強引とGO INN
「はい???」
俺とチャルはハモりながらあまりに突拍子もなさすぎる提案にきょとんとしてしまった。
「いやいや いきなりそんなこと言われても困ります。」
「神官の娘として、神からの使いである方と結ばれるのは光栄な事。子でも成されれば御子になるのです、年も15と結婚も出来る歳ですし親バカと思われても仕方ありませんが器量も問題ないかと。」
いやいや問題ありますけど?こちとら未成年者のSNS児童ポルノ事件の被害者の対応にまで追われたことある人よ。日本では18歳で結婚できるとはいえそれにも満たってないって大分犯罪チックなんですけどーー?
「私では‥‥‥ダメでしょうか?」
そして本人がかなり乗り気ーーー??
「ダメというよりもイセさん。私がいた元の世界では18歳から結婚が認められる法でありましたので私にその慣習はありません。歳の差もありますしね。」
ちょっとムッとして彼女は言い返してきた。
「それはそちらの世界でのことでありましょう?こちらでは15歳で婚姻を結ぶのも珍しくありません。 巫女としての作法も教育も受けております。歳の差は埋めようがありませんが‥私としてはその‥その方が‥‥。」
あっわかった。この子ファザコンでおじさんフェチなんだ。言いごもりながら目を輝かせて耳まで赤くするその姿を見て確信した。
「私としてはこれからこの街以外の事も回らなければなりません。安く見ても数年以上かかる事業となります。今身を固めては事業に支障をきたすでしょうから婚姻などは考えておりません。魅力的な方ではありますが初対面のあなたの伴侶にはなれません。」
やんわりとこんな感じで諦めてくれればいいけど。
「魅力的なんですわね!嬉しいい!」
魅力的の一言が余計だったか‥。彼女は目を輝かせ姿勢を正すと
「伴侶として認めて貰えるよう、そしてカナリ様の世界に流儀を習うということで18歳になった時にもう一度提案させて頂きます!それまで私も有用と思って頂く為にその事業と旅にご同行致しますわ!」
「よくぞ言った!娘よ!行ってくるがいい!」
「はい!お父様!」
おいおいこっちは了承してないですよ?? というまでもなく彼女は自分の部屋に準備をしに激走していった。
「娘をよろしく頼みますぞ。」
どれほど能力を買っているのか知らんが今日会ったばかりの男に15歳の一人娘を旅や嫁にやるとはどういう性格してるんだこの男は。
しかしついてくるとなると、いくら魔法が使えるとはいえ15歳の女の子だ。道中離れられて何かされても寝覚めが悪い。結婚は無理だが災難に見舞われるのも困る。青少年育成委員会理事としての矜持、子供を守り育てるの理念としてもここは同行を認めざるを得ないだろう。一応猶予期間はあるようだしその間に諦めてもらう他ないか‥。
「チャル。危険からはなるべく守るが女の物事となると手が出せん。そこは頼んでもいいかい?」
「(うーむせっかく2人きりの旅の予定だったすけど)仕方ないっすかねぇ。ご主人の仕事に差し支えないように頑張るっすー‥。」
あの勢いの親子を見て、諦めたのか察したのかチャルは了承してくれた。なるべく負担をかけないようにするから頑張ってくれ。
しばらくはこちらを拠点として活動するのでと言い残し、宿へ向かわせてもらう。なんだか急に疲れが出てきた。そういえばどうせ死ぬ気だったから昨日から何も食べていなかった。それでこの怒涛の出来事だ。むしろここまで冷静に事を運べたのが奇跡だった。今ならどんな料理でも嗅ぎ分けて食えそう。トカゲ車に再び揺られながら眠気と食い気を抑え、しばらくして宿に到着した。 すでに良い匂いがしてくる。周りはすっかり夜の賑わいとなっている。
「ここがミクニさんが言ってた宿「アワラ」っすね。一階が酒場になってるみたいっす。」
この良い匂いは酒だけではないだろう。食堂も兼ねているんだなと分かる。
「こんばんは、ミクニという方の紹介で来たのですが。」
お店の女性に声を掛けるとすぐさまこちらに向き直りその豪快な体躯に見合った大きな声で応対してくれた。
「あんたが神の御使さんかい!ミクニから聞いてるよ!2階の一番奥の部屋をとってあるよ‥
ぐぅうぅうぅうぅうぅぅぅぅ!!
「っておやおやこりゃあ腹ごしらえが先かね。(笑)」
「お恥ずかしい、昨日から何も食べてなかったもので。流石のこの匂いに耐えられなかったようです。」
女将?さんはにっこり笑って窓際の席に案内してくれた。
「ベルレ神さまの御使さんにうちの料理が口に合うか分からないけどタンと食べてくんな!」
どーーーんと置かれたのはシチューとサラダとパン、そして4枚重のステーキだ。
「こりゃあ、豪快な。いただきます!」
気合いと感謝の合掌! 空腹にまず汁物のシチューを流し込む。ベースは野菜のソースだろうか。中にも一口大の肉と玉ねぎのようなものが入っている。
「あっちの世界でのビーフシチューみたいなもんかな。お腹に染み渡るなぁ。」
「多分肉はブルガンジーで野菜はギネマっすね。この2種類の組み合わせは結構なバリエーションがあってどれも美味しいっす!このステーキもブルガンジーっすよ。」
やはり元の世界でいう牛に似たような生き物がこちらにもいるから食用になっているのか。あれだけ広大な畑があるならば堆肥の確保の為、畜産もあるのだろうと踏んでいたが推察に間違いはなさそうだ。
「その色々なバリエーションとやらもいずれ教えてくれ。」
「はいっす!」ステーキを頬張りながらチャルは答える。膨らんだ頬がとても愛らしい。そんな姿を見ながら空腹の為かあっという間に食べ終えてしまった。
「どうだ?おかわりいるか?それとも酒か?」
「ミクニさん!どうもっす!美味しく食べさせていただいたっす!」
農作業の残りを片付けてきたと酒のジョッキを持ったミクニのご到着だ。
「どうだったカナリ様?神官様のところで何か言われたか?」
「ミクニ殿に様って呼ばれるのは何か歯痒いものがあるからカナリで良いですよ。」
「と言っても神の御使い様と農民じゃ価値が違うだろうよ。様づけくらいは慣れてくれや。俺に対しても堅苦しい話し方は無しだ。で?どうだったんだ?」
「どうだったも何もいきなり娘を妻にと言われたよ。」
ブフォぉぉぉぉ!!!!とミクニは酒を口から吹き出してしまった。
「どういう事だおい!?娘ってあのイセ様だろ!?魔法学校主席卒業の器量良し、家柄良しのお嬢様じゃねぇか!」
「安心してくれその件は丁重に断った。だが当の本人が何故か前向きで、その魔法で俺に協力してくれるって話になった。」
「流石に歳の差も見たところあるしなぁ。飛び級で魔法学校卒業して巫女修行に励んでるって聞いてたけどまさかそんな。」
ミクニは大笑い。ここでファザコンやおじさんフェチについてまでは語らない方が良いだろう。‥いずれバレそうだが。
「本当、ポガポガを見つけた時より驚いたよ。15歳で結婚までするっていうのもこちらの世界ではなかったからね。」
「そっか別の世界から来たんだもんな。御使いには不要かもしれないが色々と不安な事もあるだろう。俺でよければ協力するぜ。」
「不要なんてとんでもない。むしろこちらからお願いしたい。どうかよろしく頼む。」
「おう!できる事なら任せとけ!」
このミクニという男と最初に知り合えたのは幸運だ。これもベルレ神の導きなのかな。
「じゃあ早速一つ。今日狩ったポガポガの処理をしたいからどこか場所がないかな?」
「あぁあれだけデカけりゃあここで解体は出来ないか。街のお堀に沿った先に冒険者斡旋のギルドがある。そこの魔獣の解体部屋を借りるのが早いと思うぜ。」
「分かった。明日行くよ。」
そう告げて飲み干した水の入っていたコップを置いた瞬間。俺はテーブルに突っ伏し、意識を失った。
「おっ!おい!どうしたんだよ!?」
「スー‥スー‥。」
「寝ちゃってるっすね(汗) 満腹と明日の行動が決まった安心感で疲労の方が上回っちゃったみたいっす。」
それを聞いて安堵したミクニとチャルは2人で肩を貸し、俺を寝室まで運んでくれた。俺をベッドに寝かせ、ミクニはギルドの連中も飲んでるから話をしといてやると言い残し、部屋を後にした。
上着を脱いだチャルは枕元に顔を持ってきて俺の寝顔を観察する。
うっとりしながら上着を脱いで顕になった『耳』と『尻尾』を揺らす。
「この寝顔‥ 懐かしい‥にゃ‥‥。」




