エピローグ(挿絵アリ)
「うわぁぁん! これが31歳最後の日なんて、やっぱりいやだぁぁぁ!」
衛星軌道上にて不衛生な方法で減速。高熱に耐えるために【喪力】で変化して、金色に輝く流星として大気圏再突入しながら泣き叫ぶ私は、
高天テルコ 31歳 鋼鉄の喪女@大気圏再突入中
「【政治家】になんてなりたくないよぉぉぉぉ!」
偉い人やお金持ちにになりたかったわけじゃない。
私は子供の頃からわりと何でもできた。できるのが当たり前だった。
褒めて欲しかった。だからがんばってきた。
「母の言った通り、進学なんてしないで高卒で就職すればよかったぁぁ!」
院卒の成績優秀者として総合職で入社した時。
同期の中では高卒未成年で入社した事務員の子が一番ちやほやされてた。
私もちやほやされたかった。そのために仕事がんばった。
そう。私が欲しかったのは。
「イケメンもハイスぺもいらない! 奢ってとか養ってとか言わない! だから、私をちやほやしてぇぇ!」
一度だけ! 一度だけでいいから!
満たされた思い出さえ貰えれば、妊娠出産で命賭けてもいい!
育児も共働きも頑張れる!
「お酒が美味しいことは分かったから! もう、酔いつぶれるから! うわぁぁぁぁん! だれか私をお持ち帰りしてぇぇー!」
『貴女の【女】としての魂の叫び、見事である』
「えっ?」
プラズマ火炎に包まれて減速飛行中だけど、何処からともなく声が聞こえる。
『我は、天之御中主神。願いを叶え【喪女】の呪いから解放してやろう』
えっ。お願い叶えてくれるの? お持ち帰りしてくれるの?
でも、今【喪女】の呪い解かれたら、もしかして……
ジュッ
【宇宙喪女】の最期の輝きは、秋の夜天を照らして消えた。
………………
…………
……
ワシントンで発生した爆弾テロ事件は、FBIの捜査により【愛政党】の下部組織が犯行に関与したと断定。日本政府は否定したが、アメリカの世論は日本を非難。
日本政府は世界各国に濡れ衣であると訴えたが、愛政党の【日本人ファースト】政策で海外向けの支出や移民受け入れを軒並みカットしていた事より、世界の対応は冷たかった。
自国に利益をもたらさない弱小国を、アメリカの圧力に抵抗してまで守る価値は無かったのである。
国連安保理決議で日本は【テロ国家】に指定され、テロ撲滅の口実で、アメリカ、中国、ロシアの3カ国連合軍が日本に侵攻。開戦4日で東京は陥落。
テロ再発防止の名目で日本政府は解体。領土は金融資産と共に3分割され、第二次世界大戦に敗戦後も独立国家として残された【日本】という国は、世界地図から消えた。
そして、ミリタリーバランスの要となっていた日本が消滅したことで、世界は核抑止力を失い破滅へと転がり始めるのである。
めでたし めでたし
●オマケ解説●
何でもできる器用な子、テルコさん。
母は気付いていた。この子を大学進学させると行き遅れて人生詰むと。
母に従い高卒で就職したらどうなっていたか。
フロア最年少の若くて器用な事務員さん。ちやほやされるだろう。
もう、3年ぐらいで寿退社する未来しか見えない。
貧乳モブ故に変な男に捕まることなく、女慣れしてない若い年上のハイポテ男に見初められて結婚。持ち前の器用さで専業主婦として夫を鍛えて子供を育てて、31歳になる頃には3児の母で長子は既に小学生。
しかし、テルコさんは選択を間違えてしまった。
院卒入社なら同期の中でも最年長。
総合職で出世頭な年上を女として見る男は居ない。
ここで容姿端麗であったなら、大先輩とか会社上層部の目に留まりハイクラスな出会いに導かれたのかもしれないが、貧乳モブ故にそういう扱いはナシ。
同期の男達は次々結婚し、家族を養うために働く男になっていく。器用で職能高くても、独身女がそんな男に仕事で勝てるわけがない。
名脇役として職場を支えた果てに、崖っぷち年齢到達と同時に退職代行サービスで逃亡。
テロに加担して大暴れした挙句、満たされなかった【承認欲求】と共に流れ星として消えた。
ひどい。ひどい。
外交政策の失敗で日本滅んでいますが、その件について懐かしの人達から一言あるようです。
ビン●ディン「俺、なんもしてねぇよ!」
フ●イン「勝手に国滅ぼしといて、全部濡れ衣だったじゃねぇか!」
あの国も、石油なんて産出しなけりゃ蹂躙されることもなかったろうにねぇ。




