第十三話 俺って言ったよね
と、そんな訳で海龍神にシュリをパクッと丸呑みしてもらったのだが、海龍神は俺から視線を外してくれない。クリフさんもどうするつもりだと俺をジッと睨んでいる。
「あの、提案だけど、コイツはこの湖の観光スポットになるんだからこのままでも問題ないんじゃないかな~と思うんだけど」
『イヤだ!』
「こう、申していますが……へ?」
「ほら、話せるんだからコミュニケーションは問題無さそうだし、ね」
『だから、イヤだと言っている!』
「……コータ様、無理ですから!」
「え~」
俺は少しだけ考えお互いのベストな道を探すが……無理だよ。どうすればいいんだよと考えてみた結果、一つのテンプレが思い浮かんだので目の前の海龍神に話してみる。
「連れて行くには条件がある」
『ふむ、なんだソレは?』
「なに、大したことじゃない。俺達と同じくらいの大きさになるか、人化するのが条件だ」
『……よし、やってみよう』
「あ、出来るんだ」
『肯定します』
『……』
海龍神が何かを唱えると同時にその身体が光りだし、気が付けば湖面の上に長い水色の髪に白く細身の身体でこちらを見て微笑む美女がいた。
「え? 嘘……だって『俺』って言ってたじゃん! 詐欺だよ」
「ん? ああ、言ってなかったか? 俺は一応メスだぞ。だから、コータに合わせるとこうなるんだが、間違っていたか?」
「いや、間違ってはないけど……隠しなよ」
「ん? 何を隠すんだ?」
「何をって……裸じゃダメなの!」
「おぉ! そうなのか。だが、何も持っていないからな」
「コータ様、とりあえずコレを」
「ありがとう、クリフさん」
「いえ、私もお礼を言いたいくらいですので……」
「え……とりあえず、これを纏って」
「そうか。まあいいが。これでコータの言う条件には合っているのだろう?」
「うん、まあね」
裸のまま、湖面をスベるように俺達の前にやって来た海龍神にクリフさんから預かった白いシーツの様な物を渡して身に纏ってもらうが、余計にエッチに感じてしまうのは俺だけだろうか。
「触ってみるか?」
「な、なにをだよ!」
「これだよ、これ! さっきからチラチラとこれを見ているだろう。ん?」
「……」
海龍神は俺の前に立つと自分の胸を両手で持ち上げ、俺にそんなことを聞いてくる。
いや、確かに女性からは胸への視線は気付いてしまうものとは聞いてはいたが、こうもあからさまに聞かれてしまうと「お願いします」とも言えず、黙って俯くしかない。
俺の横に立つ海龍神は靴も履いていないのに俺より背が高く百七十センチメートルを超えているようだ。それにしてもこんなに目立つ美人なら、そのまま小さくなって貰った方がよかった気がする。
何はともあれ、ここでの用事は全て終わったので、改めてドレイクさんに礼を言って館から出ようとしたところでクリフさんに姫さんには会わないのかと聞かれる。
「クリフさん、昨日はそんなつもりはなかったとは言え、結果的にはソフィアを泣かせてしまったことを俺は反省しているんだ。もう少し傷付けない言い方もあったんじゃないかって。だから、俺はこのまま失礼するよ。ソフィアにはもし俺と連絡を取りたいことがあれば冒険者ギルドに伝言してもらえばいいからって伝えて。じゃあ、クリフさんもお元気で」
「はい、ありがとうございます。お嬢様には間違いなくお伝えします。あと、騙すようなマネをしてここまで来させてしまい、申し訳ありませんでした」
クリフさんは俺達に深々とお辞儀をするが、もう俺の中にはクリフさんに帯する蟠りは消えているのでクリフさんの肩に手をそっと置くと「頑張ってください」とだけ伝え、館から出て行く。
そう言えば隊長の処遇が気になるところだけど、アレだけのことを仕出かしたのだから犯罪奴隷になってもおかしく無さそうだが、黒幕が大人しくしているとも思えない。
あと、もう一つ気になっているのが本当に王妃達の実家の力だけで、ここまでのことが出来たのだろうかと言うことだ。
人を揃えるのはなんとか出来たとしても魔物を連れての行動となるとどこかで目を付けられそうなモノだが、そういうこともなく姫さんを襲撃したり、リザードマンの住処にヒュドラを配置したりということをやってのけている。
集団で領や町を人に咎められることなく移動が出来て、それらのモノを改められることもない秘匿性を保証される団体が関わっているんじゃないかということだ。
前世でいうならば外交官特権と呼べるものだろう。そうなると浮かんでくるのが宗教団体だ。『神様の物』、『見たらバチが当たる』とかでも言えば、無理して見ようとまではしないだろうし、時の権力者の中に食い込んでいるならば、その辺りは根回し次第でどうにでもなるだろう。更に女神イースの存在が裏で何かをしていても不思議じゃないと俺に思わせる。
『肯定します』




