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第9話 異形化の影響

 目の前に這い蹲るヘビ型のモンスター。全身の表皮は燃え尽き、一部剥がれている箇所がある。


「ま、ギフトを使うまでもないな」


 俺は『桜樹廻廊』で手に入れた棒を、ヘビの胴体にただ振り下ろした。


 肉が潰れる音とともに、ヘビの身体は真っ二つにちぎれた。


「ちょっと、血が飛び散ってるんだけど」

「悪ぃ、力加減にまだ慣れてなくてな」


 恐らく、異形化の影響だろう。

 シズクが炎のブレスを使えるようになったのに対し、俺は単純に身体能力が底上げされている。


 特にダンジョンに入ってからは顕著だ。多分、今ここで垂直跳びをしたら軽くシズクの背丈くらいは跳べるだろう。


「で、どうよ。俺の力は?」

「うーん、地味?」

「うぐっ……だよなあ」


 ドラゴンブレスのインパクトには勝てんよ。

 こりゃ、順番が悪かったな。


 お互いの力に問題が無いことを確認し終えたので、次の階層に向けてダンジョンを進んでいく。


 一層にはさほど強いモンスターは出てこないようだ。時間節約のために、出てきたモンスターは片っ端から棒でブチブチと力任せに真っ二つにして、そのまま進む。


 少し進んだところで、モンスターがひと塊になっている小部屋を見つけた。いわゆる、モンスターハウスだ。


「お、モンスターハウスか」

「みたいね」

「ちょうどいいか。ここらで、お互いのギフトの確認でもするか」


 ここまで、異形化の恩恵である身体能力だけで突破してきた。だが、この先なにがあるのか分からないので用心しておくに越したことはないだろう。


「さっきは私からだったし、次はカズキからどうぞ」

「オーケー。ま、半分は残しておくから安心しな」


 この前のダンジョン探索と違って、今回はちゃんと準備はしてきた。


 俺は腰に括りつけていたポーチから、植物の種を掴み取り、それを周囲にばら蒔いた。


 種は小部屋の全体に散らばると、すぐさま発芽し、伸びた枝葉が一瞬にしてそこら中にいたヘビの身体を地面に括りつけた。


 そして、半分を残しヘビのモンスターは先端の尖った杭で串刺しにされる。


 イメージ通りだな。どうやら異形化の影響は身体能力だけでなく魔力にもあったようだ。角が生える前まで、確実にこんな大技は出来なかった。


「これが俺の<樹術使い>の能力だな」

「……ねえ、その力で人形とか作れない?」

「やったことないけど、多分できるな。何だ、シズクのギフトとなんか関係あんのか?」


 まあ、シズクは可愛い人形が趣味って柄じゃないよな。想像したら笑えてくる。


「そんなところ。ちょっと、やってみて」


 シズクに言われるがまま、樹木で人形を作り出す。


「ほらよ。で、どうするんだこれ? 俺じゃできてもお人形遊びくらいだぞ」


 不格好な踊りを人形に躍らせてみる。が、操り人形感が凄いな。コレに武器を持たせても簡単な動きしか出来ないだろう。


「私が魔力を通すからその人形、渡してちょうだい」


 人形の操作を切って、シズクに任せる。ぱたりと人形は倒れたが、それは一瞬だった。


 その人形はまるで意志を持った生き物のように、自然に立ち上がった。


「私のギフトは<式神使い>。器を用意してあげれば、自意識を持った使い魔を呼び出せるギフトよ」


 それの作った不格好な人形が、周囲を見回している姿は確かな意志を感じさせる。


「ついでに武器も作ってくれない? そうね、重さのある斧とかが良いかしら?」


 注文通りに木製の斧を作ると、シズクは人形にその斧を持たせた。


「じゃ、その斧でヘビを潰して回ってきて」


 その言葉一つで人形は歩き出し、樹木で地面に縛り付けられたヘビ達を叩き切りはじめた。


「うーん、この感じなら十体は同時にいけそうね」


 そう呟くシズク。こりゃ、負けてられないな。

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