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10冊目:万物の記録(アカシックレコード)009頁
夏休みが明けてしばらく経った。
もうすぐ俺は『寝てしまう期間』に入る。
涼しくなってきたこの時期に『寝てしまう』と、何故か俺は年末近くまで起きることが出来ない。
きっとこのまま13歳になってしまうのだろう。
怯えながら毎日を過ごしていると、体温や脈拍が『寝てしまう期間』が近いことを知らせてきた。
昔みたいに駄々をこねたりはしないが、やっぱり怖いものは怖い。
だから、何となく馬鹿なことを考えてみる。
もし仮に『寝てしまう期間』の無い俺が居るならどんな俺なのだろう。
どんな人達と、どんな暮らしをしているのだろう。
馬鹿なことだとわかってる。それでも時々考えてしまう。
だから、何となく知りたい。
小瓶の栓を抜いた。
病気を治すことは出来なかったが「《クライン・レビン症候群を発病していない峰岸優也の夢を見せて》」これくらいなら、叶うかな?
もしもの世界、もしもの幻想。
『寝てしまう期間』が訪れない、峰岸優也の夢。
小瓶が少し光った。叶ったみたいだ。
耐え難い眠気に襲われて、慌てて酸素マスクを顔にあてた。