ラムネ瓶と夏空エモーション
夏休み前の7月
今日は終業式で高校は午前中のみ
学校の帰り道
家の近所の駄菓子屋の長椅子に座る夏音
右手によく冷えたラムネの瓶は鈍い青色をしている
瓶の中のビー玉がカランコロンと透き通った音を立てる
ラムネを一口飲む
火照った体の中をシュワシュワっとした
冷たいラムネが喉から落ちていく
セミの鳴き声、キラキラした太陽の陽射し、高校の夏服、
駄菓子屋の軒先で涼しげな音色で揺れる風鈴
夏の風情
ふーっと息をついた
そこへ同級生のたつきが向こうからやってきた
サッカー部エースの爽やかイケメン
部活動で真っ黒に日焼けしている
彼は夏音を見かけると笑顔がはじけた
「お疲れ夏音!おっ、ラムネか!」
そして彼は駄菓子屋の冷蔵庫からよく冷えたラムネを1本取り出す
駄菓子屋のおばあちゃんに代金を払う
「毎度どうも、ふふふ」
とおばあちゃんは何故か含み笑いをする
「隣、いいか?」
返事もしていないのに、いきなりに隣に座るたつき
夏音の心が跳ね上がった
プシューー!!
っと威勢のいい音がして、彼の両手に持ったラムネ瓶の口から泡が
あふれ出す
ゴクゴクと喉を鳴らす
「くー!美味い、最高だな!」
教室ではいつも気軽に話しているけれど、周りには友達もいたし
でも今は気になる異性が真横に座ってる
夏音の心が全力疾走している
店の前の長椅子に隣どうしで座る男女2人の高校生の姿を眺めながら
ニコニコしているおばあちゃん
夏音は平静を装っているが右手に持つラムネの味など
何もわからない
「おっと、こんなところ誰かに見られたら誤解されるな。
じゃあまたな!」
慌ただしいたつきの後姿を眺める夏音。
一言もしゃべれなかった
そんな高校生の夏の一コマ
読んでくださってありがとうございました。初々しい青春や夏の風景を夏音の視点で描きました。ショートショートですが是非、感想や応援いただければ嬉しいです。