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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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8/11

事業計画と罠設置

翌朝。南区の方へ出向く乗り合いトカゲ車に乗り、『4人』で移動を始めた。

「昨日は不覚を取りましたが今日は大丈夫ですわ。お供いたします!」

と、イセとハルエが同行する事になったのだ。お陰でトカゲ車は貸切にされてしまった。彼女がこの街の特級階級な人物である事を思い知らされる。他の人に聞かれないこの移動時間を利用し、昨夜固めた案について話しておく事にした。

「資料を読ませて頂いて名物化と流通、そして教育に鳥獣害対策についてこの街で出来る事をしていく方針です。まずは街の民主体で催し物を新たに作る事から始める予定です。」

「生誕祭や収穫祭の様なものを独自で生み出すということですか。」

ハルエさんがいち早く答える。

「その通りです。それを都の民が考えた物である事が良いです。上が催したのではやらされている感が出てしまい、楽しみを半減されかねませんので。」

「ここにある、募集をして各企画に人気投票をしてもらうという手も非常に良い手だと思いますわ。我々の様な立場の者はあくまで補助に徹し、運営も民に任せますのね。」

昨夜少し急いで作成した名物創出計画書に目を通しながらイセは納得の表情と合わせて感想を言ってくれる。それに合わせて、自分なりの計画の目的を語らせてもらった。

「この計画には有形無形を問わない、名物を自分たちの独創性で生み出す、人気投票への参加で街全体が意識を持つ事が叶い、運営をするに当たっては補助ありで安心して行え、後には人や外貨の流入が見込まれる事で、やがて税収でそれは街全体の次なる補助に充てられる。よって人々が持つ充足感を味わいたい欲求と街全体の利益の充足が同時に図れるって事を盛り込んでみたんだ。」

なかなか情報量が多い内容だ。これを見て街の人間はどう捉えて動いてくるかな。

「資料を渡して一晩でこれとは‥。さぞ色々な経験と実績を持って活動していらっしゃったのですわね。素直に尊敬致しますわ。」

目を輝かせながらこの女の子はこちらを見つめてくる。この子にも色々と頼む事が多いだろう。特に教育においては彼女の協力が無くてはならない部分がある。よろしくねという思いを込めて笑顔で返すと彼女はくはっと言いながら片手で目を隠し、天を仰いだ。何かの儀式?

「とりあえずはこの計画書をガルツ神官にお願いします。他の案件はまた後日。」

「かしこまりました。」

そう言ってハルエさんは計画書の紙を丸めて紐で縛り、横に携えていた鞄に収納する。

「じゃあ後はランフォーの討伐っすね。そろそろ着くみたいっすよ。」

いよいよか。野戦と市街地戦は経験したけど空中戦は初めてだな。子供の頃おもちゃのブーメランで鳥を狙ったぐらいだ。はてさてどの様な動きをランフォーとやらはしてくるのか。


トカゲ車を降りて被害に遭っている農家を訪ねる。ミクニから話は聞いていたが畑の外側はすでに食い荒らされて無惨な姿だ。今まではおそらく減るのは覚悟の上で一部を犠牲にし、早めに収穫するなどして確保してきたのだろう。道の先で待っていたのは3人の家族と思しき人達だった。

「ペッポの実を生産しております。ケイブと申します。こちらは妻のディーレと娘のクピンです。」

胡椒にケイブ、ディーレ、クピン‥ なんか閃きそうだけどなんだっけ?

「加成剛志と申します。カナリで結構です。見た所被害は深刻である様ですね。」

「はい。毎年これ以上の被害が出ております。ペッポの実は肉に重宝しますので買取価格は高めなのですが、収穫量はご覧の有様で充分な供給が街に出来ず、商会との信用問題とまでなる始末です。」

「お察しします。私の元いた世界でもひと畝全てが食われるという被害が後を立たず。頭を悩ませたものです。微力ながら退治にあたらせて頂きます。」

「どうかそのお力をお貸し下さい。」

「では作戦を練る前に1つ仕掛けを施してきます。俺1人でやるので皆さんはお家の方へ。」

女性陣3人に送らせ、俺は自衛隊時代に使っていたあるものを生み出して荒らされた畑の更に先の場所に張り巡らせる。それと同時に空からの対策として当時は使わなかった張り方で畑の上を張っていく。とりあえずこれで良し。しかし実の形は枝豆の様なペッポの実。中身は胡椒の粒がまんまで入っている。嗅ぎ慣れた胡椒の香りが食い荒らされている畑の四方から蔓延していてヤバい。肉食いたい。

魔力温存の為、俺も家屋に入らせてもらおう。

「ご主人!おかえりっす!首尾はいかがっすか?」

バッチリだと答えてみんなが談笑しているテーブルに着かせてもらう。流石に小一時間作業をしていて喉が渇いていた所にクピンちゃんが水を運んで来てくれたので一気に飲み干した。

「ありがとう。回復したよ!」

齢10歳ぐらいだろうか、お手伝いが出来てえらいねと頭を撫でると、イセが羨ましそうに、いや?恨めしそう?にこちらを見てくる。ちょっと魔力出てない?

「そうだ、イセさん。今回のランフォーは魔法封じの鳴き声をしてくるので攻撃の主体は俺たちに任せてこのご家族を守ってくれないかな?」

「まぁ‥せっかく私の魔法でお役に立てると思っていたのに。でも分かりました!私が全力をもって守って見せますわ!」

この街では超有名人で特権階級のお嬢様の発言に、恐れ多いのと安心した表情の入り混じる家族を宥めるようにハルエが口を開いた。

「大丈夫ですよ。お嬢様ですから。」


パーーーーーーン!!!


突如外から甲高い破裂音が響いた。


「かかったな。」

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