覚えるのも早いし、頼りになる。良い青年を雇えたものだ。)


「孫の顔を見れる日も近いかな。」

そうボヤいたアンナの父は、少しニヤつきながら妻のいる牧場へ向かった。


◇ ◇ ◇ ◇


柊「ハドソン!お父さんが休憩だって!」


小屋の近くで農具の修理をしていたハドソンに伝える。


ハド「アンナ!ありがとう。キリがついたら休むよ!」


ハドソンも嬉しそうに返事をする。

彼等が恋仲になってから数ヶ月経つ。まだまだお熱い頃だ。


2人で寄り添い座り、畑仕事や将来の話に花を咲かせる。

微笑ましい光景だ。



柊「そろそろ終わりにしないと。つい話過ぎちゃった!」


夢中で話していた2人。渋々休憩を終えようとした時だった。


ハド「アンナ…何か聞こえないか?」


柊「えっ?」


突然険しい顔で辺りを窺うハドソンに、アンナは困惑する。


ドドドドド

(…足音だ。それも大量の。…まさかうちの婆羅門バラモン!?)


正解だった。

足音の正体は、牧場で飼われていた双頭牛、婆羅門バラモンであった。


柊「何…?みんな怯えてる…お母さんがいるはずなのに?」


ハド「何かあったんだ…まさか、いやそんな…

アンナ!武器を持て!さあ小屋に!」


アンナの手を引き、ハドソンは小屋に入る。


ハドソンは各家庭に支給されるM4を持ち、手斧を装備した。


アンナはニューナンブM60を手に取る。


(私が使うのは拳銃…訓練を思い出して…!)


小屋を出ると、もう婆羅門達は居なくなっていた。


「アンナ!ハドソンくん!無事か!?」


柊「お父さん‼︎…一体何が…どうしたのそれ…」


走ってきた父は片手にM1014散弾銃を持ち、真っ黒の液体を体中に浴びていた。


「デカい海老に乗ったタコみたいな化け物がやって来たんだ…まずお隣の山本さんらが襲われた…」


ハド「海老?…その化け物の特徴は!?」


ハドソンが険しい顔で問う。


「人型で、1つ目で…腕を伸ばしながら振り下ろし、人の皮を剥いでいたよ…」


ハド「グロブスタだ。だが海老だと?…聞いたことがない。また奴らは進歩したのか…?」


柊「何?グロブスタって!…それよりお母さんは!?」


悔しそうに唇を噛みながら父は、声を震わせながら答えた。


「すまない…すまない…仇は討てたんだ…あぁ神よ…どうして…」


その黒い液体は奴らの返り血だったのだ。父は本当に仇討ちを果たしたのだろう。

だが、母を失ったアンナは絶句していた。


ハド「お母さんは残念だった…だけど、このままここにいる訳にはいかないよ。行こう。」



父は想う。妻は守れなかった。

だが、せめて娘だけは…!


しかし、そんな想いすら運命は打ち砕く。



海岸方向から3体のグロブスタが近づいて来た。


ハド「くそ!来やがった!距離を保つんだ、引こう!」


内陸部へ走り出すが、横から戦争海老ウォーシュリンプが回り込む。

その背中に乗っていた2体のグロブスタが、操縦手を残して降りた。

3人は5体のグロブスタと1匹の戦争海老ウォーシュリンプに囲まれる形となった。


(まずいよ…怖い…どうすればいいの?)


ハド「乗ってる奴が海老を操ってるなら…!」


戦争海老が突進の前触れとして、ハサミを振り上げた瞬間を狙い、ハドソンは操縦手を狙ってM4を撃つ。


タタタッ!タタタッ!タタタッ!


三点バーストでの射撃。

グロブスタは何発か当てねば死なない。経験則から三点バーストを使用した。


見事操縦手を殺し、戦争海老を解放する。

解放された戦争海老は近くにいたグロブスタを襲い始めた。


ハド「良し!!

追ってきてる連中を倒そう!」


タタタッ ドゴンッドゴンッ


父はM1014散弾銃を放つ。だが、怯む程度で歩みは止まらない。

しかし、近づくわけにはいかない。


(私も…!)

ガンッガンッ


1体のグロブスタの触手を飛ばした。


柊「やった!やったよお父さん!」



そう言って父を見た丁度その瞬間。

父の腰の辺りが大きなハサミに挟まれるのを見た。


「何っ!?」

ドゴンッドゴンッカチカチ


戦争海老は近くにいた2体のグロブスタを殺し、こちらへ近づいていたのだ。


父は、咄嗟に頭を狙い命中させたものの、2発で弾切れとなった。


ガチンッ‼︎ …ベチャ


父の上半身が地面に落ちた。


柊「イヤああアァ!お父さん!お父さん‼︎」

拳銃を落とし、泣き叫ぶアンナ。


ハド「そんな…神よ…こいつ!!」


最後の2発により、戦争海老の頭殻が割れていた。

そこを狙ってハドソンがM4を放つ。

戦争海老は横倒しになり、息絶えた。


ガチャッ ジャコン

M4の弾倉を切り替える。

これで最後だ。


…マズイ、グロブスタが近い。


ハド「アンナ!そこから離れろ‼︎…クソっ」


ハドソンが呼びかけるも、アンナはずっと泣き、声が届かない。


1体のグロブスタが触手を振り返るのを見た。

ハド「マズイ‼︎アンナァぁ!」


ハドソンは危険を察知し、アンナの下へ駆けだした。



(お父さん…お母さん…神さまどうして?)

もう何も考えたくなかった。逃げたかった。


左足が冷たい。

(何?)


左足にグロブスタの触手が巻き付いていた。


柊「痛い!キャあッ!」


突然引っ張られ、地面に引き倒される。


ハド「おおおお‼︎」

駆け付けたハドソンが手斧で触手を断つ。


柊「あ、ありが、と…う?」


ハドソンの左腕が無い。

駆け付ける途中、グロブスタに千切り取られたのだ。


ハド「アンナ。愛してるよ。だから、どうか生きてくれ。」


こんな事言うのは酷だと分かっていた。でも、生きて欲しかった。


柊「ヤダよ…一緒に「行け‼︎走れ‼︎頼む、俺の最後の我が儘だから…!」


グッと唇を噛み締め、アンナは走り出す。

後ろは振り返らなかった。




小高い丘の上。アンナはそこから、燃え盛る横須賀を見ながら泣いていた。

そして誓う。必ず奴らを殺し、この地を取り戻すと。

お読み頂きありがとうございました!


長いテンプレ展開が続きましたがご容赦下さい…


今後もよろしくお願いします!

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