落選と転移
政治家になり流行病への対応、水害対応と災害マニュアルの改訂、生産世代に有利な条例と基金の設立、稼ぐ力を養う為の教育の導入、鳥獣害対策‥ なんとかここまでやって来られたな‥次は対外的な事業に更に力を注いでいくことが必要 ・・だが‥
「なんで俺が落とされるんだよ!!!!」
結果 落選!!
これほど街に貢献したとしても、投票には結び付かなかった。主な原因としては、やってくれて当たり前の他力本願上等の民、教育導入の際に図星を突かれて何も言えなくなった教職連中の逆恨み、色々と事業や活動をしているからあの人は大丈夫と安心されてしまった事。
「自衛隊の時も思ったけど‥ 国民が嫌いになるわ‥。」
俺 加成剛志は、酪農家の子供として生まれ、10歳でヤングケアラー、小6のクリスマスに両親の離婚宣言、即再婚、出産で牧場の労働とヤングケアラーに長距離通学に反社の息子な同級生のいじめとその放置による被害、高校はまだましだったものの気づけば自衛隊に入隊し、そこまで培った技術が生かせる場に来たものの、身体がついていかず、鍛錬に加え幹部にたらいまわしにされながらも成績を残したが、国民の負託に応えるためには隊内にいたのでは力を十分に発揮できない事に気が付き除隊、予備自衛官に所属しながら青少年育成活動や企画創出等の活動をしていく中で、町の人間のやってくれて当たり前の態度とこちらの苦しんでいる声が届かない現状を嘆き、選挙に出馬し当選。より広範囲の活動をしてきた。 その成果に対する仕打ちは落選という形で返された。
「俺のやってきた事は、誰にも必要とされない事だったのかな・・。」
激しい虚無感に襲われながらいつもの喫茶店で飯を食い終えた私は家路についた。
次の日、私は一人で山に入った。冬の雪の重みで折れた枝達が散乱する道を掻き分けて進んだ先には中学時代に様々なストレスを更なる疲労で抑え込むために作り上げた鍛錬場がある。その頃一度死を感じる出来事があったが、そこから生き残った原点に回帰し、自分の心を見つめ直す事にしたのだ。だが、
「・・・・・やはり、この世界に俺自身は必要とされていないんだな。」
私は鍛錬場に張ってあったロープを結い直し、首にかける。
「その力、こちらに貸してくれ。」
「・・・・あーれ?なんだここ?」
変な声が聞こえて突如意識が遠のいた。 気が付くと辺りは光だらけで自分の周りだけが何かの陰に覆われていた。
「でっ!!でけぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」
その陰の正体は巨大な竜。 首長竜のカマラサウルスやブラキオサウルスくらいの大きさだろうか。目の前にそんな存在が鎮座していたら驚く他ない。
「我はそなたらの世界とは別の世界の神と呼ばれる存在。名をベルレ・トーチという。」
「しゃべったーーーー!!??」
竜が喋るとかファンタジーかよ!?
「驚くのも無理はないが、まずは話を聞いてはくれまいか?」
いやいやここで冷静になれるほど肝っ玉鍛え上げられてませんよ!?いくら自衛隊上がりでも!
「・・そなたが落ち着くまで少し状況を話させて貰おう。」
「たっ・・助かります・・。」
色々と汲み取ってくれたのかこの竜の神はゆっくりと説明を開始した。
「この度はあなたの世界での頑張りを認め、私の管轄する世界へお越しいただく事となった。あなたもよく知る神、天照大御神とその横に控える私のいとこでもある竜神たっての願いだ。」
「天照大御神様が!」
地元で祀られている神、子供の頃から拝みに拝みまくっていた全国的にも有名な女神様だ。
「熱心さと頑張りに報いてやることができず申し訳ないと言っていた。せめてこちらの世界では自由に出来るよう計らって欲しいと願われている。」
そこまで女神様に見守って頂けていたにも関わらず私は命を絶ってしまったのか。今更ながら後悔の念が芽生える。
「なるべく自由に出来るよう私の力で能力を与えようと思うが‥ 必要か?」
「必要ですよ!そりゃ!」
せっかく異世界に転移出来るのなら貰うっきゃないでしょ!
「うむぅ‥我から見るにそこまでの能力を身につけていて今更必要かとも思うのだが‥。」
いやいや 全然普通の一般人ですよ!?
「数々の経験や身につけた技術が多いことは自覚していますが、それがそちらの世界で通用するかはまた別の話。でしたらまずはそちらの世界の内情をお伺いし、その後に与える能力を選定するという形では如何でしょう?」
「いかにも元政治家らしい聞き方ですね。分かりました。私の管轄する世界は魔人族が大手を振って悪さや搾取をするようになり、それにより弱者はさらなる弱者を求め、人間達も貧富の差を明確にし荒廃の一途を辿っています。一方魔人族の方も種族の中で平和になり、自らを律することなく種が続くかも危うい状況になってこちらも荒廃の一途を辿り始めています。」
所謂平和ボケである。何かやらねば生き残れない必死さは活力の一つ、貧困を受け入れ諦めてしまって荒廃した人間族、自分がやらなくても死ぬことはなく誰かがやるだろうと諦めてしまって少子高齢化などで荒廃していく魔人族、こちらでも世界と日本のような事が起こっているということだ。
「私は世界の神。故にどちらの味方につく訳も行かず、どちらも繁栄させなければならない中立の立場であるのだ。」
わかるわー 中間管理職ってつらいよねー。
「様々な少数種族と魔物もいるが、数の上ではこの両者は大多数を占める。この二つを安定の状態に持っていく為、文字通り「神の使者」として活動をして欲しい。」
神の使者‥か‥ 一介の政治家上がりが呼ばれるには飛び級が過ぎる感じがするが響きは悪くない。
「私の仕事の原点は『自分の能力が活かせる事』『笑顔の継続を図れる事』です。お話を聞く限りそれは出来そうですので、第二の人生、そちらの世界で力を奮わせて頂きます。」
自分でも不思議なぐらいすっきりとその依頼を引き受けた。異世界で自分の能力が発揮できる。これにときめかない男はいない。RPG全盛期世代は特にそうだろう。聖◯伝説とかドラ◯エとか
「引き受けてくれる事に多大な感謝を。話は戻るが与える能力はどのような内容を求めるかな?」
さて、どうするか。
異世界にわざわざ呼ぶのであれば言語の問題は対策済みと考える。だとすると魔法か道具、不老不死という身体的強化の選択肢もあるか。不老不死とかは役目が終わらなそうだし、正直迷うな。
「送られる世界には魔法などは存在するのでしょうか?魔人族ということから存在するのかと予想しますが?」
「存在はする。修練に励めば誰でも使用が可能である。」
ときめくねー!では魔法よりも道具というところかな。後々魔法で身体強化を出来ると判断しておこう。
「では自分の記憶にあるものや思い描いた物を具現化出来る能力をお願いしたい。」
「ほう、てっきり不老不死や身体強化の類かと思っていましたが、それでよろしいのですね?」
「問題ありません。それで大抵の事は出来るでしょう。」
「分かりました。それとタッちゃん、、 失礼、例の従兄弟の竜神からもあなたにギフトとして水を常に満タンにする水筒を預かっている。それも渡しておこう。」
タッちゃん?今タッちゃんって言った? 流石従兄弟、仲がよろいし事で。
「それと簡単な異世界の説明だけでは不十分でしょうから1人従者をつけます。後の事はその者に聞いて下さい。」
「承知しました。そのタッちゃんにも感謝を。」
少し困った笑顔をした竜神ベルレ・トーチは何やら呪文を唱え始め、俺は光に包まれその姿を消した。
「頼みましたよ。」




