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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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イセとハルエ

戦闘用の鉄甲を付けたハルエの怒りの拳がメキの頬に決まる。メキの体は横にすっ飛び、両足で地面を抉りながら堪えてようやく止まった。

その隙に盾で防御したチャルはイセに声をかける。

「大丈夫っすか?! 今回復するっす。『イセ・スカーレ・ラフラ・リカーバ・フルネスト!』」

傷も体力も全て回復する最上位魔法。特級の癒し手であるというのは本当だった。風と光で傷を、水と地で体力を回復出来るがその両方を最上位で扱えねばこのフルネストは使えない。あっという間に痛みも疲れも吹き飛んだ。

「良し!これで回復したっす!後方の治療に関しては大方終わらせて任せて来たっすから、あっちに加勢してご主人を待ちましょう。」

痛みは取れたが向けられた殺意に宛てられ、体が思うように動かない。あっちに加勢‥‥あれは‥久々に怒ってますわね‥


「人間にしては良い拳持ってるな‥。だがこんなもんじゃアタイは倒せねぇぜ?」

吹っ飛びはしたがまるでノーダメージ。メキは双剣を構え直す。

「お嬢様を狙った事、そんな1発で終わらせると思うのか?あぁ?」

こちらも鉄甲を構え直す。



ハルエは生まれつき握力がとてつもなく強く、そのせいで周りの子供達が忌避するようになっていた幼少期を過ごし、いつしか北部エリアの不良となっていた。善行をしようにもこの握力が邪魔し、失敗ばかり。誰とも親しく関わらないまま裏格闘の世界に入り、その摘発にガルツ神官が動いた時、まだ13歳の少女だったハルエは娘のボディーガードとして引き取られた。その時まだ8歳か9歳のイセが、


「あなたのその力は何かを守るためにきっと神様が与えてくれたんです!その力で‥‥私を守ってくれませんか?」


その言葉にハルエの心は救われる。


涙を流しながら「はい。」と答え、それからは普段の表情を抑えて感情的になってこの力を振るわないように努め、お嬢様に尽くすメイドとして雑事や護衛に尽力して来たのだ。

その人生の役目を与えてくれた主人を目の前で痛めつけられ、それを命令で一時離れていたとはいえ防げなかった自分に怒り、感情が爆発してしまったのだ。

「切れちまった‥ 久々にキレちまったよ‥‥。」

殺気ムンムンの状態から一転空気が一瞬凍りつく。いや無になったというべきか、その瞬間にハルエの拳がメキの鳩尾にめり込んだ。


当時13歳の少女だったハルエが裏格闘で戦って来られた必殺の拳「無拍」


闘気、殺気の類を一瞬収め、頭と視線の高さを変えずに相手に近づき拳の中指の一点に収めた気を乗せて持ち前の握力と共に叩き込む。


だがメキはそれにいち早く反応し、鳩尾に食らうも翼の羽ばたきで身体を後方へ流しその威力の大半を流した。

「うわっ危ねぇな。まともに食らってれば落ちてたぜ。」

相手は一枚も二枚も上手。さすが敵陣地に単独で襲ってくるだけの事はある。


それがどうした。


関係なく地面を踏み抜き、そのまま連打を叩き込む。当たれば大怪我の一撃を全て躱したメキは翼を広げて空中へ。

「そこだ!」

ハルエは狙っていた。広げられた翼を左手で掴み、「そらぁ!!」とそのまま地面に叩きつける!右の拳を振りかぶりメキの顔面目掛けて振り下ろす。

「ノクト!!」



突如黒い影がハルエを襲い、その攻撃で15m程吹っ飛ばされ、建物の壁に打ちつけられて倒れた。

メキを守ったのは黒く身体の長い龍。その長い尾を鞭の様にしならせハルエを弾き飛ばしたのだ。

「ハルエ!!!」

イセの声も届かず、ハルエはピクリとも動かない。

「ボクが回復してくるっす!」

チャルが飛び出し、急いで回復に走る。だがあれだけ吹き飛ばされて激突した重傷だ。回復魔法でもなかなか治すのには時間がかかるだろう。

「ハルエ・スカーレ・リカーバ・フルネスト!」

ハルエの身体を起こし、先程と同じ癒しの光がハルエを包む。体力の回復を抜きにして施しても予想通りすぐには傷が全快しない。

「(くぅ‥ご主人が来るまでイセさんから離れたくなかったっすけど、この人の傷では時間を置いたら死んじゃうかもしれない!早く!早く治って!)」

チャルも懸命に治すが先程まで後方で治療に当たっていたこともあり、連続で回復魔法を使ってすでに魔力も限界に近い。

イセは目の前の光景に驚愕していた。相手は召喚士。格闘家ではないしこれは戦争だ。その事を忘れて突っ込んでしまったハルエの方が抜けている事は分かる。だがその引き金は私を思うが故だということも分かっている。つまり私が隙を突かれた事が招いてしまったのだ。

ノクトと呼ばれる黒龍はイセに向き直り、その口から黒い炎を溢れさせている。

「イセ様!早くこっちに来るっす!」

チャルの声も虚しく、イセは自分の責であると感じた事とあの巨大な龍の標的が自分に変わった恐怖が合わさり、体が竦んでしまった。

「あぁ‥ あぁ‥。」

「あー痛ぇ。翼が少し折られちまった。とんでもない握力だな。まぁでは‥本来の標的を狙わせてもらうとしようか。ノクト!」


黒龍が口を開きイセにブレス攻撃を仕掛ける。


少し傷が癒え、意識の戻ったハルエがそれを見て叫ぶ!

「お嬢様ーーーーー!!!」



ダダダダダダダダダダダダダダダ!!





ブレスは放たれなかった。 その代わりに雨の様に銃弾が「上から」降り注ぎ、メキの周りや黒龍の耳や身体を掠めていく。



「お待たせ。」

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