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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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7/11

温泉と語らい

宿の裏手の所は宿泊客限定の温泉があった。湯量がそこまで確保出来ない為、宿泊客限定になっているのだそうだ。つくづくミクニさんはいい宿を紹介してくれたんだなとまた感謝をする。今日買った着替えと手拭いを持って早速風呂場に向かった。

「おおー。」

扉を開けた瞬間、湯気に硫黄の香り。まさしく温泉だ。備え付けの桶にお湯を溜め、足から湯温に慣れて行くように身体にかけていく。これだ、この肌触り。鑑定結果は含硫黄ナトリウム塩化物炭酸水素塩泉。つまり、美肌の湯。傷の治りや腰痛にも効く温泉ということだ。 体を洗い、手拭いをきっちり絞ってから露天ではないが岩場の池のような形式の温泉にゆっくり体を浸からせる。

「ふぅーーーー‥‥‥。」

息を吐き切りながら温泉のありがたみを噛み締める。自分でも思った以上に疲労が溜まっていたのだろう。早い時間だったから貸切状態だったのもあって全身の力を抜き、体を浮かさせて貰った。この開放感。これだけでも名物になりそうだ。

「気持ちいいっすねー。」

岩場の衝立越しに男女別れて一つの湯を共有しているから声が届いてくるみたい‥‥

「じゃねぇ!!?なんで男湯に浸かってんだ!!?」

あまりに声が近いので隣を見たらそこにいたのはチャルだった。

「いやあ従者として背中の一つも流そうかとこっちに来たっす。」

「来たっすじゃない!今朝マジマジ見ただけで恥ずかしがってたのになんで風呂には恥ずかしげもなく来られるんだよ!」

「にゃー‥恥ずかしくはあるんすよ?でも従者として疲れてるご主人を見たらですね‥何かしてあげたくて‥。」

「はぁ‥その気持ちは嬉しいけども、もう十分色々協力して貰ってるから、誰か来る前に女湯に戻ってくれ‥。」

「了解っすー‥。脱衣所は誰かいるかもっすからこっちから帰るっす。」

ドプン!と湯船に潜り、温泉を共有する穴に頭を突っ込み、向こう側へ抜けていった。猫は頭が通ってしまえば体が全部通ってしまうというが、そこそこあるあの胸でも通ってしまう‥だと‥? なんというか‥これも異世界の神秘なのか‥? 恐るべし‥。丁度よかったのか湯気が多くて肝心な所は見えなくて良かった。絶対今後の活動に影響するから。


ひとっ風呂浴びてさっぱりして楽な格好になり、晩御飯にありつく。合わせて今後の方針についてチャルと話し合った。

「まずは被害が出ているランフォーの駆除、ポガポガの調理と農家から仕入れて調味料を製作してメニューの名物化を図るって感じで行こうと思う。」

「良いと思うっすよ。せっかく揃えた武器や連携もすぐ試せるっすもんね。」

「そうなんだよ。どれだけ俺がこのレベルで戦えるかを確認する意図もある。正直今のレベルでは団体様が来た時に心許ないからな。」

今日もステーキをかっ食らいながら自分のレベルの低さについてを考える。6匹以上来たら具現化をしたところで間に合わないこのMP量では、戦闘においてはいくら能力が高くてもすぐにガス欠だ。レベルアップをしてその憂いをさっさと払っておきたい。

「おっす大将。調子は大丈夫か?」

ここで今晩もミクニの登場だ。昨日の事も心配で今日も顔を出してくれたのだろう。

「お陰さんで快調だよ。まさか裏に温泉もあるなんてね。本当にいい宿を紹介してくれたよ。ありがとう。」

「そいつぁ良かった。昨日はぶっ倒れたから心配してたんだ。飯も食えてる様だし一安心だ。ギルドで解体は済んだのかい?」

「そちらも滞りなく。ギルドマスターも丁度来て挨拶と新たに依頼をされたよ。」

「依頼って討伐依頼か?なんの討伐を?」

「ランフォーって魔獣だね。」

「おお。そりゃまた大変なやつを任されたな。」

「そんなに強いんすか?」

チャルも挿絵を見ていたがどんなレベルの相手なのかまでは想像が出来ていないようだ。

「強いというより厄介だな。すぐ空を飛んで逃げるし、空に向けて魔法を放とうとしても魔法封じの鳴き声をしてきて魔法が使えなくされるって話だ。」

なるほど。魔法でならすぐ駆除できそうと思っていたがそういう事か。

「いや、そこでなんで楽しそうになんだよ?」

無意識にニヤついてしまっていたみたいだ。その理由は、

「倒し甲斐があると思ってさ。困難を楽しみになる様な戦闘民族でいよう!ってのが昔所属してた部隊での信条だったのもあるからかも。」

「おっかねぇ部隊だな‥。」

それは自衛隊新隊員教育隊の営内班での事。初の戦闘訓練練度判定に臨む前に同期の1人が掛け声と共に掲げたスローガン。「俺たちは戦闘民族!サイ◯人だ!」というZ世代(笑)丸出しの内容のものに起因する。随分と経ったがそのスローガンを掲げるだけあって、うちの同期は残った者は陸自で最も過酷な任務を負うレンジャーに、辞めた者もどこかしらで戦っている。プロボクサーとか消防救急とか。

そんな同期に負けないようにしていたら、ビビリの俺がどのジャンルの最前線にいたとしても自然と戦える喜びに奮えるようになったのだ。ニヤけてしまうのはあの時の同期たちとの思い出がチラつくからだろう。催涙ガス訓練の鼻水事件とかもう笑うしかない。

魔法がダメなら物理でやるしかない。となればアレで仕留めるしかないね。

「まぁなんだ。多分その被害を受けたっていうのは俺の幼馴染の所だろう。力になってやれるんならよろしく頼むぜ。」

ミクニはジョッキで果実酒を煽り、それを飲み干した。ここまでよくしてくれているのだ。是非もない。

「解体したポガポガはどうするんだ?」

「肉には出来たけども調味料が足りないんだ。酒があるならありそうな物と、豆から作る物を試してみようと思っているよ。」

「どうせなら美味いのを拵えてくれよ。楽しみにしてるぜ。」

そう言ってミクニは帰って行った。

俺らも部屋に戻ろう。書類の目通しを済ませたい。


部屋に戻った俺たちは、部屋をパーテーションで区切り、それぞれのスペースへ別れる。もう一部屋を取って休むのも提案したのだがそれはチャルに拒まれた。「節約っす!」と断固として聞かない。年頃の女の子に対して配慮しちゃダメ?

その夜は書類に目を通して3つ程案を固め、眠りについた。


「明日はめっちゃ疲れるだろうな。」

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