喪之一 勤労喪女は報われない
「部長!! あんまりじゃないですか。このプロジェクトは私が実質リーダで進めてたんですよ」
「ごめん。でも高天君。これは社長の命令なんだよ」
上期末でちょっとバタバタしている30人規模の広いオフィスの片隅で、上司に対して声を荒げる私は、
高天テルコ 31歳 院卒 勤続6年 主任
足掛け4年携わってきた社内プロジェクト。
もうすぐ最終段階でまさにこれからという時に、突然異動で外されるという通告を受けて猛抗議中。
「なんなんですか! 主力として貢献してたって考課でも評価くれてたのに、なんで外すんですか!」
「いや、だからね。前も言ったけど、女性はね」
「女だからですか! 男女平等とか女性活躍推進とか言って散々いいように使い倒しておいて!」
「高天君には感謝してる。正直できるとも思ってる。でも社長がね」
「チクショウめ! どんなに頑張っても結局出世は男が先かよ! 辞めてやる! こんな会社、最悪な形で辞めてやるぅぅぅぅ!」
ズダダダダダダダダダ
「高天君! ドコ行くの! 高天君!」
バターン
…………
●女の職歴は涙の歴史
作詞・作曲:池中まりあ@別作品
歌:高天テルコ
仕事も給与も男と同じ
20代なら職場の華だ
腰掛け扱いされまいと日々日々精進
だけど三十路で職場の闇か
残す気がないなら募集をするな
総合職への女性採用
チームでダントツ仕事量
質も速さも負けてない
女だからと言われぬためと日々日々努力
だけど出世は男が先に
する気がないなら最初から言うな
女性の積極役職登用
出張も異動もなんのその
体力ハンデは地道に効くが
女だからと言わせぬためと日々日々辛抱
だけど現場は男が主役
無理というなら候補にするな
途上国への単身赴任
勤務時間中だけど会社から飛び出して、魂の名曲を口ずさみながら駅に向かって歩く。
大学院修士課程卒業で女性総合職としてもてはやされて頑張ってきた6年半。実は今日が31歳の誕生日だけど、三十代総合職女性が【職場の闇】なのはマジだった。
【闇】扱いされながらも頑張った仕事の成果をあっさり横取りされて怒りがおさまらない。
怒りに任せて手持ちのスマホで、今連絡したい所の連絡先を検索。
【退職代行サービス モーイヤ】
ピッ
トゥルルルルルル トゥルルルルルル
…………
電話一本で依頼は完了。
これで長年勤めたあの会社とも最悪な形でオサラバだ。
女性社員のモチベーションを踏みにじる会社は【ブラック企業】扱いされてしまえばいいのだ。
駅前のベンチでほくそ笑みつつ、次は自宅にいる同居人に電話。
同棲生活も長いんだから、これを機会に次のステージに行ってもいいよね。
ピッ
トゥルルルルルル トゥルルルルルル
「あ、ユウタ。私会社辞めてきたよ」
●オマケ解説●
この場合、【退職代行サービス】を使う意味はない。
【職場の闇】が退職を望んだなら、皆喜んで送り出してくれるよ。
そして、同居人はどんな人なのかな。次のステージって何かな。
無職になった立場で、そんなことが許されるとでも? (笑)
ひどい、ひどい。
ちなみに、別作品の池中まりあはこっちに居ます。
↓
「異世界の【ゴミ箱】に【聖女】として召喚された婚活敗者で人生お先真っ暗なアラフォー独身女は、国を救おうとしつつも召喚主である若くてイケメンな王子様を【万能の拳】で殴りたくてしょうがない」
https://ncode.syosetu.com/n1750in/
そして、作中歌「女の職歴は涙の歴史」は作曲AIのSUNOで実際に歌わせてみた物があります。これもかなりひどいです。
↓
https://ncode.syosetu.com/n2174io/