生産行程と機関銃
俺達は一斉に家屋を飛び出し、掛かった獲物をその視界に捉える。音が鳴った瞬間にかかるように仕掛けてあった二重釣り糸に掛かったランフォーが暴れている。糸が引かれた瞬間に支柱が落ちると中の火薬が引火して音を放ち敵侵入を知らせる装置だ。今回は更に引っかかる様に少し仕掛け方を括り罠と連動する様に変えさせて貰った。
「ジャスト!3匹掛かってる!残りは空中に6匹だ!地上はチャルに頼む!」
「了解っす!」
その姿は足が長めで頭はくちばしも長め、尻尾は菱形になっている。翼竜のプテラノドンとランフォリンクスの掛け合わせの様な奴だ。
「さてあの広めの翼を狙うか。イデア!」
今回具現化した武器は
重機関銃 キャリバー50 (架台付き)
対空用に架台も設置して蓋を開けて弾帯を取り付け、両手で握把を握り、両手の親指を引き鉄にかける。
「目標の動きに注視して。」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!
息つく暇も与えない連射を空へ撃ちまくる。いきなり現れた武器に驚いたランフォー達は何が起こったのか分からないまま4匹撃墜。1匹は頭を直撃したようだ。
後2匹は落ちていく仲間に駆け寄ろうとする1匹と俺に対して向かってくる1匹。イデア!と相棒の89式小銃に持ち替える。その1匹は頭が良かったのだろう、いきなり現れた物体を魔法と考え、「キェアアアア!!」と例の魔法封じの鳴き声を俺に向けたが魔法ではなくスキルなので無効だ。
「近づいてくる的になってくれてどーも!」
獲物が向かってくるという事は動きが直線上になって、それは射線を的自身が近づいて来るという事と同義。近くなる程当て易く、滑空では方向転換も効きにくい為、
パン!
イージーな射撃で呆気なく脳天を貫き、撃墜。
仲間に駆け寄った奴は逃げようとしてまた飛び立とうとしていたが背中を見せた時点で負け。こちらも脳天を貫き撃墜。
畑がすでに荒らされた部分にランフォー達の屍が累々だ。
武器をアデイしてチャルの方に向き直る。きっちりトドメを刺してくれているし、首を掻き切って可食部位を残してくれている。さすがだ。
「チャルお疲れ。これで今回の討伐は終わりだ。回収してギルドに行こう。」
「了解っす、いやーそれにしてもさっきの武器はめちゃくちゃ連射してましたねー。何て武器なんです?」
「ブローニングM2重機関銃 通称メデューサとかキャリバー50っていう武器さ。一応対空対応型の機関銃で、空中には弾ばら撒いて当たれば良いってぐらいの精度の銃なんだけどね。今回は距離が近いし弾は撃ち放題で撃墜し易かったな。」
演習において何度か担当射手になってた経験が活きた形だ。しかし乱射したせいかやはり魔力は持って行かれている。さっさと回収して家屋に避難している皆の所へ行こう。流石にチャルはともかく、この死体をイセやクピンちゃんには見せるのはマズいだろう。
死体を回収し、家屋に戻ると
「あ痛ぇ!!」
急に何かに当たり、ダメージを受ける。家屋全体にうっすらと輝くバリアが張られている。
「イセさーん!討伐終わったっすー!バリアを解除してくださいっすー!」
たじろぐ俺の代わりに叫んだチャルの声を聞き、一瞬でバリアは解除された。割と大きめのこの家屋を全部囲ってしまうとは、イセさん恐るべし。今日は女性陣の能力の高さを感じる日だなぁ。
「お疲れ様でございます!うまく倒してこられたのですね!」
「ふぇい。滞りなく。」
痛む鼻を押さえながらイセに答える。魔法学校飛び級主席の腕前は伊達じゃないんだと文字通り痛感させられた。
「おねぇちゃんが手を前に出したら光がバーーって広がって格好良かった!あれで守ってくれたんだね!」
「そうですわ!もっと色々な魔法もありますが私は戦闘用魔法が得意で、こういった防御する魔法も得手としていますの。」
子供には難しい単語であってもその自信満々の態度からカッコ良い!とクピンちゃんは目を輝かせている。ふふん!とドヤふんす顔のイセは視線を合わせる為にしゃがみ、クピンちゃんの頭を撫でる。
「(おっ、ちゃんと視線を合わせにいくんだな。)」
その光景から先輩が後輩を愛でる優しさが感じられた。親兄弟か近しい他人からその様な扱いを受けてきたからこそ出る行動。15歳ぐらいであればそれを実践し始め、それが他人にどういう影響があるかを選別し始める頃合いだろう。俺が高校の時に保育実習に行っていた頃に、弟が通っていた保育園の先生に教えて頂き実践していた動きが自然と出来ている。相手と自分の立場を明確にするという事と女性ならではの母性を同時に感じ取っていた。俺が保育士を目指すのを辞めて自衛隊に行った理由の1つだ。
「(ただ自信満々の態度や自己顕示欲は親譲りなんだろうなぁ)」
とか考えながらいたら、今度はイセがこちらに目を向けて何かを訴えてきた。私頑張りましたけど?今体勢低いですけど?とでも言わんばかりだ。
「よく守ってくれたね。初めて魔法をみたけど大したものだよ。」
多分求められていると思い頭を撫でる。ハルエさんが目を見開いてそのまま怪訝そうな顔になっていたがイセ本人は満足げだ。クピンちゃんも俺に続き、頭をなでなでし始めた事ですぐに明るい雰囲気に戻った。
「さて、今回の討伐は一応これで完了となりますが、他にも個体がいてまた襲って来るかもしれません。その時にはまた連絡を下さい。荒れた畑の回復にはまた補助が出る様に頼んでみますね。」
「何から何までありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか。」
「お気になさらず。こういった事のために私はここに派遣されてきたので。」
あくまで派遣だ。今成果以上の物を貰っても仕方がない。事業内容もこれからの物ばかりでいずれ何かで協力を頼もうと思っていたのだが‥どうやら当人達は納得していない様子だ。さてどうしたものか‥。
「あっ代わりと言ってはなんですがペッポの実の取り扱い方や加工を教えて下さいませんか?この前仕留めたポガポガの調理に使いたいので。」
「そういう事なら喜んで!お任せ下さい!」
こうして家屋の作業場に赴き、ペッポの実を外皮から剥き出し、石臼で粗挽きし、小瓶に詰めるまでを習った。外皮は枝豆の様だが硬さは落花生ぐらいあり、少しイガイガがあって剥き出すのに苦労して手袋がすぐにボロボロになってしまう。アン◯ニオ猪木さんのブラジルコーヒー農園時代の話みたいな状態だ。4人全員で体験し、この生産加工の行程を学んだ。こういった実地体験による状態把握が補助金申請への有力な手段となる。なので議員時代の俺は現地に赴いてなるべく体験までする様に活動していた。「現場が1番の情報と裏付け」「見たまま聞いたままの情報の正確性の確保」は自衛隊偵察隊の矜持でもある。
一通り作業を習い、手伝いも終えた所で夕暮れが近くなったのでお暇する事に。
「また来てねー!」
とクピンちゃんは手を振っている。トカゲ車に乗り込み、宿へと戻る。
「さあいよいよポガポガの調理だ。」




