出会い
青山墓地を出てしばらく歩くと、公園が見えてきた。公園の中に入ると、まだ幼稚園に通っていない小さな子どもと、お年寄りが数人居るだけだった。姫香と女性は公園の一番左端にあるベンチに座った。
「ちょっと待っててね。」
と、女性は言葉を残して走っていった。数分もしないうちに女性が戻って来た。手には缶コーヒーが2つ。
「ごめんね。コーヒーしか温かいの無くて・・・」
と言いながら、1つを姫香に手渡した。
「ありがとうございます。」
貰った缶コーヒーはとても温かかった。2月の寒さにはとても温まる。缶の開くプシュと言う音が響く。一口ゴクリと飲んだら女性が口を開いた。
「篤弥が亡くなってもう4年が経つのね。」
「早いですね。」
「彼氏はいるのかしら?」
「いえ・・・まだ気持ちの整理がつかなくて、新しい恋をするとか考えられないんです・・・」
姫香が答えた。
「そう・・・」
女性は缶コーヒーを見つめながら息を吐くかのように言った。
「あの時のままにしていたら今にでも篤弥が帰ってきそうなんて思って毎日部屋を掃除していたわ。でも、最近やっと篤弥の遺品整理をする決心がついて篤弥の部屋を片付けの。そしたら、姫香ちゃんとの思い出の写真やストラップとか沢山出てきたわ。本当に姫香ちゃんが大好きだったのね。」
姫香は黙って話を聞いていた。少し間をおいて姫香は、口を開いた。
「おばさん。あの時よりも大分顔色が良くなりましたね。」
「そりゃそうよ。あれから何年経っていると思っているの。何時までもくよくよしても、何も始まらないじゃない。今は、仕事に復帰してバリバリに働いているんだから。将人もね、もうすぐ高校受験なのよ。」
女性は姫香に笑顔を見せた。
「そうなんですか。」
姫香は女性とは違う悲しげな表情を見せた。女性は姫香の表情を見て笑顔が曇って俯くと腕時計が目に飛び込んできた。
「あら、いけないもうこんな時間だわ。仕事の休み半日しか貰ってないのよ。」
女性は少し慌てた表情になった。
「ごめんね姫香ちゃん。私から誘っておいたのに・・・」
申し訳なさそうに言った。
「いいですよ。私も久しぶりにおばさんと話せて楽しかったです。」
女性は姫香の前にしゃがみ込んだ。そして姫香の手を握った。
「本当にごめんね・・・・姫香ちゃんも何時までも篤弥の事を考えていてくれるのは嬉しいけど、笑っている姫香ちゃんが一番良いと思うわよ。新しい恋でも見つけて姫香ちゃんには幸せになって欲しいのよ。篤弥もそう願っているはずよ。」
女性はそう言って姫香に笑いかけた。
「それじゃあね。また何時でも家に来てね。」
女性はそう言うと立ち上がりバス停の方に小走りに走って行った。
女性が立ち去り、姫香は公園を出て川原をとぼとぼと歩いていた。
「わー」
と、どこからか声がしたと思った瞬間、頭に硬いものが何か振って来た。振って来たものを見るとそれは3冊の少年漫画だった。
「ごめん、ごめん。」
声が木から聞こえてきたと思ったら、姫香の目の前に人が降ってきた。




