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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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作戦会議とナンジョー君

「そんな事が昨夜あったのですね。」

国境に向かうトカゲ車の中で昨夜の出来事を報告。相手は魔法封じの魔物を従えている事、召喚士が混じっている事。翼を持つ兵士がいる事を情報として挙げた。

「我々が着く頃には魔法封じの魔物はある程度減じられているとは思います。ですが完全にそこを叩いてからでないと本丸を攻められません。魔法兵の力をどの場面で覆されるか分からないのでは士気に影響しますので。」

「その為、戦士兵が耐えているという話でしたね。私は一度その兵達の回復に努めた方が良さそうです。」

今回の攻撃魔法の出番は後半戦になる。イセはまた後方支援からになるが何の不満もないようだ。

「はい。その間に私がこの前のケイブさんの依頼の要領で残りのランフォーを片付け、魔法兵に溜まりに溜まった魔力と鬱憤を晴らして貰おうかと。」

数日間耐えているなら相当フラストレーションを溜め込んでいるだろう。街の士気の爆発を考えたらこれで押し返せるはずだ。

「敵の召喚士はどうするのですか?」

ハルエも積極的に作戦会議に参戦。やる気満々な感じがする。表情は変わらないけど。

「ランフォーを片付けた後に皆で一斉にが理想かな。召喚士ってそんなに強いのかな?」

その発言に一同絶句する。その表情だけで恐ろしいものだという事はすぐに理解出来た。

「ご存知ないカナリ様では当然の発言ですわね。一般に召喚士1人に兵300と言われる程の戦力差です。」

それはそれは。何人の召喚士が来ているのかは知らないがそれを相手に魔法兵を封じられているのなら大苦戦だろう。一刻も早く助けに行く必要があるわけだ。

「魔法封じの魔物をどれだけ速く狩れるかが勝負だな。地形の特徴はありますか?周りに高い場所があると嬉しいのですが。」

「ソーアは山に囲まれた盆地の中にあり、街全体が谷に囲まれて少々孤立した街です。物資も西側に道が続いていて谷になっていない部分から行き来しているはずです。」

「なるほど、だから飛べる魔物中心で攻めて来ているわけか。物資の流通を止めようにもその1箇所を守れば補給を守れる。守る側は補給線を死守してくるのであれば、谷側から魔法を封じつつ空を飛んで街自体を攻める。と。」

頭に思い浮かんだのはカリオ◯トロの城の湖が谷に変わっているイメージ。だがその作戦では人間族側の兵站が補給できる以上、持久戦になればソーア側は持ち堪えやすい。召喚士で補給線を一気に攻める事になれば街は保たなかったはずだが、その戦力があるにも関わらず攻めあぐねているように感じるのは何故だ?‥理由の候補は‥


1.召喚士側の都合

2.あの男が見たのは召喚ではなかった

3.ソーア側に召喚士対応策があり、それが機能している


2は悪党すぎて考えられるが命からがらの脱獄後安心した心で何の責任も誰なのかもわからない俺に嘘を吹き込む理由がない。よって召喚士は戦場に攻め始めの段階ではいた事になる。

3はこれがあると一番ありがたいし納得が行くんだが、牢獄を壊されるほどの攻撃を受けているなら持っていないと判断して間違いないと思う。

よって1の線が濃厚だと考えられる。相手の召喚士は戦闘中に何らかの理由で一時離脱した。

ここで昨夜の出来事を思い出す。 脱獄‥‥追跡‥‥それなら合点が行くけどな‥‥

「ご主人、何考え込んで1人で納得してるっすか?作戦どうするっす?」

おっといけない。 チャルの呼びかけに我に帰り、作戦を伝える。

「作戦はイセさん、チャルの2人は回復役と防衛役として街に向かって。ハルエさんは2人の護衛を頼みます。」

「ご主人はどうするっすか?」

「俺はランフォーを谷を挟んで『山の上から』狩る。飛んでいるランフォーが落ち始めたらイセさんが反撃の号令を発して下さい。そこからは遠慮は要りません。」

「かしこまりましたわ。」

ニヤりとイセは笑い軽く拳を握る。闘志満々。


「そろそろ国境に着きます!ご用意を!」

ナンジョー君の報告が来て皆身構える。ここからは徒歩での移動だ。明日の昼頃にはソーアにつく計算だがなるべく早く移動した方が良さそう。

国境警備隊の詰め所に着いて書類を見せる。

「確認致しました。イセ様、ご武運を!」

イセは国からの招聘である為、この衛兵さんも事情は汲み取ったのだろう。敬礼が力強い。

「では私はここまでです。私からも武運を祈っております。無事ベルレ・ガルアにお戻り下さい。」

「ここまで搬送ありがとう。迎えもよろしくね。」

「はい‥お待ちしております‥。」

ナンジョー君は何か申し訳なさそうに答えた。俺はそれを見て優しく頭を撫でて、

「大丈夫。何とかしてくるから。」

安心させようと思って言った瞬間。ナンジョー君の左目から涙がこぼれ落ちた。

「えっちょっ大丈夫?!」

「あっ‥失礼しました。何だか勝手に‥。」

「これでお拭きを。」

ハルエさんがハンカチを手渡す。

「では私達は行きます。貴方も気をつけて帰るのよナンジョー。お父様にもよろしくね。」

「はい‥お帰りをお待ちしております‥。」

そう言ってトカゲ車の御者台に乗り、ナンジョー君は帰って行った。俺達が国境の門を潜って少しした時、後ろの遠くの方からなんだか泣いている様な叫び声が聞こえて来る。

ハルエは決意を鈍らせない為に促した。


「行きましょう。急がなくては。」


優しい子だよ。ナンジョー君。

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