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9 最低姫は、世間を知らない

カイルは考える。


今は一見平和に見えても、隣国からは不穏な気配も聞こえてくる。


一国の王女という存在は、祝福を受けていると同時に狙われやすい存在でもある。「最低姫」なんて言われてるけど、目立つ容姿に寄ってくる奴も多い。実際、特にここ最近、姫さまは大人っぽくなった。姫さまを偶然見かけて、密かに好意を寄せてる男も多いと聞く。




だからオレはあの日決めた。




オレが持つ「秘密」は、姫さまを取り巻く悪意に対する「切り札」だ。



いつか姫さまが必要となった時、

オレはオレの生まれの真実を明かそう。


姫さまをそばでずっと支えるために。



◇◇◇




それにしても、、、



とカイルは先ほどのアーシャの様子を思い出していた。



あの時

「お願い、」

と姫さまが急にしおらしくなった。


態度が変わったことよりも、


「フェンリルさまはどこ?」

といつも口ぐせのように言っていたのが嘘のように、その名を口にしなくなったことに驚いた。


まるでキレイさっぱり忘れてしまったかのように•••


姫さまは、ずっと神官の息子のフェンリルさまに盲目的に好意を寄せていた。


フェンリルさまは、神官の息子でありながら生まれつき体が弱かったこともあり、剣や弓の稽古と乗馬に長年取り組んできた。


姫さまは毎日のように、周りが止めるのも聞かず、稽古に押しかけていた。


「カイル、今日もフェンリルさまの元に行くわよ」


「姫さま、今日は歴史と経済のレッスンがある。

せめてそれを終えてから行ってくれ。」


「嫌よ。あなたが代わりに受けといて。」


そんなやり取りを何度繰り返しただろう。

ある程度黙認されているのは、姫さまに甘い王様が、18歳で成人するまで姫さまをある程度自由にさせているからだ。



今の姫さまは、フェンリル様のことより、国の危機をどう脱するかに頭を悩ませている。



良い変化だ、

と思う。


だが、


と先程、姫さまが涙目で自分を見つめて「お願い」と言った時、果たしてオレは平静でいられただろうか?



そして、この腕の中に倒れてきた時の布越しに伝わる柔らかい感触を思い出す。





「無防備すぎるんだ、、、」




身体の奥を痺れるような感覚が襲う。



例えフェンリルさまに振り向いてもらえなかったとしても、自分がどれほど魅力的かということをもっと自覚して欲しい!!



これまでは姫さまの自分勝手な振る舞いや「最低姫」という評判が男たちを多少遠ざけてくれていた、とも思う。



だが、一度でも姫さまの魅力に気づいてしまえば、、、、





「ハアー」

と熱くなる顔をつい両手で覆った。

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