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異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました  作者: ももがぶ
第一章 旅立ち
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第二十三話 チートって凄い!

 あれからガイルさんの店にある武器を一通り振ってみたり弓を引いてみたりとしたお陰で俺は各種武器のスキルの初級スキルを得ることが出来た。


「ふむ、どう言う訳か知らんが、一通りの武器は扱えるみたいだな。それで気に入ったのはあるのか?」

「そうですね……ん? ガイルさん、あれは?」

「あ~あれか。あれは止めとけ」

「え? でも壁に掛けられているってことはあれも売り物じゃないんですか」

「いや~そうなんだがな、あれはな……」


 俺が見付けたのは壁に掛かっていた一振りの刀だ。黒塗りの鞘に納められたその形は少し反りがある長刀で鍔はないがどう見ても日本刀です。


 ガイルさんが言うには路銀に困った旅人が置いて行った物だが、誰も上手く扱えることが出来ないと言う。


 それもしょうがない話だと思う。こちらの世界というか、真っ直ぐな刀身の剣は『斬る』ではなく『切る』だ。正確にはその剣の重みを利用し叩き切ると言った方が正しいのだろう。それに対し日本刀の様な反りがある片刃の剣は正しくは『斬る』と言った表現が正しいと思う。


 俺がガイルさんに断り、鞘に納められた刀を手に取る。そしてゆっくりと鞘からそれを引き抜くと刃文がキラリと光る。


「綺麗だ……」

「そうなんだよな。その綺麗な紋様を見て芸術品としての価値があるかなと思ったんだがな。それでも売れなかったんだよ、ソイツは」

「へ~ちょっと使って見ますね」

「それはいいがな」


 俺は刀を手に持つとガイルさんが用意してくれた金属製の鎧の前に立つ。


「そいつは失敗作だ。まあ、その剣じゃ切ることは出来ないだろうがな。手を痛めないようにしろよ」

「分かりました。では……」


 俺は刀を持つと鎧に対し正眼に構えると「はっ!」と左から袈裟斬りを放つ。


「やっぱり無理だったか……おい、手は……」

『ゴトン』

「は?」


 ガイルさんが俺が振り切った様子を見ていたが鎧がそのままの形で残っていたことから無理だったと判断したのだろう。だが、ガイルさんが俺に声を掛けると同時くらいに鎧がズルッと斜めにずれ地面に落下する。


「切れた……」

「斬れました! これは凄い刀です! ガイルさん、これをもらいます」

「お、おう」


 俺は目の前で斜めに切断された鎧を見てこの刀を選んだことが間違ってなかったと確信する。


「おいくらですか?」

「銀貨三枚だ。出せるか?」

「三枚って安くないですか?」

「ああ、それが買い取った時の値段なんだ。だから、それでいい」

「分かりました。じゃあ、これで」


 俺はバッグから銀貨三枚を取り出しガイルさんに渡すと店を出る。


「また、来ますね」

「おう、ハンスにもよろしくな」


 ガイルさんにお礼を言ってから店を出ると、その足で冒険者ギルドへと向かう。


 冒険者ギルドに入ると相変わらずの臭いが立ち込めているが、気にせずに中へと入ると昨日俺に絡んできたオジサン達が俺と目が合うと直ぐに目を逸らす。


「照れ屋さんだな」

『否定します』


 まずは依頼がされているかを確認するために受付に向かうとノエルさんが俺を見て微笑む。

 俺はノエルさんの前に立ち「こんにちは」と声を掛ければノエルさんも挨拶を返してくれる。


「はい、こんにちは。来てるわよ。はい、これ」

「確認しても?」

「ええ、どうぞ」


 ノエルさんから差し出された依頼書を見るとそこには「リザードマンとの交渉」と書かれていて成功条件には「話をしてくること」とあり依頼失敗の(ペナルティ)は「なし」と記載されていた。


「これっていいんですか?」

「ん~まあね。でも依頼者からの要求だからね」

「でも、この依頼の成功って誰が確かめるんですか?」

「そこはハッキリ言ってグレーね」

「グレー……ですか」

「そう。だから、あなたが成功と言えば成功だし、失敗と言えば失敗よ」

「そんな性善説で成り立つんですか」

「うふふ、じゃあ嘘をつくの?」

「いえ、そんな気はないです」

「うん、それでどうする? この依頼は受けるの」

「ええ、受けます」

「分かりました」


 ノエルさんは依頼書に判のような物を押印すると俺に「これで契約完了です」と言う。


 俺は踵を返しカウンターから離れようとしたところでノエルさんから「待って」と声を掛けられる。


「はい?」とノエルさんを振り返ると、またギュッと抱きしめられる。


「無事に帰ってきてね。依頼なんかより自分の命を大切にするのよ。いい? 分かった」

「は、はい。分かりました」

「うん、分かればよろしい」


 そう言ってノエルさんは俺を解放すると頭をポンポンと撫でる。それを見た回りのオジサン達から「あ~」と声が漏れるが、この姿ならではの特典だからな。


「じゃあ、行って来ます」

「はい、頑張ってね。タロ様も頑張って下さいね」

『ワフ!』


 冒険者ギルドから街門を抜けると川を目指す。クリフさんに見せてもらった地図ではワルダネ領は山脈に囲まれている盆地でここを通れないとなれば、山脈をぐるっと迂回する以外にクレイヴ領に行く道はない。だが、グレイヴ領の近くには湖があり、その湖からの川がここキンバリー領の近くまで続いている。


 だから俺は川を利用すればいいのではとクリフさんに提案したら、川にはリザードマンが生息していて人が近付くのを排除しているとのことだった。


 ならばそのリザードマンと話すことが出来れば、問題が解決するだろうとクリフさんが俺に指名依頼をしてきた。だけど、依頼達成の条件も失敗の罰則もない。所謂ご祝儀案件だと思うけど、クリフさんは俺が成功すると信じているんだろうと思う。だってタロがいるんだから。

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