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ヒノモトノタビ〜東方軍人録〜  作者: イチ
第1章 甲斐国 2人の二等兵
12/17

海の不幸

第1章ラストです。

甲府城 司令室

神歴33年9月22日



パーシはグッと拳を握りしめて言った。

「ええ、獣蟲です。

我々は奴らの事を

『グロブスタ』と呼んでいます。

形や大きさは、人間とそんなに変わりません。

前面は白くぬめり、背面は日光に晒されても干からびぬよう赤く変色しています。

頭には大きな1つ目。

腕、というより触手は全体に吸盤がついています。


その吸盤に皮膚を剥がされ、苦しみながら海に引きずり込まれた仲間は数知れません。」


(皮膚を剥がされる…?形状を聞いても全く想像出来ないな…)


武「しかし、そちらには大量の銃があると先ほど仰いましたが。」


パーシ「ええ、始めて『グロブスタ』を確認した時は、人型であるものの、地面をゆっくりと這っているだけでした。

しかし、1月程で二足歩行する個体が発見され、その1週間後には近づいた兵士が襲われました。」


戌「で、その兵士は?」


パーシ「…出血多量で死亡しました。

奴らが姿を表すのは東沿岸部のみ。浦賀や横須賀でした。

我々は、発生源が浦賀水道周辺なのではと踏んでいます。」


武「失礼ですが、私の質問の答えになっていないです。

確かにその進化の早さは目を見張るものがありますが…」


パーシ「失礼。そのうち『グロブスタ』は他生物を操り出したのです。

それは蟹と海老。

巨大かサワガニとザリガニを想像して下さい。」


(…それは…うーん?確かに大きなザリガニは怖いかな。)


パーシ「グロブスタは、高さ2m半程で前背面共に銃弾を弾く甲羅を持つ盾蟹シールドクラブを前面に出しながら、体長2m前後の鋭いハサミを持った戦争海老ウォーシュリンプに乗って侵攻してきました。もちろん単体の「グロブスタ歩兵」も連れて。彼らは軍団を作り出したのです。」


戌「その『グロブスタ』は、蟹やら海老やらと共謀したと?」


パーシ「いえ…強引に操っています。

「グロブスタ」は、対象の殻に穴を開け、頭の中に触手を入れることにより操っています。

逆に、支配を解かれた戦争海老ウォーシュリンプが周りの『グロブスタ』を斬殺した例もあります。

現在はそこを利用して何とか食い止めている状況です。」


武「分かりました。ですが、その進化の早さを考えると、すぐに対応してきそうですね。」


パーシ「ええ…ですが我々には次の一手が…その為には横須賀基地の解放を…そのためにも!あなた方との軍事同盟が必要なのです…!」


戌「まあ落ち着きなさい。なるほどなぁ、それで軍事同盟か。

だがこちらにも旨味が無くては上はよしと言わん。

…まあ見てみないと何とも言えんか。

良いな、派遣隊にはカメラと無線を持たせる。出来るだけ多くの記録を撮ってきてくれ。

頼んだぞ。

こちらはこちらで色々根回しを始めてみるよ。」


パーシ「ありがとうございます…!」

少し落ち着きを取り戻したパーシがそう呟いた。


村「了解。では派遣準備を始めましょう。

とりあえず2人は隊舎で休んでくれ。

また要領を持っていくよ。」


武「了解しました。

失礼します。」


(あの人も国の為に必死だったのですね。

竹中さん、陳さんには申し訳無いけどな。)


司令室を出たあと、米倉は商人らの無事を祈りながら歩いていた。




3日後、彼らは鎌倉へ向け出発する。

燻る数多の火種が一斉に燃え上がるのを予期しながら。



連続更新になりました!

今話で第1章 「甲斐国 2人の二等兵」

は終了です。

第2章は 鎌倉 を舞台に物語が進みます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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