第十三話 『どうやら僕も伝説色の魔法根源者だったんだが、その話を聞いて欲しい」
セイの処刑が確定。
そう、確定しかけたその瞬間。
7人の中の一人。最も若く、最もやる気のなさそうなキャスケットを被った女の子が「しつもーん」とだらしなく手を挙げた。
「あんたの色は?」
「え?」
「色よ。いーろー。根源色ってヤツ。何色なの?」
「あ、それは僕も聞いてなかったな。何色だい?」
ロラルルが彼女の話に加わる。
今は太鼓腹の流れを断ち切るのが先決だと思ったのだろうか。
よくよく見れば7人の、ゴールドスミスを中立とすると、6人の中でこのキャスケット少女とロラルルは右3人の端とその隣に座っており、太鼓腹は左端に座っている。
その位置からしても対立しているのが見て取れた。
「そんな事より、魔導師許可証も無く融合したのだぞ?そもそも私はあんな公序良俗に反する行為を許可も無く、不特定の者と及ぶなど、私は断じて認めんっっ!!!!」
太鼓腹のとなりに座る、髪の毛にたっぷりとポマードをつけた男が威厳もたっぷりにそう言いながら自身の髪を撫でつける。
すると手に余分なポマードがベッタリと着き、それをハンカチで拭き取った。
よく見ると、ロラルル、キャスケット少女と太鼓腹、ポマード男の軍服の着こなし方や徽章の形が違う事に気づく。
前者の二人は上着を開けたり、袖を折ったりと割と自由に着ており、徽章も黄色かった。
一方後者はきっちりと軍服を着ており、徽章は黒く輝いていた。
そしてゴールドスミスは裁判官の法衣を着ており、その両隣も同じ格好をしていた。
つまり、この7人は大きく分けて3つのグループに分かれているのだ。
「セイを処刑したい」二人。
「セイを守りたい」二人。
「それを中立する」三人。
「ねえ、今は融合した事は置いておいて、根源色が何色かって聞いてんだけど!?」
キャスケット少女が声を荒げた。
「セイ、答えなさい」
ゴールドスミスがセイを見て問う。
その場にいる全ての人間の視線がセイに向けられる。
その重苦しい中、せいは「・・・どり・・・色」と呟いた。
「あぁ!!!!?????聞こえんんんん!!!!!!」
そのモジモジとした態度に、太鼓腹の男が机を叩きながら吠えた。
カーン
「静粛に」
その時初めて、ゴールドスミスが氷のように冷たい目つきで太鼓腹の男を睨んだ。
恫喝、強制、威圧。
この場ではそういった力は全く意味を持たない。
冷静さと平等さ。
誰にでも当たられた権利のみが均等に与えられている。
「は、失礼した。ゴールドスミス氏」
太鼓腹の男にも例外では無く、一度咳払いをする。
「さぁ、セイ。ゆっくりで良い。ただはっきりと、です。答えなさい」
改めてゴールドスミスはセイを見た。
「緑色。緑色でした。僕の魔法陣!!」
勇気を持ってはっきりと伝える。
すると、その場がぐらりと揺らぐのをセイは感じた。
「まさか・・・」
「え、マジ?」
ロラルルとキャスケット少女は顔を見合わせる。
そして太鼓腹の男は舌打ちをし、ポマード男は額に手を当て何度かこすった。
そして法衣を着たゴールドスミスの左側にいた男が、ゴールドスミスに耳打ちをした。
「もし、彼の言っている事が本当ならば」
そしてさらに声を潜めて続けた。
「彼もまたロラルルと同じ、伝説色です」