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15 異国の風は、姫を助ける

一方、縄で拘束されていたエドゥアルトは、ナイフが正確に爆弾の取手の中心を貫いた時、薄桃色の瞳で男を見据え飛び込んできた騎士の姿を捉えていた。


「まるで、ネコのような身のこなしだな。」


隣でラッセンが感心したように言い放った。


軽く頷く。

騎士にしては随分細い身体だが、確かに鍛えてはいるようだ


そしてもう一人•••

ナイフを投げていたのは、あの男か?


あの精度、そしてつねにあの騎士を守るような動きを見せているが、何者だ?


あの男は、敵に回したら少し厄介かもしれない••••



エドゥアルトは、ブラウン色に戻った瞳で、カウンター裏にある大きめの窓に目を向けながら考える。


騎士団と接触を持てるのはありがたいが、正体がバレた時、あの薬物がこの場にあるのは厄介だ•••••

やはりここは一度退避するか•••


エドゥアルトが退避のタイミングを見計らっていると、騎士は一人一人に怪我はしていないか、大丈夫か、スッと伸びた品のある姿勢で声をかけていた。



•••••それにしても•••先ほど聞こえてきた会話を思い出す。


「怖かったでしょう。もう大丈夫。僕に任せて。」


薄桃色の髪を跳ねさせながら騎士が、女性に声を掛けていた。その騎士はその後も女性の手を握りハチミツだのなんだの、甘い言葉を囁いている。


女性を前にして、隙だらけだろう‼︎



そして今、騎士は拘束されていた客たちの縄をほどこうとしていた。だが•••見ていると、縄をさらに絡ませ、余計仕事を増やしている気がしてならない•••••


こいつ、異様に不器用な奴だな•••



エドゥアルトがそう感じていると、カイル、と呼ばれていた男性がその金の瞳で一瞥いちべつをこちらに向け、騎士に声をかける。


「だからオレがやるから休んでいてくださいって言いましたよね?」


「大丈夫、僕もまだ手伝えるよ。」


騎士は頬を蒸気させ、水音のような心地よい声を響かせ答える。そして、頭からフードが外れ銀髪をさらけ出しているエドゥアルトの縄をほどきに来た。


間近で見ると、長めの前髪が揺れるたび、その中性的な整った顔立ちがあらわになる。細くて白い指は女性を思わせもするが••••いや•••まさかな•••



手元を見ると•••やはり、かなりもたついている••••


「今右手に持っている方を、そのままナイフで切ってくれ。」


声を掛けると、騎士は頭をもたげ、

「分かった」と穏やかに笑んだ。


騎士がナイフで縄の一部を切った時だった‼︎ 騎士はハッ としたようにもう一度誰かの顔を確認するように、その薄桃色の頭をもたげた••••


その視線は•••••銀髪の王子、つまりエドゥアルトではなく•••••••エドゥアルトの隣に先ほどまで同じく縄で縛られていた、黒い帽子を被ったメガネの男を驚愕の目で捉えていた!!



何事だ!?


「あぁっ•••」


突然、騎士は悲鳴のようなものを発し、そのメガネの男から目を離すことなく、剣に手をかけた‼︎ だが、近距離で目前にいるエドゥアルトを傷つけるのをためらったのだろう••••そのわずかな隙をついて、メガネの男がナイフを抜き、エドゥアルトの首を刺しに来た‼︎


人質の振りをして縄で縛られていたこのメガネの男は、エドゥアルトの隣に座り暗殺の機会をずっと窺っていたのだ


しまった!この騎士に意識を取られ反応が遅れた‼︎



エドゥアルトが自分の首をめがけてナイフを振り上げるメガネの男を防ぐよりも、騎士がエドゥアルトを庇うように覆いかぶさる方が早かった‼︎


騎士の華奢な肢体が、エドゥアルトの身体に密着し、彼の視界が一瞬、薄桃色の髪で覆われる。そして騎士にそのまま押し倒されるような形で、メガネの男の攻撃を逸らそうとする。


だが、メガネの男の方が一瞬早かった‼︎ 男が、騎士の華奢な背中にそのナイフを今まさに突き立てん‼︎ としたその時だった‼︎ 褐色肌の男が騎士を守るようにその身を投げ出し、ナイフは彼の左肩を貫いた!


誰もが、一瞬のことで声も出せなかった•••••

気づいた時には、その場には、カイル、と呼ばれていた男が肩から血を流し倒れていた••••

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