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21 再入隊



 アルトバスポリス国に仕える兵隊であるモントノールクリムア支部基地にて。

二回目の異世界トリップを経験したあたしは、もう二度と会えないと思っていたアリエール特殊部隊と再会を果たして、これまでの経緯を話した。


「術者も魔法陣もないなんて…謎だな…」


 ティズが顎に手を添えて、深刻そうに眉間にシワを寄せる。

支部長が既に帰宅したため、彼女に報告するのは明日となった。

あたしの部屋に集まって話すことになったのだが、何故かちゃっかりレオルドまでいる。


「奴らがまた召喚したならば、今度こそ確保するだろうしね。不可解よね…術者も魔法陣も見当たらないのは」


 ニックスも難しい顔をしていた。

そうなんだよなぁ。敵さんすらいなかったんだよな。


「だがこれでわかったな。無差別の異世界の人間を召喚したわけではなく、エリ・クロキを召喚したんだ」


 アルトバスポリス国と対立しているタルドンマカール国に、魔女の城の跡地で召喚された。

奴らの目的は異世界の人間ではなく、あたし自身。

詳細まではわからないが。

 言うかどうか迷ってから、あたしは一応言うことにした。


「一回目の時にさ、あたしライリに担がれてメデューサの森をでたじゃん?その時言わなかったけど……森のそばに女の子がいたんだよね」

「…というと?」


ベッドに座るあたしを床に座って見上げてくる四人はきょとんとしている。


「…長い金髪の子で、遠かったから顔は見えなかったし…瞬きしてる間に消えちゃったんだ」


 まるで怪談話をしているみたい。

軽く幽霊見ました、と話しているようなものだが続きがある。


「ここまで移動魔術で来たけど…魔法陣がうろ覚えでさ。全然書けなくて苦戦してたら…メデューサの森の中でだよ?跡地にだよ?顔は見なかったけど…長い金髪の少女が音もなく現れて、スッと魔法陣を書いてくれてここに来れたんだ」


面白いほどライリとティズの顔が恐怖に染まっていた。ここで大声出せば確実に震え上がると思うが、生憎そんな余裕はない。


「……メデューサか、魔女かなぁ……と推測してるんだけど…」


 金髪少女を話して、意見を求めた。

危険な怪物がいる森に、しかもスラッと魔方陣がかける少女。ただ者ではない。魔術は街の子どもが気軽に学べる代物ではないのだ。


「そう言えば、ピンクキャットからメデューサの触手に助けられてたな」

「やっぱり魔女再来か…」


 ポツリ、レオルドとニックスが呟いた。大ダメージです。


「あれじゃないかな…ピンク頭が美味しそうだったから、あたしをそっちのけで向かっただけじゃない?」

「エリの方が美味しい」

「……」


 悪足掻きをしたらレオルドが意味深な発言をした。意味のわかるあたし以外の三人は沈黙して、しれっとしたレオルドを見る。

あたしは頬の筋肉を痙攣させた。

コイツ、まさかわいせつ行為を諦めていないのか。


「と、とりあえず!もう寝るか!また明日支部長と話そう!」


一先ずあたしの部屋からでてもらい、朝まで寝ることにした。




 翌朝は乱暴にドアを開けられてその音で飛び起きる。何事だ!?と見てみると何故かドアを開けたであろうティズが驚いた顔をしていた。


「ゆ、夢じゃなかった…」

「はぁ?寝惚けてんじゃねーよ」


 まだ寝足りないあたしは、もう一度寝ようとしたがその前にライリとニックスが部屋に飛び込んで、ティズと同じく驚いてあたしを見た。


「夢じゃなかった、なんて言うなよ!鬱陶しい!」


 図星だったのか、ライリが乾いた笑いを漏らす。

呆れてもう一度寝ようとしたら、支部長が来る時間だからとベッドから引きずり出された。チキショー。


「どうも」

「……」

「……」


 寝癖のついた髪を直しつつ支部長カップルに挨拶をすると、サリエル支部長もリンク副支部長もぽかーん、とした。ぽかーん、と。

幽霊でも幻でもないよ。

 サリエル支部長は相変わらずのナイスな体型で、胸元を晒していた。リンク副支部長は寝起きです、と顔に書いてある。あたしも寝起きです。

ライリ達に話したように、経緯を話した。


「その少女が呼び出した可能性はあるな」

「あの少女、が?」


支部長は金髪少女が呼び出した人物だと推測する。


「ではその少女を捜しますか?」

「いや……メデューサならば見付けた途端、石になりえる。…危険だ」


 ライリにリンクはゆるりと首を横に振った。あたしを呼び出した可能性があっても、あたしも彼女を捕まえる気はない。

だってメデューサだったら石化する。


「少女が呼び出したなら目的があるだろう。遅かれ早かれ接触してくる」

「そ、その時どうすれば…」

「さぁな。訳を訊いたらどうだ?親切に魔方陣を教えてくれたんだ、メデューサでも石にしないでくれるんじゃないか」


 遅かれ早かれ接触してくるのか。

メデューサかもしれない金髪少女が。怖い。

自分で問えと…?…了解。

……と、いうことは?と支部長の次の言葉を待つ。


「実は二週間前、タルドンマカール国の部隊にこの街が襲撃された」

「!」

「ピンクキャットが率いる部隊だ。目的はお前だったよ。とっくに異世界に戻ったと告げれば撤退した。死傷者は少ない」

「……」


 この街が襲撃になった。

あたしのせいで。あたしを匿ったせいで。

なら期待している言葉は来ないだろう。

あたしは俯いた。


「つまりお前がこの世界に戻ってきたと知れば必ず奪いに来るぞ。お前は戦う意思があるか?」

「えっ?」


 顔を上げると机に腰掛けたサリエル支部長が、青い瞳であたしを真っ直ぐに見つめている。人の上に立つ人間の威圧感がびしびし伝わった。


「アルトバスポリスの兵隊として、迎え撃つ覚悟はあるか?」


 問われた言葉の意味は、あたしをまたアルトバスポリス国の兵隊になって、敵と戦えるのかということ。

今度もまた、待遇は隊員だということ。


「────はいっ!!」


あたしは力強く頷いた。

 またここに居させてくれる。

その言葉を待っていた。

意地悪な人だ。サリエル支部長は笑った。


 兵隊に再就職!






十数件の面接に破れて

漸く就職できた恵璃ちゃん。

よかったね!でも親孝行出来ない!




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