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異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました  作者: ももがぶ
第三章 旅の始まり
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第二十五話 終わったけど始まりそう

 王は、弟であるジャミール公爵の告白に対し「ハァ~」と短く嘆息するとジャミールを一瞥してから「なぜ、このようなことを……」と口にする。そして、それを聞いたジャミールは「……のせいだ」と呟く。


 ジャミールが呟いた声は小さく王の耳に十分に届くことはなかったために、王はジャミールに対し聞き返す。


「ジャミールよ、答えよ。なぜこのようなことをしたのだ」

「兄上のせいだ!」

「……分からぬ。其方は王弟という立場でもある。権力で言えば、余の次と言ってもいいだろう。それの何が不満なのだ」

「……何が不満だと!」

「そうだ。余の次という地位だが、どこに不満があるというのだ」

「全部だ!」

「ん?」


 王の問い掛けにジャミールは全てが不満だと答える。そして、その返事を聞いた王は驚いてしまう。


「全部が不満だと?」

「ああ、そうだ。何故、兄上がそこに座っているのだ! そこに座るのは私こそ相応しいというのに……」

「ジャミールよ。何故、そう思うのだ」

「分からないのか。それとも考えていないだけなのか」

「む? どういうことだ? 何を言っている?」

「ふん! 本当に分からないようだな」

「だから「黙れ!」……ジャミール……」


 王がジャミールに一喝され言葉を呑み込むとジャミールは「ふぅ~」と軽く深呼吸をすると王に向かって静かに話し出す。


「私が何を不満に思っているのか、知らないと言ったな。ならば、それを全部話してやろうじゃないか。私はこの後は謀反の罪で罰せられるだろうから、自由に話せるのは今のこの機会だけだろうからな。だから、これから話すのは私の遺言も含まれていると思って聞いて欲しい。私は……」


 ジャミールはこれから自分が罰せられることを覚悟した上で不満に思っていることをゆっくりと話し出す。


 俺はなんでこんなおじさんの不満や愚痴を聞かされているのだろうかと思わず不機嫌になるが、ジャミールにとってはこれが自由に話せる最後の機会だと思うと邪魔するのも悪い気がする。


 だけど、さっきから話しているのは単なる弟として生まれたばかりに兄である王に対する不満ばかりだ。そうやって王を非難したいのは分かるが、その内容がどれも乏しい。非常に残念なオジサンにしか見えなくなってきた。


 そんなこんなでやっと、姫さんを襲撃した理由へと話が進み、俺も眠くなってきたのを堪えて耳を傾ける。


「私がソフィアを襲撃した理由は、単に王妃達の仲違いから王室の不穏説を流布したかったからだ」

「妃達がソフィアを襲撃させ、それが成功すればそれを切っ掛けにして世論を味方にし、余を玉座から下ろそうとしたと?」

「ああ、そうだ。そもそも、兄上がブリジットを娶らなければ……私もこんなことは……」

「ん? 何故、ここでブリジットが出て来る?」

「ふ……分からないか。そうだよな。私も誰にも言ってなかったからな」

「……」


 やっと姫さんの襲撃理由は分かったが、そんなことの為に俺の異世界生活は最初から躓いたのかとガックリしていたが、ジャミールはまだ何か思うことがあるのか、姫さんの母親の名前を出してきた。


 姫さんの母親が出て来たことに王も「?」が頭の上にいくつも浮かんでいるのが分かる。王もジャミールに対し、直接「どういうことなのか」と聞けば、ジャミールは軽く笑うとまた、語り出す。


「私はブリジットをいつか、第二夫人に迎えたいと思っていた。なのに……兄上が、ブリジットを横から攫っていったのだ!」

「ジャミール、攫ったというが「攫ったのだ! 私の目の前から!」……ハァ」

「私はワルダネ領に出向くことが多かった。そこで隣のクレイヴ領から出向いていたブリジットを目にする機会が多く、私はその美しさに心を惹かれていた。なのに……兄上は薦められるままにブリジットを迎え入れたのだ!」

「それは……」

「大体、娘が二人もいるのだから、そこで私の息子を王太子に据えて大人しくしていればよかったものを……よりによって私が目を付けていたブリジットを攫って三人も産ませやがって!」

「「「……」」」


 ジャミールの言葉に周囲の人も呆れてしまったのか、誰も言葉を継げなくなる。


「ふふふ、これで私の言いたいことは全部だ。兄上よ、私の胸の内を分かってくれましたか」

「分からん」

「は?」


 俺も王に同意見だ。正に「は?」だ。要はジャミールが弟だったから、王になれない。なら息子を王太子に据えようと思っていたところで密かに恋していた姫さんの母親を横取りされ、剰え王子二人を産んだことで、息子が王太子になる目も無くなり自分の立ち位置をどうにかしたいと考えていたところで夢魔(インキュバス)の誘いに乗ってしまったのだろう。


 うん、どこにも同情の余地はないし、単なるオジサンの僻み話だったな。


 だが、そう思っていたのは俺だけじゃなく、王を始め、王太子達や王妃達も皆、ポカ~ンとしている。


 そしてそんな皆の視線に耐えられなくなったのかジャミールが激昂する。


「何故だ! 何故、誰も私の気持ちを理解してくれないのだ! 私はこんなにも不条理な扱いを受けているというのに!」

「ジャミールよ」

「兄上、分かってもらえましたか!」

「ああ」

「では「逆だ」……へ?」

「ジャミール。お前が言ったことは全て単なる逆恨みでしかない。どれ一つとっても余を追い落とす理由にはほど遠い。そして、そんな口車に乗せられた妃達を哀れに思う」

「ぐぬぬ……」

「「……」」


 王の言葉にジャミールは言葉を詰まらせる。そして、ジャミールに上手く乗せられたとは言え、姫さんを襲撃したのは覆らない事実で、人も死んでいる為、王妃達もこのまま無罪放免とはいかないだろう。だが、やっと俺もここで姫さんの呪縛から逃れることが出来ると思うと思わず顔が綻んでしまう。


 そして、それに気付いたジャミールが俺を睨み付ける。


「元はと言えば、貴様が全て悪い!」

「へ?」

「貴様が出てこなければ、今頃は私があの椅子に座っているハズだったんだ!」

「え~それってどんな言い掛かり?」

「うるさい! お前が全部悪いんだ! 誰か、コイツを捕らえよ!」

「「「……」」」


 ジャミールの言葉に今まで静観していた衛士が王を見れば王は黙って頷く。衛士はそれを見てから静かに動き出すとジャミールの横に立つ。


「来たか。よし、ソイツを捕らえろ!」

「「「……」」」


 ジャミールが衛士に俺を捕まえろと命令するが、衛士はそのままジャミールの腕を掴む。


「む? 聞こえなかったか? 捕まえるのは私じゃない! その小僧だ!」

「「「……」」」


 だが、衛士はジャミールの言葉を無視してジャミールの両脇を二人、そして先導する一人の三人でジャミールを囲むとそのまま謁見の間から連れ出す。


「さて……」


 王が俺の顔を見ながら、そんなことを言う。


「まさか、本当に俺を捕まえるとか?」

『否定します』


 あ、そうなんだ。



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