第18話 私と俺
まぁ私自身ゴブリンの森の件も結構気になってたからこの依頼は普通に嬉しいな。何せこの依頼を受けられるのはランクの低い者のみで、この依頼は言わば死ぬと分かっている依頼なら変えの効くものにさせれば良くて、それで情報を持ち帰れたら上々と言った感じの思惑と思っている。
と言うのもこのいらを受ける時に聞いたけど、どうやらあの森の奥深くに入ってから帰ってきた者は居ないっていう今じゃ帰らずの森なんて言われる程の危険地帯と化しているらしくこの依頼を受けるのはよっぽどの自信家かバカかの二択と言われてしまった。
「と言っても多分私は...いや俺はバカの方だと思っているがね」
普段の男の姿で、そう言ったのには訳がある。それは森の奥地に入ったことで人目を気にする必要が無くなり何時もの姿に戻った直ぐ後に凄まじい敵意を感じた。
《新しく戦闘スキル<気配感知Lv1>を習得しました》
そのすぐ後に習得したスキルの気配感知の効果で直ぐに分かった。この森からゴブリンが消える程の大魔獣が現れたのでは無くただ...ゴブリンに支配者が出来たんだと確信した。
「まさかこんな距離でも痛い位に感じる気配とは...かなり不味いな」
すぐさま俺は今の自分が持てる全てのスキルを駆使して逃げたが、ゴブリンも此方に気が付いたのかそれとも遊ばせるつもりなのか追って来た。
《新しく戦闘スキル<脚力Lv1>を習得しました》
《新しく戦闘スキル<疾走Lv1>を習得しました》
《新しく戦闘スキル<脱兎Lv1>を習得しました》
《新しく耐性スキル<空気耐性Lv1>を習得しました》
それから暫くスキルレベルが上がる音を背景に逃げ回って、何とか森から逃げるとさっきまで追ってきていたゴブリンは次々に森の奥に消えていった。
「これは俺一人で解決するような問題じゃないな魔王プレイとか抜かしてる暇は無い今ここでするべきなのはあのゴブリンの討伐...魔王プレイは俺が後にやるとして、私は一刻も早く強くなってゴブリンを討伐しなくちゃ行けないわ」
直ぐにシリウスに偽装して、そのまま走って走って走りぬいて門まで来ることに成功した。
「おい大丈夫か?なんかあったのか?直ぐに教会の者を読んで...」
「いえ...今するべきなのは、ギルドに話を通す事です。私はゴブリンの森の調査に出かけました...があそこで感知した気配は尋常じゃありませんでした。普通のゴブリンの数倍いや十倍の敵意を恐怖を感じました。」
この姿に偽装している間はどうしてか、感情が表に出やすくなってしまうと言うデメリットと思っていた特性がこんな所で役に立つとはなと冷静に思いながら取り合えずギルドの者が来て、私がギルド長の部屋に通されると私が見た事感じた事をはっきりと言えと威厳を感じる見た目のままに言われて私は若干恐怖してしまった。
「言え何があったか、何を見たか、何を感じたのか直ぐに言え」
「はい、私は直接見たわけではありませんから正確ではありませんけど、通常のゴブリンよりも圧倒的に強いと思われる恐怖を感じて、逃げているとゴブリンが一糸乱れぬ動きで私に迫って来たんです」
私は泣いてしまった。泣くつもりは無かった。これはゲームだと思っていた。でもそれは正しくなくここは普通に一つの世界なんだと感じてしまった。そんな世界で、怖いものなど無く自分の感情と欲望の赴くままにこの世界をプレイしてきたヒドリア・アインズアースでは無くただのEランク冒険者のちょっと戦闘能力が在るだけのか弱い少女の体ではその恐怖を拭える程に心は強くなかった。
それから言葉にならずに私は職員用の仮眠室に寝かされた。そして私を看病していたのは、初めてこの世界で名前を答えあった人であるアリシアがまるで泣きじゃくる子供をあやすかの様に膝枕をしながら私の頭を撫でていた。
「あっあの」
「あぁお気づきになられましたか?具合はどうですか?協会の者が治療を行ったから何にもないと思いますけど...。」
「えぇ...ハイ大丈夫です。落ち着きましたから」
「そうですかそれなら良かったですそれじゃあ私は下に外に出てるので暫くお休み下さい」
「待って...暫く...傍にいて欲しい...かな?」
私がそう言うとアリシアは笑みを浮かべながら私の小さな欲望を聞いてくれた。
「大丈夫ですよシリウスさんが落ち着くまでここにいますから」
それから約30分程その状態のまま休憩していたが、やっと私も冷静になる事が出来た。と言うか私と俺の自我の乖離がかなり激しい...。
それからアリシアさんに一人にして欲しいと言ってから出て行ってもらい気配が感じ取れなくなった辺りで安堵して一人で考え事に耽る事にした。
「シリウスの自我とヒドリアの自我...どうするか...」
そう思ったのも仕方が無い何せシリウスの自我として考えるならこの世界は一つの世界で、一つの生命として命の危険がああるなら躊躇するし冷静になる事が出来ずに取り乱したりもするが、ヒドリアの自我として考えるならこの世界は所詮俺の遊び場で例え誰が死んでもどうでも良いと言う冷徹な感情が私の中を支配している。
「今の私は俺が7割私が3割と言った所かな?」
もしもこの私が一つの生命として生まれてしまったらどうなるんだろうか?偽装に過ぎない体が一つの今を生きる生命となったら私の中にある俺はどうなってしまうのか?
「取りあえずは保留でもこの問題は一刻も早く解決しないとダメだな」
そう思いながら私はアリシアさんにもう大丈夫と、これから俺が感知した気配についてどうするのか聞かないとなと思いながら仮眠室を出た。




