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ブリガンティア

作者: 里見八房

色々試行錯誤中で、少しずつブラッシュアップできるといいなーって感じです。

デミクァスはレベル90の武闘家です。


デミクァスはとても乱暴者の冒険者でした。


ある日デミクァスは、自分にPKを仕掛けてきた暗殺者を返り討ちにしました。

暗殺者はデミクァスを恐れて、付き従うようになりました。


デミクァスは自分の拳の強さに気がつきました。


ある日デミクァスは、気に食わない盗剣士を殴りました。

盗剣士はデミクァスを恐れて、言うことを聞くようになりました。


ある日デミクァスは、自分に口答えをした妖術師を蹴飛ばしました。

妖術師はデミクァスを恐れて、口答えをやめました。


ある日デミクァスは、自分に食べ物を売らなかった大地人の屋台を叩き潰しました。

屋台はぺしゃんこに潰れ、大地人は持っていた食べ物を全て差し出しました。


ある日デミクァスは、誰も殴りませんでした。

ススキノ町の人は、冒険者も大地人も皆デミクァスを恐れて、言うことを聞くようになっていました。


デミクァスはギルドを作ることにしました。

デミクァスはギルドに『ブリガンティア』という名前をつけました。

デミクァスは『ブリガンティア』をとても気に入りました。

人々はその名を聞くだけで恐れるようになりました。



 ◇



ある日デミクァスは、大地人の娘に会いました。

デミクァスは娘に

「俺はデミクァス様だぞ!言うことを聞け!」

といいました。


娘は恐れることなく

「いいえ、嫌ですわ」

言いました。


デミクァスは娘に

「俺はブリガンティアのギルドマスターだぞ!言うことを聞け!」

といいました。


娘は恐れることなく

「いいえ、嫌ですわ」

といいました。


デミクァスは娘に

「お前、俺のことが怖くないのか?」

と聞きました。


娘は恐れることなく

「私たち大地人は一度死んだらおしまいです。あなたがどんなにがんばっても、私のことは一度しか殺すことができないんですよ。怖いわけないじゃないですか」

といいました。


デミクァスは自分の名前と『ブリガンティア』の名前を馬鹿にされていると思いました。

でも、デミクァスは娘を殴りませんでした。

娘を殴って殺してしまったら、自分の負けだと思ったからです。

それでも頭にきたデミクァスは、自分の恐ろしさを教えるために、娘を連れて帰ることにしました。



 ◇



ある日デミクァスは、娘に言いました。

「俺の拳にかかればどんなPKだって返り討ちだぜ! どうだ恐ろしいだろう! 言うことを聞け!」

娘はいいました。

「嫌ですわ、ちっとも恐ろしくありませんもの」


ある日デミクァスは、娘にいいました。

「俺が殴ればどんな盗剣士だって言うことを聞くぜ! どうだ恐ろしいだろう! 言うことを聞け!」

娘はいいました。

「嫌ですわ、ちっとも恐ろしくありませんもの」


ある日デミクァスは、娘にいいました。

「俺が蹴飛ばせばどんな妖術師だって口答えをやめるぜ! どうだ恐ろしいだろう! 言うことを聞け!」

娘はいいました。

「嫌ですわ、ちっとも恐ろしくありませんもの」


ある日デミクァスは、娘にいいました。

「俺が拳を振るえば大地人の建物なんて粉々だぜ! どうだ恐ろしいだろう! 言うことを聞け!」

娘はいいました。

「嫌ですわ、ちっとも恐ろしくありませんもの」


ある日デミクァスは、娘に何もいいませんでした。

娘も何も言わず、デミクァスの横にいました。



 ◇



ある日デミクァスは、アキバからきた付与術師に負けました。

デミクァスの拳は届かず、蹴りは空を切りました。

付与術師はデミクァスを恐れず、名前を呼びもしませんでした。

『ブリガンティア』のメンバーは少しデミクァスが怖くなくなりました。


ある日『ブリガンティア』は、ススキノへ来たシルバーソードに負けました。

信頼しあい訓練を積んだシルバーソードに、手も足も出ませんでした。

人々は少し『ブリガンティア』が怖くなくなりました。


デミクァスと『ブリガンティア』は、シルバーソードに何度も何度も負けました。

負けるたびに人々はデミクァスと『ブリガンティア』が怖くなくなりました。



そして、デミクァスの周りには誰もいなくなりました。

デミクァスが好きだった『ブリガンティア』はなくなってしまいました。



もうデミクァスの名前を怖がる人はいませんでした。

デミクァスの横には、大地人の娘だけが残りました。


デミクァスは娘にいいました。

「お前も俺のことなんて怖くないんだろ」

娘はいいました。

「ええ、ちっとも」


デミクァスは娘にいいました。

「俺のことを恐れるやつは誰もいないんだ。お前も里に帰っていいんだぞ」

娘はいいました。

「私は元々あなたのことなんて怖くないですから」


娘はいいました。

「私はあなたが怖くてついてきたわけではありません。

 私は私の意志でここにいます。

 私は私の意志であなたの横にいます。

 私の好きな『ブリガンティア』に。

 私の好きなデミクァスと共に」


デミクァスは初めて気がつきました。

俺の大好きなデミクァスという名前。

俺の大好きな『ブリガンティア』。

皆が恐れ嫌っていたこの二つを、娘だけが恐れずにいてくれたことに。

付与術師に負ける前から、この娘には一度も勝ったことがないことに。


娘はいいました。

「もう一度『ブリガンティア』を作りましょう」

デミクァスはいいました。

「でももう誰も俺にはついてこない」

娘はいいました。

「私がいるじゃないですか。あなたと私でもう一度作りましょう。誰にも恐れられない、二人の『ブリガンティア』を」

デミクァスはいいました。

「主は俺だぞ。お前は副官だ」

娘はいいました。

「はいはい。私のご主人様」



 ◇◇◇



「めでたしめでたし」

 てとらは手にした絵本を閉じると周りを見回した。

 皆一様に甘いような、苦いような、複雑な表情をしている。

 デミクァスだけは真っ赤な顔で怒っている。

「あれーみんなどうしたの? せっかく超銀河アイドルのぼくが自ら作った絵本を披露してるっていうのに~。こんなに可愛くって、こーんな素敵な絵本まで作れちゃうなんて、ぼくってなんてすごいんでしょ☆」

「ワイバーンキック!」

 デミクァスの蹴りが飛び、てとらが今まで座っていた椅子を砕く。肝心のターゲットは直継の肩へひらりと飛び乗る。

 そこ目掛けてテーブルに乗っているフォークやナイフ、それに皿やジョッキにいたるまでが放たれるが、どれもすんでのところでかわされたり叩き落されたり、時に直継に刺さったりして、肝心のてとらには一つも命中しない。

「てめぇいったいどこでそんな与太話仕入れてきやがった! その本、今すぐこっちによこしやがれ!」

「ダメよー、デミデミ。せっかくデミデミのヨメヨメにインタビューして作った引出物用の絵本なんだからー」

「ちゃっかり人んちの女房となれあってんじゃねぇ! てめーは出入り禁止だ!」

 逃げるてとらと追うデミクァス。

 2人は戦勝の宴の場から消えていった。

「なあ・・・シロ・・・・・」

「・・・なんだい、直継」

「あの反応だと、今の話ってほとんどノンフィクション祭りってことだよな・・・?」

「やめて直継・・・考えたくない・・・・・」

感想などいただけると小躍りして喜びます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 絵本のようだなあ、と思いながら読み進めてたら本当に絵本だった てとらちゃんいい仕事してるわーw 絵本の中の(ほぼノンフィクションな)ラブラブっぷりと デミの照れ怒り+「女房」呼びにニヤニヤ…
[一言] デミさんが可愛いwwwwwwwww てとら、それ筆写師にコピーしてもらえw
[良い点] とても素敵なクリスマス・プレゼントを頂戴したような気分です。 気恥ずかしくて、堪りません。 目茶目茶嬉しくて、大声をあげながら踊り出したい気持ちです。 [一言] これは、<副官祭り>の為の…
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