【解説回】第十七話 『どうやら琥珀色と智将が犬猿の仲らしいんだが、その話を聞いて欲しい』
解説回です。
彼女はロラルルの部下という事もあってか、セイに対してゼクトのような疑いを持ってはいなかった。
「すみませんね、蟲王までやっつけたっていうのにこんな扱いになっちゃって。本当なら英雄視されてもおかしくないんですけど・・・」
と、むしろセイに同情している側であった。
「あのさっきの評議会のメンバーって。あの太鼓腹の人とケモミミの」
「あぁ、ゼクトと虹色様ですね?」
キャロルは片方を呼び捨てる事で、改めてどちら側の立場に属しているかを露わにする。
「【智将ゼクト】。彼は協会には属していますが、『冥帝を撃つ為の軍隊』である【黒王冠】を指揮している【軍人】で、魔導師ではありません。軍人は融合ではなく、【魔剣】を使って魔法を発動させます。だから私たちと根本的な戦い方が違うんです。魔導師協会という大きな組織の中に、琥珀色様率いる魔導師の【社交界】とゼクト率いる軍人の【黒王冠】という『二つの組織が存在している』と言っても過言では無い状態です」
そこまで解説すると、セイは「なるほど」と一度相槌を打った。
「だから大佐だとか准将だとか言ってたのか」
「そうです。私たち魔導師は、闘技場によって一〜四級までをさらに三段階に分けてランキングします。ただこれはまさに『実力勝負』で『常に変動』します。しかし、彼ら軍人は『階級』があり、それは入隊の長さや手柄の多さなど『実力以外の何か』が大きく関わり『変動しにくい』らしいのです」
「何かって?」
「分かりません。軍人の中でもそれが分かるのはごく一部らしく、それが階級を上げる方法らしいのですが・・・。まぁ!私たちには関係ありませんね」
「ロラルルとゼクトが仲悪いのも、そこらへんにありそうだね」
すると、その理解に「良く分かりましたね!」とキャロルは小さく手を叩いた。
「まぁ、評議会で思いっきり見せられたし」
「あの二人はまさしく『犬猿の仲』です。琥珀色様はご自分は一級上位なのに、誰にでも分け隔てなく接してくださいます。しかしゼクトは、階級一つで物事を図るタイプの軍人。まさしく相対した考え方を持っています」
セイは「むぅ」と口元に手をやり、一度思考を巡らせる。
「意外だったな」
「???何がですか???」
キャロルが首を傾げると、セイは照れながら続けた。
「キャロルってもっと天然なのかと思った」
セイは、髪の毛ピンクだし、と言ったその時だった。
ステンッ
「きゃっ!」
「どうしたの?」
「やっぱり天然・・・」
突然何でもないところで躓いたりする彼女は、「えへへ」と笑いながら舌を出す。女の子座りしたその太腿にセイは「ごはぁ破壊力すげぇ////」と仰け反った。
二人はまた街の中を歩き出す。
夕焼けの明かりも届かなくなり空が暗くなり始め、ランプや松明の光が街を照らし出す。それまで働いていたもの達は、酒場に集まり手に木製のジョッキを持ち、笑い合いながらその日の労をアルコールと共に洗い流し始め時間帯だ。
「着きました!」
そこに見えたのは宿というよりは、旅館と言った方が正しい風格を醸し出す建物が姿を見せた。
入り口には玉砂利が敷かれ、神社仏閣に並ぶほどの門構えだ。
本邸までの脇には風情ある木々が奥ゆかしく剪定され、キャロルとセイを緩やかな心地にさせる。
(高そうだ。めちゃくちゃ高そうだ)
セイの第一印象はそれだった。
「本当にここ?」
「はい、だって経費は黒王冠ですから」
親指を中指と人差し指でこすり合わせながら不敵に笑うキャロルにある種の恐怖を感じていると「ささ、行きましょう!!私の分もとってあるのです!!」と嬉しそうに本邸の横に書かれた団体名簿に「英雄様御一行2名」と書かれた文字を指差した。
「英雄って、恥ずかしいな」
そう言いながら、セイは門をくぐった。