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ヒノモトノタビ〜東方軍人録〜  作者: イチ
第1章 甲斐国 2人の二等兵
10/17

来訪者

新たな国家の登場です。

甲府城 情報隊舎

神歴33年9月22日


「君たちはこのまま司令の元へ向かってくれ。緊急の用事だそうだ。

…あと、君らの商人護送任務は取り消された。」


米「え」

思わず米倉が小さく漏らした。


「彼らにはこちら持ちで、新たに護衛を雇った。甲州商人連合も了承済みだ。」


長「了解しました。すぐに向かいます。」



◇ ◇ ◇ ◇


[6時間前]

甲府城


【司令室】

と書かれた部屋の前に立つ、3人の男女。

1人は案内役である甲斐国軍の中尉。

その後ろに金髪を団子にまとめたスーツ姿の女性。

蒼眼で非常に端整な顔立ちだ。

そして1番後ろには、青迷彩服に身を包んだ大男。

護衛だろうか。


コンコン

「司令、お連れしました。」


ぺこりとお辞儀をし、スーツ姿の女性が口を開く。


「初めまして。鎌倉の外交官、パトリシア・マーティと申します。」


「御丁寧にどうも。司令の戌井です。

鎌倉…か。確か、三浦半島を治める軍事都市国家でしたね。日本帝国の者に聞いたことがあります。

それで、外交官が他国の軍司令に一体何の用でしょう?」


それを聞き、パトリシア(今後からパーシ)が微かに眉をひそめた。

どの言葉に反応したのか。


「ご存知の様で何よりです。

早速ですが、本題に入らせて頂きます。

我が国は、貴国の友好国である日本帝国を凌駕する質の武器を大量に保持しています。また、引けをとらぬ工業力を持ち、燃料等の備蓄も充分です。

貴国の交易国を帝国から我が国に変え、さらに軍事同盟を結びたく参りました。」


しばらく呆気に取られていた戌井司令だったが、ため息を吐き、姿勢を整える。


「…急に何を言い出すかと思えば…そんな事を一司令に言ってどうする。

そもそもそんな証拠が何処に?嘘としか思えん。

正気かね?」


険悪なムードに案内役は口をへの字にし、やり取りを見守る。


「ええ、ですので貴国には我が国に調査隊を派遣して、確かめて頂きたい。

また、武器のサンプル等も持って参りました。

それらを確かめ、軍からも我が国との同盟を進言して頂きたいのです。」


「話にならんな。何をそんなに必死になっているのか知らんが、お帰り頂こうか。」


ピシャリと冷たく言い放つ。

しかし、彼女は動かない。


「…甲斐国が日本帝国に勝利した理由。」


司令はもう相手をしようとしない。


「四方を囲む自然の要塞、山。確かに大軍は阻めるでしょうが、彼らを食い止めるには至りませんね。

精強なる騎馬隊。確かに練度は高いですが、彼らが講和を結ばざるを得ないほどの力は無いでしょう。」


司令は目尻を上げ、俯き加減でパーシを見つめた。


「最大の理由は、 熊人族クマドぞく。高い知能と攻撃力を持った山の戦士ですね。貴国は彼等を操る術を知っていた。彼等の活躍により戦争に勝利したと言っても良いでしょう。」


熊人族クマドぞく

体長は2メートル弱。

名前の通り元は熊、ツキノワグマだと考えられている。

全身は黒い体毛に包まれ、後頭部は肥大化している。

腕足が長く、手は木々を伝って素早く移動するのに適する形をしているのが特徴である。

鳴き声により仲間と連携し、石や尖った棒を木の上から落とすなどの攻撃も行う。だが、単純に力が強い。人間などひとたまりも無い。


「…事前に勉強済みか。言い方が気に食わんが、あなたの言う通りだよ。

で、それが一体なんだというのかね?」


すると、パーシはニヤリと不敵な笑みを浮かべながらこう言った。


「ええ、勉強済みですよ。

熊人族を操っていたのが貴国であるというのは、国民や帝国向けの嘘だという事も。」



お読み頂き、ありがとうございました!

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