後日談:転生喪女は勝負に出る
「待ちに待った時が来たのだ。今日こそ私が勝負に出る日……」
弁護士事務所の応接室にて示談相手の到着を待つ私は、崖っぷち年齢の誕生日を迎えた独身女。
高天テルコ 31歳 転生喪女
自分が転生者であることを知ったのは去年の秋。
小説投稿サイトに掲載された私にそっくりな黄金像を見た時、前世と前前世の記憶がフラッシュバックした。
【魔法喪女】として大暴れした果てに、【宇宙喪女】として大気圏再突入に失敗して流れ星になった前前世。
そして、天之御中主神が創った新しい世界にお持ち帰りされ、天照大神として転生した前世。
今私は、前世の世界の数千年後で31歳の誕生日をやり直している。
これが異世界転生なのか逆行転生なのかは分からないが、それはどうでもいい。
天照大神をしていた時、【喪女】のための国を創ろうと弟と弟の末裔達をシバいて国を創らせてぶんどった。
時が来るまでひと眠りしようと八咫鏡の中で寝ていたら、溶鉱炉にぶちこまれて、気が付いたら【鋼鉄の喪女】に加工されていた。
【永遠の喪女】改め【天照大神像】として東京都千代田区千代田一丁目の秘密神殿に祭られているのは私の分身。
いや、実はあっちが本体なのかもしれない。
まぁどちらにしろ、私は分身を通じて国を牛耳る力を得ている。
だから、私は私のために作ったこの国で【喪女】として願いを叶えるのだ。
【喪女は選ばれない】は神をしていた頃の私の言葉。
【喪女】である私は選ばれない。
選ばれないから、選ぶのだ。
もうすぐここに来るのは、私が選んだ男。
私が記憶を取り戻すきっかけを作ってくれた男。
初めて会ったのは、大学のサークル活動。
その頃はデブヲタ青年だったけど、今ではハンサム中年。
しかも、山田工業株式会社IT統括部の統括部長で年収二千万超のハイスぺ。
そしてなにより、私の分身を毎日丹念に磨いてくれた男。
きっとこの私をちやほやしてくれる。
その男が、【結納金】を持ってくるのだ。
コンコン
応接室のドアがノックされる音。
来た。
「どうぞー」
ガチャ
「お久しぶりです。太田タカシです。【慰謝料】の支払いに伺いました」
全てはここからだ。
私が前前世でできなかった【身近な出会いから親睦を深める】を実践する。
今度こそしくじらない。
今日この日のために、会社も辞めた。ヒモ男も追い出した。
そして、退職金をつぎ込んで【龍の勝負下着】も手に入れたのだ。
●オマケ解説●
流れ星として夜天を照らしたテルコさん。
神話の時代に【喪女神】として転生していた。
神として転生したのをいいことに、自分の願いを叶えるために国を創った執念。
そして、数千年の時を越え31歳の誕生日をやり直すけれど、【喪女】なだけあって親睦深めようといきなりイタい事を企んでる。
でも、数多の修羅場を越えている太田さんなら大丈夫。
おイタもしてもその程度なら、可愛いお姫様だよ。
きっと大切にしてくれる。
お幸せに。
※ポイントクレクレ記述
前作のキャラクターを出すという初見殺しをよりによってラストでぶちかます構成がひどいと思った常識的な読者が居たら、【ひどい】の証として★1評価をブチこんでもらえると、作者は究極の【ひどい】達成のためにやったけど正直すまんかったと反省しつつ、太田タカシはハイスぺイケメンだからテルコさんは幸せになったんですとむりやり受難ヒロインの悲願成就をアピールします。
そして、全ての【喪女】に幸あれ!




