表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

思い出の・・・

 もし願い事が叶うなら私は死にたい。小高い丘の上にある一本の桜の木。彼と私の思い出の桜の木。そこで安らかに眠りにつきたい。私のせいでごめんね・・・・篤弥(あつや)。本当は私が死ぬはずだった。

2月13日

桜木姫香(さくらぎひめか)は授業中の教室の窓から、小高い丘の上の桜の木を見ている。丘の上の桜の木には雪が積もっている。授業終了のチャイムが鳴った。

「きりーつ、きをつけ、れーい」

「ありがとうございました」

何時もの日課が終わる。急いで鞄に荷物を詰め込む。帰ろうと椅子から立ち上がった瞬間、後ろから声が掛かった。

「桜木さぁーん。」

必要以上に声が高い。後ろを振り向くと、クラスの中心人物である松山志織(まつやましおり)だ。姫香は志織を少し睨み付け、

「何?」

と言葉を放った。志織は姫香の態度はお構いなしにテンション高く話を続けた。

「きょーう、どうしても外せない用事があってぇー、桜木さん掃除当番代わってくれなぁーい?」

姫香は少し間をおいて、ため息を着いた。

「何であなたと仲良く無いのに、掃除当番代わらないといけないの?どうせ外せない用事とか言ってこれから合コンとかじゃないの?それに私が掃除当番の時にはそんなこと知らないとか言って、逃れる気でしょ?」

志織の顔には焦りが見えた。姫香は志織とは反対に表情を変えずに鞄を肩に掛けた。

「もし本当に外せない用事があるなら、あなたのお友達に頼んだら?」

と、言葉を吐き捨て教室から出て行った。教室には志織の取り巻き3人が志織の周りに集まり、姫香を睨みつけていた。

「何よ!ちょっと美人だからっていい気になって、お高く気取ってるんじゃないわよ!」

姫香は心の中で(聞こえてるよ)と思いながら話を聞き捨てた。

 下駄箱で靴を履き替えていると、遠くから手を振りながらこっちに向かっている人が居る。

「姫香ー」

姫香の友人の赤坂麻希(あかさかまき)だ。

「姫香、あんた松山志織に楯突いて仕返しで何されるか分からないわよ。」

半分冗談で、半分本気のような口調で言った。

「別に好き勝手にやらせておけばいいのよ。私には関係ないわ。」

強気とも思えない顔をして姫香は歩き始めた。

「ちょっと待ってよー姫香。」

慌てて麻希が靴を履き替え姫香を追いかけていった。

帰り道に姫香と麻希は無言のまま歩いていた。麻希は姫香の顔をチラっと見て、姫香に話しかけた。

「姫香・・・やっぱり明日学校休んでお墓参りに行くの?」

姫香は麻希と顔も合わさずに前を見ていた。麻希は少し顔を下に向け話を続けた。

「私が言うことじゃない事は分かっているけど、もう4年が経つんだよ。何時までも自分をせめても篤弥君は帰って来ないんだよ?そもそもあの事件は姫香のせいなんかじゃないんだし・・・篤弥君だって・・・」

麻希は姫香の顔を見て話しを続けようとした。しかし姫香の口が麻希よりも先に開いた。

「麻希、ごめん・・・私用事があるから先に帰るね。」

麻希の返事もきかずに、姫香は足早に走って行った。麻希は走って行く姫香の後ろ姿をただじっと見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ