辞令は突然に
今回も会話が続きます…
ご容赦下さい〜
甲府城 司令室
神歴33年9月22日
「ええ、勉強済みですよ。熊人族を操っていたのが貴国であるというのは、国民や帝国向けの嘘だという事も。」
戌井司令は眼を見開き、パーシを見つめる。
「それを…どうして。どうやって知った!?」
戌井司令が声を荒げるも、パーシは動じず、さらに続けた。
「熊人族を操っていたのは、【山韓衆】と呼ばれる山の民。戦時・戦前から差別、迫害されてきた者達の末裔の1つ。甲信越の山々に住まう者達でしたね。」
冷汗を流しながら聞いていた戌井司令が突然吹き出す。
「クフっ、そこまで知られてるとは、もはや笑えてくるな!
そうだ。甲斐国は元々彼等とは不干渉だった。だが、日本帝国がこの地を支配すれば、彼等も今まで通りとはいかん。
そのため、彼らは我々に力を貸してくれたのだ。
しかし解せんな。これはほんの一部の者のみが知る事の筈だが…」
「…我が国の諜報員は優秀なのです。そして数も多い。もちろんこの情報を流すのも容易いことですよ?」
戌井司令は右手を頭に添え、人差し指でコンコンと叩くとため息混じりに言った。
「いいだろう…お前さんの提案を受け入れよう。
だがもう少し聞きたい事がある。
鎌倉と日本帝国との関係は?
何故我が国と同盟を?
いや待て、これは派遣員も交えた方が良いな。」
「ありがとうございます。
そうですか。それでは一度我々は…」
「いや、もう目星はついておる。な?村井中尉。」
突然の展開に眼を白黒させていた案内役の中尉は、口をパクパクさせ、
「は、ハイィ!?」
と叫んだ。
「ここまで聞いてしまったのだ。当然だろう?
たった今から、君を鎌倉派遣隊隊長に任命する。あと2名は今呼ぼう。」
司令は電話を取り、情報隊舎へ繋いだ。
しばらく呆然としていた村井中尉だったが、司令が喋りながらジェスチャーをしているのに気がつく。
『客を座らせ』
ハッとし、パーシと護衛を近くのソファに座らせた。
「…あぁ、そうだ。彼等の任務は取り消し。
…うん、うん。
すぐに司令室に向かうよう伝えろ。ああ、では。」
ガチャ
電話を置き、椅子にもたれかかる。
(さて、どうするかな。)
◇ ◇ ◇ ◇
コンコン
武「入ります!武田軍曹他…「あー、良い良い。まあそこ座れ。」
武・米「…失礼します。」
戌「突然呼んですまんな。…武田くん、5年振りか。一等兵が立派になったな。」
武「恐縮です。司令。あなたもお変わりありませんね。」
(知り合い…でしょうか。5年前と言ったら甲日戦争中かな?)
戌「さて、急な任務の変更申し訳ないが、君らには『鎌倉』へ赴き、燃料物資武器弾薬等の備蓄、まあいわば国力を見極めつつ逐次報告してもらいたいのだ。
それによってこの国と同盟を組むに値するか見極める。」
村「私が派遣隊隊長を務めます、村井中尉です。
詳しい要領は明日にも作成して渡しますので。」
(そんな重要な任務を我々に?いや、長田軍曹と司令は知り合いの様子だし…)
長「相変わらず無茶を仰りますね。」
戌「だがそれをやりきるのが君だろう?
紹介しよう。
彼女が鎌倉の特使、パトリシア殿だ。」
パーシ「初めまして。
お二人には予備知識として、我が国鎌倉の日本帝国との関係性、そして貴国との同盟を望む理由をお話しいたします。
我が鎌倉は現在、日本帝国と緊張状態にあります。
我々の拠点である
厚木基地・横浜駅周辺
には、日本帝国の偵察部隊をよく見かけるようになりました。
また、そのさらに北部には補給基地を建設しているようです。」
戌「それはなんとも…穏やかじゃないな。
良いな2人とも、これは極秘任務だ。帝国には知られないようにせよ!」
(若干ヤケ気味ですね。司令、なにがあったのかな。)
パーシ「…続けます。
帝国と甲斐国は友好国。その甲斐国が鎌倉と手を組めば、彼等も躊躇すると考えました。
貴国は帝国に頼っている工業品等の輸入を、我が国に鞍替えできますから。
派遣隊には、その是非を判断をして頂ければと思います。
また、我が国は武器弾薬は充分なのですが、人と食糧が足りません。
特に深刻なのは食糧です。」
戌「…食糧?海にも面している貴国が?」
(海ってなんだろう…)
パーシ「…その海からも侵攻を受けているのです。
それが人と食糧が足りない、すなわち土地を失った理由です。」
戌「人…じゃなかろうな。」
パーシはグッと手を握りしめて言った。
「ええ。獣蟲です。」
お目通しありがとうございました!
今回も説明らしい会話が続いて申し訳ありませんでした('A`)
今後もよろしくお願いします!