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27 絡む毒蛇



 レオルド・アッシュフォルド。

さらさらしてそうな白銀の髪。病的なほど白い肌。髪色と同じ睫毛の下の瞳は薄い青色。

色素の薄い容姿をしているが病弱なんてこともなく、貧弱なわけでもない。

スラッと長く細い手足。黒いズボンの足は軽く立てていて、薄手の長袖の白いシャツを着ていて左腕一本で支えている。

その体勢がまるでモデルかなにかの撮影中のポージングみたいで様になっていた。

右手ではジョッキを持っていて、それを飲みながらあたしを見上げている。その青色というより水色の瞳は、まるで獲物を捉えたみたいだ。

 初めて会った時に殺戮をしていてあたしを殺そうとしたキングリーン部隊のエース。

致死量の猛毒のように一撃食らえば死ぬ、毒蛇のような刃で確実に殺す。異名は毒蛇。

仲間さえも逆らえないとんでもない危険人物。どうでもいいと判断すればサクッと殺す。目障りだと思えばサクッと殺す。サクッと躊躇なく人を殺す。

 退屈そうに冷めた目を半開きにしているのが通常フェイス。時折嘲笑する笑みを浮かべて、鼻で笑い退ける。

 他人とは馴れ合わないらしい毒蛇が、何故かあたしに楽しげな笑みを向けてきた。

アルコールで赤らめた頬がつり上げる口元により上がり目が細められる。

その笑顔がこの上なく、不気味で悪寒が走った。


「…レオルド、酒強いんだな」

「弱いよ」

「へ?…でも水のように飲んでたじゃん」

「水だから」

「は?」


 アリエール部隊で一番酒に強いニックスに、余裕綽々で勝ったレオルドと実質二人っきりになってしまったあたしの部屋に酒で潰れた男が三名。

 わけのわからないことを言うレオルドは、持参してきた瓶をあたしに渡した。

匂いを嗅いでみたらアルコールの匂いがしなかった。


「水!?」

「こうなると思って。オレ、酒好きじゃないから。一杯以外は全部水で済ませた」

「セコッ!」


 ニックスと飲み競べになると推測して、水を入れた酒瓶を持ってきた。ニックスに注がれた一杯以外は全て水。通りで余裕な訳だ。


「なんでそんなことをするんだよ?」

「エリと二人になるため」

「………」


 酒が弱い上に好きでもないのに、何故部屋に来たのか問えばそう返された。ぱちくり、と瞬きして床に座るレオルドを見る。

一拍遅れて言葉の意味を理解した。

 この状況を意図的に作り出しただと!?計画的犯行!?

一気に状況が非常事態に変わった。

部屋の左側に横たわっているライリ達を横目で見たが、起きる気配はない。え、誰か、起きて。

 レオルドがいきなり動いたため、ビクリと震え上がる。


  トスンッ。


背中に親しみ慣れた簡易ベッドの感触。目の前に白銀の男が見下していた。

───押し倒された!?


「エリの口、塞ぐため」

「んんっ!」

「んっ」


 毒蛇に───また噛み付かれた。

レオルドがあたしの唇に噛み付いた。アルコールらしい味を感じる。

レオルドの口の中の味を感じるとか…赤面ものだ。

 押し退けようとしたが、レオルドは折り重なるようにして身体を密着させてきたから、足はバタバタするだけで無駄に終わり、レオルドの肩を掴んで押そうとしたがその手は押さえ付けられてしまいベッドに沈む。

レオルドの体重がのし掛かっている上に胸が潰されているため、物凄く呼吸がしずらい。その上口が塞がれていているので、窒息しかけている。

 まるで何かを食べるようだった。かじりつくように抉じ開けて、舌で舐めとり吸い上げるレオルドは、甘い吐息を漏らす。


「ンッ…」

「っれお!」


 僅かな隙まで怒鳴るがすぐにまた唇を塞がれる。クチュ、といやらしい音が口の中でした。

ゾワッ、と背筋が痒くなる。


「ンー!!」

「っ…!」


 思いっきり歯を立てて唇を噛み付いてやった。

そうすれば、レオルドは離れた。

やっと解放されて、酸素を吸い込む。ハァハァ!死ぬかと思った!

呑気に呼吸していないで、レオルドの肩を押し退ける。

血を出す唇を舐めているレオルドは、まだあたしの上にいた。


「お前…何しやがるっ」

「…美味しかった」

「てめぇ…!!」


反省の色なし。しかもダメージもないようだ。噛み千切ればよかった。


「お前まさか……噛み付きたくて、あたしと同じ部隊になりたいのか?」

「うん」


 またやられないように肩を握り、腕を伸ばして距離を開ける。悪びれることもなく頷くレオルドの肩に爪を立てたが、なにこいつロボットなの?痛くも痒くもなさそうだ。

わいせつ行為がしたいがためだと!?


「もっと触れたい」

「ぐっ!寄るな!離れろ!」

「やだ、そばにいたい」

「近すぎるから!」

「近づかなきゃ口塞げない」

「エンドレス!?」


 グググッ、と命懸けの攻防をする。また顔を近づけようとするレオルドを必死に押し退けた。

昼間に決闘した時より、危機を感じる。


「あたしの口はお前のおやつじゃない!」

「美味しいよ」

「美味しくねぇよ!」

「美味しい」

「もう黙れ!そして出てけ変態!」


 あたしが大声だしても酔っ払い三名は起きる気配がしない。

女の最大の危機だよ!ライリパパ!!


「意味わからん!なんで毒蛇に好かれなきゃいけない!?要素がわからん!」

「…その威勢と吠えるみたいな口調と声と短い黒髪と真っ直ぐな目と細い首と小さい身長と軽い身体と振り上げる足と細いくびれと小さい手と」

「やめんかっ」


 悪寒に襲われて震え上がる。

やめろ、見るな。怖い!


「怯えるくせにそれでも睨んでくるのが毛を逆立てた猫みたいで、生意気なこと言う口を塞ぎたくなる。オレより一回りも小さいのに強気だし強いし、腹に指入れる度胸もあるし見てて飽きない。決闘でオレに勝った。そばで見ていたい、だから同じ部隊に入りたい」


 ニックス達に向ける嘲笑ではなく、微笑むレオルド。

顔立ちがいいため、その笑顔は女ならば見惚れるものかもしれない。しかしあたしには不気味にしか感じなかった。

 寒気に襲われる。誰か助けてください。

変人で奇人で狂人な変態にお気に入り登録されたっ!


  カクンッ!


両腕の関節を押されて呆気なく腕を折られて、支えをなくしたレオルドの身体があたしの上に落ちた。うっ…!

 つかさずレオルドがまた噛み付こうと唇を重ねようとした。


  ガッ!


そこにティズの蹴りがレオルドのこみかみにヒット。

「むにゅうっ」と寝返りを打つティズは、あたしを故意に助けたわけではなく、事故だ。

 事故であろうと故意であろうと、こみかみを蹴られたレオルドは怒ったらしく殺気立つ。


「落ち着け!」


 レオルドがティズを殺す前に取り押さえると、くるりと転がった。レオルドが下、あたしはその上。

 形勢逆転!───と思いきや。

白い両手で顔を押さえつけられて、引き寄せられた。また唇を唇に塞がれる。

腕を立てて離れようともがくが、レオルドの方が強くて、首が外れそうだ。

 ───食べてる。

もぐもぐと唇を動かしては、ゴクリと飲み込む。飲み込んだものがあたしの唾液だと思うと、もう、うぐっ、うぎゃあああっ!!


「んんんんっー!!!!」

「…呼んだ?」

「ぷはっ!」


塞がれたまま叫べば、唇が解放された。


「……お前、今後もこうする気?」

「うん。」


この世界にセクハラって言葉、存在するか明日調べよう。

 今後、この行為は続く。

この行為をするために、同じ部隊になる。同じ部隊だけでは飽き足らず、互いをお守りするために四六時中そばにつくパートナーにされるかもしれない。

四六時中噛み付かれる。


「部隊の再編成が発表前に帰ってやる」

「帰らせない」


決意して吐き捨てたら、さらりと返される。

 帰らせない……だと?


「帰さない。絶対に帰さないから。魔法陣を聞き出す前に捕虜は殺す。異世界に繋がる魔法陣を知る者は皆殺しにしてやる。メデューサでも国王でも、殺してやる。君をオレから引き離そうとする奴全員を殺す」


 薄い青い瞳は、狂気を放つ。

その言葉は本気だ。殺す。皆殺しを有言実行する。

その狂気に、凍り付いてしまう。

ただ漏れする殺気がべっとりと絡み付く。


「君のそばで全部阻止する。もう帰さない」


 毒蛇が獲物を逃がさないように、巻き付いてくる。

毒蛇に絡まれた─────。






レオルド渾身の告白。

恵璃はまたもや告白と受け取らない。イカれた人にお気に入り登録されたと解釈しております。


頑張れ、レオルド!←



「ワレバラ」お気に入り登録、ありがとうございます!

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