横浜の店で再会
ーーー実話を元に小説へーーー(まだ草稿段階です)
「オーロビルに2泊の体験観光のはずだったのです。感心がある方は是非参加下さい、と呼びかけていて、肝心のオーロビルは遠くから眺めてそれで終わり。行きたければ自分で行けばいい、と剣もホロホロで、そして言うことには、あんたは人間性が低いと猛攻撃されてしまって・・・」
「言葉も通じない外国旅行の最中に、それはひどいですね。よほど性悪な人なんでしょうね」
食事の準備をしていた亜喜音さんが言った。
私のインドでの話に、人々は驚き、かつ、旅の企画者へ疑問を投げかけた。
「目的の所へ2泊の予定なんでしょう? それを遠くから見ただけで終わるなんて、ツアーなら賠償ものですよ。約束違いだし。でもお金を取っていないとすれば・・・・」
約束違いであろうと、反抗できない環境での徹底的な暴言であろうと、私は賠償などは考えていないし、暴言被害で訴えようとも思わないが、せめて、行きすぎた言動で、私を苦痛のどん底へ落とした事への認識と「言い過ぎて悪かった」の一言ぐらいは欲しいと思った。
「ひどいと思うでしょう? でもその人は、日本では決して乱暴な、自分勝手な振る舞いをする人では無いのです。それは親切に、面倒見の良い人なんですよ」
亜喜音さんのご主人である八坂氏が言う。
「その人、Tさんは、きっと旅に慣れていない人でしょう?」
「いえ、ところが、世界旅のベテランを自称していますよ。公務員時代から、役職の出世は棄てて、世界中を旅して回って、今回のインドも三回目だと言っていました」
八坂氏は考え込んだ。そして、おもむろに言うのだった。
「言葉の通じない世界へ旅に出て、人は往々にして豹変するのです。隠れていた人格が現れる、とでもいいましょうか」
「それですよ、それ!」
私は思わず膝を打った。
旅は人間の本性を露呈させる。今回、私はつくづく実感したのであった。
八坂氏が言う。
「例えば、旅でトラブルに遭うと、普段温和しい人が猛烈に凶暴化したり、反対に饒舌だった人が無口になってしまったり、また、乱暴者と思われていた人が柔和な人物になっていたり・・・・」
まだ若い八坂氏は、思慮深げに解説をした。
同席していた二人の女性の内、明るい雰囲気の赤崎さんが、
「旅の話て、楽しくなければいやね。もう、その話は止めましょうよ」
さもありなん。そこで私は、気分の違う思い出を話してみた。
「最後の宿で、ボーイがダブルベットを指差して、自分も一緒に寝よう、と仕草をするのですよ。これには参りました。グッナインと言って出て貰いましたが。翌朝、彼らは僕と写真の取りあこを希望するのです。他の三人には目もくれなかったけれど、とにかく、彼らは、店長も含めて僕の写真を希望するのです。インド人は世界一、狡賢しこくて油断のならない民族だと聞かされていましたが、そういう感じはありませんでした。日本人よりよほど親密に感じたのです」
次回へ続く