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異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました  作者: ももがぶ
第一章 旅立ち
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第十二話 特訓という名の歓迎会

 俺に文句があると集まって来たオジサン達は、どうやら俺が冒険者ギルドに入った瞬間に思わず「クサい」と呟いたことが気に入らないからと、今まで待っていたらしい。


「え? ヒマなの?」

「お前、今の状況が分かって言ってるのか?」


 まあ、さっきからナイフの冷たい刃が首筋に当たっているのはイヤってほど感じている。でも、だからって俺がノエルさんから説明を受けている間、ここでジッと待っていたと言うのはどう考えてもヒマでしょ。


「ハァ~それでどうしたいの?」

「ふん! そんな強がりもいつまで続くのか見物だな」

「だから、どうでもいいから、どうすれば納得するの?」

「そうだな、じゃあ訓練といくか」

「訓練ね~」

「ああ、そうだ。お前は新人冒険者だろ? なら、先輩である俺達が優しく指導してあげようじゃないか。そして、お前はそのお礼として俺達にお前が持つ物全部を差し出すという流れ差。あ、もちろんそこの従魔もお前の持ち物だからな。俺達が十分に可愛がってやるからな。フハハハ!」

「「「ギャハハハ!」」」


 俺を後ろから羽交い締めにしてナイフを首に当てていたオジサンは俺が逃げないと確信したのか、俺を解放する。


「よし、俺に着いてくるんだ」

「いいよ」

「へへへ、これからされることも知らずに」

「ああ、そうだな。その強がりもどこまで続くんだろうな」

「あの従魔は俺にくれよな」


 俺がオジサンの後ろを着いて歩いていると、その取り巻きらしき他の冒険者達も好き勝手なことを言いながら着いてくる。


 しかし、これだけ騒がしいのにここのギルド職人は何もしないのかと一瞥すると、皆はこっちを見ようともしない。


『いたいけな少年がオジサン達に拉致られていますよ!』と叫んでみてもよかったんだが、下手に騒がない方がいいかなと思いつつ、奧を見るとこちらに向かって飛びだそうとしているノエルさんの腕をギルマスが掴んで押さえているのが見えた。


 どう見ても状況的にノエルさんが俺を助けてくれようとしているのにギルマスが『余計なことをするな』とでも言っているようにしか見えない。


 どうしてギルマスが止めるのか状況がよく理解出来ないのけど、せめてノエルさんとギルマスの会話が聞こえたらなと思うと何故だかギルマスとノエルさんの会話が俺の耳までクリアに届けられる。


「どうしてですか! 止めさせて下さい!」

「だから、アイツらぐらいなら問題ないって言っているだろ」

「アイツらって……あの人達はCランクに届きそうな人達ばかりなんですよ!」

「ああ、そうだ。()()()()()奴等だよ」


 ギルマスの物言いにノエルさんは少しだけ落ち着き、自分を抑えているギルマスを振り返ると確認する。


「ですから……あれ? なんでダリウスはそんなに落ち着いていられるんですか?」

「やっと、大人しくなったな。あのな、あの小僧は俺の鑑定を弾いたんだぞ」

「それは分かっています。だから、なんでそれが安心出来る材料になるんですか」

「ノエル、俺の職業は知っているよな」

「何ってギルドマスタ―でしょ。大丈夫ですか?」

「あ~そうじゃない。俺の冒険者時代の職業だよ」

「そっちですか。確か……魔道士でしたよね」


 ギルマスの格好から重騎士(タンク)を想像していたが、見掛けとは全くかけ離れた魔道士だと言われ驚いてしまう。


「ああ、そうだ。元Aランク魔道士の俺の鑑定を弾いたんだぞ。それに小僧の特技には何が書かれていたか、思い出せ」

「えっと、確か……『魔法』」

「そうだ、魔法だよ。だから、あんな(なり)でも大丈夫だろうよ。と、言う訳で俺も見物に行くから、後はよろしくな」

「あ、ちょっと! 私も行きます!」


 ギルマス達の会話を立ち止まって聞いていたが、どうやらギルマス達も見物に来るらしい。そして俺はと言えば後ろのオジサンからさっさと行けよと頭を小突かれたので慌てて先を歩くオジサンの後を追い掛ける。


「ここだ」

「へ~地下にこんな広い場所があるんだ」

「ああ、俺もよく知らないが、空間拡張とやらで広げているらしいぞ」

「へ~そうなんだ」

「そんなことよりもだ……来い!」


 オジサンに連れられ着いた先は冒険者ギルドの地下に作られた訓練場だった。俺が訓練場を作った空間拡張がどんなものなんだろうなと考えていたら、オジサンは俺に着いてくるように言い訓練場のほぼ中央の位置に立つ。


「お前の獲物は?」

「え? 特にないけど?」

「それは強気か? それとも本当に何もないのか?」

「うん、何もないよ。だって、俺は冒険者に成り立てだよ。まだ、自分に何が合うかなんて分からないよ」

「それもそうか。おい!」

「へい!」


 オジサンが観客席にいる手下っぽい誰かに顎でしゃくって声を掛けると、その手下が木剣を俺の足下に投げてきた。


 俺はそれを拾うと軽く振ってみる。


「問題はなさそうだな。俺はいつでもいいぞ。好きに掛かってこい! 但し、従魔の手助けはナシだぞ」

「え? いいの?」

「ああ、いつでも掛かってこい!」

「じゃあ、行くね。『空気指弾(エア・バレット)』」

「あぐっ……」

「あれ?」


 オジサンがいつでもいいと言うから、空気指弾を放ったら訓練場の壁まで吹っ飛んでいった。死んでないよね?。

『肯定します』


「「「……モーブさん!」」」

「あれ? ダリウス、終わっちゃったみたいですよ」

「だから、言っただろ。心配することはないと」


 飛んで行ったオジサンの側に集まる人達とは別に俺の方に向かって来るオジサン達なんだけど、なんて言うか目が血走っているように見える。


 しかも口々に『よくも』とか『モーブさんの仇だ』とか言っているけど、死んでないよねとの問いに『肯定します』だったから生きてはいるハズなのになんで仇討ちみたいな雰囲気になっているんだろうか。


 それにしても子供相手に三十人近くいるみたいだけど本気だろうか。もう、面倒なのでケガさせないことだけを考えてからの『#目標固定__ロックオン__#』からの『電撃(スタン)』を放つと俺に向かってきたオジサンがバタバタと倒れる。


 その様子を見ていたノエルさんにギルマス、そして遅れてやってきたハンスさんが驚いていたが、タロだけは俺の所に真っ直ぐ走ってきて撫でてアピールが凄い。


 タロは何もしてないよね。


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