寝室と絡み
「ハルエ。どうだった?」
寝室に戻ってきたイセは先に入っていたハルエに問いかける。
「はい。思った通り、ナンジョーもあの話を聞いていて、その当人があんなにご飯を食べている姿に胸が一杯になってしまっていた様です。涙を堪えるのに必死で食事が進まなかったと。」
「やはりそうでしたか。いつも人より多く食べるあの子が全然手をつけられていませんでしたものね。」
「はい。私から宥めておきました。私も同じ気持ちだと。」
睨んでいた通り、ナンジョーも心を痛めてたようだ。ハルエを行かせたのは正解だった。
「あなたはどう?あの話を聞いてカナリ様の経歴を知る事となって、率直な思いは?」
「微力ながら支えたい。です。」
即答だった。あの話を聞いて、たじろぐ様なら今回の任の交代を呼ぶ事まで考えたがその必要はなさそうね。
「私も同じ気持ちよ。この世界に引き取られた事を後悔させたくはないわ。そのおまじないの一つはさっき済ませてきたけれど。」
「?? 何か魔法をかけてこられたのですか?」
「ええ。私にも効果がある魔法をね。」
本当は唇にしたかったですが流石にまだ私の心の準備が整ってませんでしたわ。初めてですもの。
「そうですか。ただ私は話を聞いてもう一つ思ったことがありました。」
「あら。何かしら?」
「これは憶測なのですが、話が孤軍奮闘の部分が多く、頼るという行為自体を毛嫌い、または恥と捉えているのでは?と思ったのです。」
「なるほど。何か手伝わせるというものをあまりした事がないというか‥話を聞くに、頼ることが出来るはずの相手を信用する事が出来なかったから‥ 十分な結果を出す為に自らを追い込み鍛えるしかなかった‥相まって出来ないは恥‥その可能性は大いにありますわね。」
「頼ることなく、自分で全て背負えば他が傷つく事はない。守るという意識が高い者に見られる傾向です。」
「同窓生の方が亡くなられた時も相談をして欲しかったと言っていたけど、カナリ様自身が相談をするという話はあの中では聞かなかったものね‥。」
自らは頼らず、頼られたい。これが根本にある人なのだろう。手伝いたい側としては厄介なものだ。
「私たちもあちらの世界の人間と同じになって、実行する者に押し付けてしまわない様にしなくてはなりませんね。」
「こちらとしては頼って頂きたいものですが。難しいものですね。」
「簡単ですわ。」
イセはハルエの難しいの一言を一蹴する。
「自分の事は自分でやり、頼られないなら勝手に助ければいいのです。結果が良ければすべてよしの形を取れば、経過は気にする必要もありません。」
なんと自己責任には自己責任で、自由には自由で返す。同じ結果を向いてさえいれば良いと。他力本願にならない事は良いが、それではお互いに結果を見つめすぎて、相手から自分を見てもらえないのではないのだろうか‥。
なんと健気な‥‥ですがそれをお嬢様は選ぶ。というのなら私は専属メイドとしてそれに倣うだけでございます。カナリ様を支えたいお嬢様を私は支えたいのですから‥
「方針は理解いたしました。ですがお嬢様も朝から魔法と出発準備、そしてあの話を聞いてお疲れでしょう。今晩はもうお休みいたしましょう。」
「そうね。そう言われて今、一気に疲労感と睡眠欲が来ましたわ。ではおやすみなさいハルエ。」
そう言ってお嬢様はベッドに入り、数秒と経たず寝息を上げ始めた。流石にお嬢様といえど10代の女性の身体だ。体力的に限界であったろう。
「ゆっくりとおやすみなさいませ。」
俺は一旦周りの状況確認に外を散策しに来た。宿は二階建てで泊まっている所は角部屋だ。そこを中心に警戒網を張ろう。そうしてしばらくして他が寝静まってきた頃、
「よー兄ちゃん。モテモテだったなぁ。まったく羨ましいぜ。」
酒臭い壮年の男がからみ酒してきた。飲み屋周りってそういうのあるよね。
「まぁこれが戦地に向かう旅でなければ良いのですがね。」
「戦地!あんたらクマポンに行くってのかい?!」
一気に目を見開いて壮年の男は驚く。なんか知ってそうだな。
「はい。今の状況とか何かご存知ですか?」
「ご存知も何も!俺はそこから避難してきたんだよ!あいつらいきなり攻めてきやがったんだ。」
「ソーアから逃げて?」
「あぁ。あいつら魔人族は空を飛ぶ魔物を駆使して攻撃してきた!魔法封じの鳴き声にやられて魔法兵が戦いづらい状況にされちまったんだよ。」
ふむ。先日片付けたランフォーがいると考えていいだろう。イセがいるこのメンバーでその状況を先に聞けたのは幸運だ。対策が立てられる。
「ソーアの街は魔法兵が多めの街だ。今は戦士兵が保たせてるみたいだが、いつまで続くか。」
「理解しました。情報の提供を感謝いたします。お礼にこちらを。」
「なんだいこりゃ?」
渡したのはケイブさんから貰ったペッポの実の一部の入った小さい袋。
「これはペッポの実じゃねーか!こっちじゃ育たねぇから高級品だぞ!?いいのか?」
「ええ勿論。先程の情報で対策が練れてこちらの命の危険を回避できる事になりそうですから。」
「へへっ、命からがら逃げた先で女の子をあんなに侍らせてるやつ見て、嫌がらせの1つでもして憂さ晴らししてやろうと思ってたのによ。何かすまないな。」
ちょいとふざけてそういう事したくなっても仕方ない。強制疎開とはそれほど気が滅入る行為だから。
「話したついでにあの魔人族の軍の指揮官、ありゃ召喚士系だ。逃げてる最中に魔物を呼び出す所が見えた。一筋縄じゃいかないと思うぜ?」
「(見つけた‥)」
「(!!)どうやらそのようですね。お兄さん。3歩半下がろうか。」
「へっ?」
俺は男を押し出し、その場から離れさせる。
ズダーーーーーーーーーーン!
その瞬間、上から何か降ってきた。




