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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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17/26

シャキットとコーン

おっさん世代はみんな知ってるメロディ

「上等ですわ〜〜〜〜!!!!!!」


「なっなんだぁ!?」

突如のお嬢様の叫び声に俺は飛び起きた。


「あっおはようございますっすご主人。」

「ちゃっチャル、なんか喧嘩でもしたのか?」

なんかイセが涙目だし、寝かされている間に何があった?

「してないっすよ?ちょーっとご主人の事について質問されてただけっす。」

えっそれで涙目なの?何話したんだチャル?

「大丈夫です。話を聞いて私が決意を新たにしただけですわ。」

「なっなら良いけど‥。」

何の決意? 完全に眠らされてたから話の内容はさっぱりだがどうやら俺がゴチャゴチャと続ける事はなさそうだ。

そう思っていると御者の人がそろそろ着きます!と本日の目的地の街のお宿への到着を告げる。

本日はこの国ミヤーザの国境近くの街、ダケイ。宿場町としてそこそこ栄えている街だ。

宿に着くが部屋は2部屋。護衛として先程少し寝て体力を回復した分、用心の為、寝ずの番を申し出た。

「ここならあんまり気をつける事もないと思うっすけど、それならボクが早めに休んでご主人と途中で交代するって感じでどうすか?」

自衛隊の24時間警備の交代以来のやり取りだ。そこにハルエもローテーションに加えて欲しいとの申し出が。しかしチャルが遮る。

「ハルエさんはイセ様に付いていて下さいっす。今日は突然の出発、そしてさっきのと色々あったっすからね。」

「‥分かりました。」

一瞬俺の方に目をやり、ハルエさんは了承する。さっきのってなんなのか。未だわからないままだがとりあえず皆んなで晩御飯にしよう。


宿屋の隣の食堂にみんなで入る。御者さんは宿を取ると同時に予約を入れてくれていたらしく、奥のテーブル席に案内された。 

「それにしても準備で食材を見ていたのもあったからか、今めちゃくちゃに腹減ってきたよ。」

「フフッ、カナリ様も遠慮なさらずどんどん食べて下さいまし。」

国からの依頼である為今回の旅の費用は全て国持ちだ。この先国境を越えたらトカゲ車も帰して徒歩での移動になる。遠慮は要らないし、少しでも体力回復と栄養摂取に努めよう。

「いただきます。」

そう言ってまず啜ったスープの味と食感に少し驚く。

「これは‥。」

正しくコーンスープ。ブルガンジーの乳のスープの中にいるのは紛れもなくとうもろこしだ。

「それは『シャキット』のスープですわ。お口に合いました?」

久しぶりのとうもろこしの感触に思わずコーンに産まれたこの命〜♪と歌ってしまいそうになっていた。しかも名前がシャキットってw

「カナリ様?随分嬉しそうですが大丈夫ですか?」

「ああすみません。あっちの世界での好物とそっくりだった物でつい嬉しくなってしまいました。」

「そうでしたのね。それは何よりです。他にも好物はございますか?」

「後はスイカという果物。それとこちらでいうブルガンジーの肉があればそれだけで良いぐらいでしたね。一応苦手はあれど好き嫌いなく食べてました。」

「それは素晴らしい事ですわね。スイカとやらをまた探してみると致しましょう。ブルガンジーの肉もきましたよ。どんどん食べてくださいまし。」

「はっはい、」

あれ‥?心なしかいつもの元気がない?さっきは叫んでいたのに。やはりチャルの言う通り疲れちゃったのかな?

「ところで‥私も一緒になって食べて宜しかったのでしょうか?」

ここまで乗せてきてくれた御者さんだ。若い使用人で身長も低めのまだ10代ぐらいの男の子。イセが招き入れ、一緒に食事する事になった。俺よりもむしろこの子にたんと食って欲しいぐらいだ。

「ナンジョー。食卓は人数が多い方が良いのです。遠慮せずお食べなさい。」

この子はナンジョーというのか。イセと全くの同意見だし、人数のいる食事はどれほどぶりか。

「ここまで安全に運んでくれてありがとう。冷めないうちに食べよう。」

「はい、ではいただきます。」

そうしてスープを啜り、ほわわ〜んとした表情でそれを平らげた。その表情を見られただけでも満腹感がある。

メニューはとうもろこしに似たシャキットとブルガンジーの乳のコーンスープ、ブルガンジーステーキとにんじんに似たキャルとブロッコリーに似たカタシンの温野菜添え、オムレツとパン。

肉に合わせているソースはギネマとケチャの合わせた酸味の強めのもの。俺としては米が欲しくなるがベルレ・ガルアでは米は見つからなかった。栽培とかも視野に入れて今度考えてみよう。

肉が美味くてステーキ3枚目にまで手を伸ばしたところで、

「じゃあ先に休ませて貰うっすー。交代までおやすみなさいっす。」

と、チャルは席を立った。それとは対照に、その隣にいたナンジョー君の皿は全然減っていなかった。

「どうしたの?大丈夫?」

「あっいえ‥カナリ様が美味しそうに召し上がるので‥見惚れておりました。」

へ?そんな理由だったの?

「だとしたらナンジョー君の最初のスープを飲んでいる時も幸せそうだったよ。他のも食べて疲れを癒そう。あんまり遅いと美味しくないのかな?と心配されちゃうよ?」

「あっはい。申し訳ありません。」

そう言うとナンジョー君は残りを急ぎ気味で食べ始めた。どうやら好き嫌いとかベジタリアンとかではないようで良かった。お残しは許しまへんで。

「ご馳走様でした。では御者の寝所の方へ向かいます。また明日、よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくね。ゆっくり休んで。」

ナンジョー君は御者として乗り物の管理者専用の寝所で待機となる。

「ハルエ。少し頼むわ。」

「かしこまりました。」

ハルエさんは席を立ち、ナンジョー君を連れて食堂を出て行った。


「カナリ様は最後に何か食べるか飲まれるかなさいますか?」

2人を見ていた俺にイセはそう提案して向き直らせた。

「じゃああたたかい飲み物を最後に貰おうかな。」

「かしこまりましたわ。私も同じ物を頼みましょう。」

2人分頼んで出てきたのはサーサと呼ばれる葉のお茶だ。一口飲み干すと身体に染み渡る飲み心地で、食べていた肉の油もスッキリ流されていく感じがした。

「一度2人でお話がしたかったのですわ。それが叶いましたね。」

そういえばイセと2人きりなのは初めてだな。いつもチャルやハルエさんが横にいるから。

「まずは改めてこの度の護衛の申し出を受けて下さりありがとうございます。必ず任を成し遂げ、あの街に帰還するまで、どうかよろしくお願い致します。」

そう言ってイセは頭を下げる。

「いやいや、私もいざと言う時に戦場に行かねばならない立場だった事もあるので、それをなされようとするイセさんを放っては置けなかっただけですよ。頭をお上げください。」

「能力を持つものの宿命みたいなものですわ。魔法学校で主席となった時から覚悟は出来ております。だからこそ、その思いに応えて下さったカナリ様の心には感謝してもしきれませんわ。」

ガルツ神官の親心を汲んで戦地に送り出す不安を少しでも解消したかったのは事実。それと今後、あの街の次世代にこの子は必ず必要になってくる。むざむざ危険に晒して失うわけには行かない。これもまちづくりの重要目的の1つ『継続』の為に必要な事なのだ。

「護衛任務もまちづくりも一緒な部分があるんですよ。」

「一緒の部分?」

まったく違う事柄のように聞こえる二つの単語にイセは目をパチクリさせる。

「護衛任務は対象を守れて当たり前、その上自分の身を守って初めて一人前なんです。街としての次世代を守る事は前世代の責任であり、義務です。その上で自分が成したい事を成し、次世代にその一人前の姿を見せ、より良い環境にして行こうという背中を見て、僕たちはどうして行こう?と考えて行動する様に育つ事が街や国を作って行くんですよ。ベルレ・ガルアの今の世代の象徴はガルツ神官でしょう。そして次はイセさんです。あの街のまちづくりを担った以上、あなたを守る事も私の仕事の内なんですよ。」

「相変わらず次世代の事まで考える立派な姿勢でございますね。でもちょっぴり残念ですわ。1人の女性として守って頂けるわけじゃ‥ありませんのね?」

テーブルに左肘を乗せ、頬杖をしながらまっすぐな瞳をこちらに向けて、いたずらな微笑みを見せるイセ。この思わせぶりな態度に他の男ならイチコロだろう。

「もちろん可愛い女性を守る事も男の甲斐性ですからそこも含んでお守りします。」

「あら嬉し。それを聞けて安心して眠れそうですわ。では明日に備えて私も休むと致します。」

サーサのお茶の残りを飲み干し、イセは席を立つ。

「あっと忘れておりましたわ。」

「へっ?」


チュッ


!!!!!


不意を突いて、俺の頬にイセは口付けしてきた。

「ウフフw 今回のお礼に、可愛い女性からのこれくらいの前払いはさせて下さいまし!おやすみなさいませ!」

そう言ってイセは駆け出し、自分の寝室に向かって行ってしまった。


コーーーン‥‥


のど自慢の鐘を鳴らされたように呆然としてしまったが、周りの客が「おい今‥。」「ほっぺに‥。」と酒飲みのガヤガヤから一転、ニヤニヤボソボソの嵐になったのを見て我に帰る。俺もサーサのお茶を飲み干し、夜間警戒の任務に向かう事とした。左の頬にはキスの感触が残る。


「なんだよ‥もう‥。」

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