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第6話 同類


 一限目が終わって、休み時間。

 どうにか静かにやり過ごそうと、さっさと教室から退散する。


 ガラガラと教室のドアを開けて、廊下に出る。


 全く騒がしいったらありゃしない。自然と深いため息が出た。


「「はあ」」


 ちょうど、隣の教室から同じように人がでてきた。そいつは俺と同時にため息を吐いた。


 思わず、そちらを向くと視線が交わった。


「ふーん、木塚くんもなんだ」


 こいつは確か隣のクラスの……葛篠だったか。近所にある神社で巫女のバイトしてるって噂話をクラスの男から聞いた。


 ダウナーな雰囲気を纏う彼女は、意志の強そうなつり目をうっすらと開き、こちらに向けている。

 そんな彼女の、下ろした前髪をかき分けるようにして、二本の角が生えていたのだ。


「おいおい、嘘だろ」

「本当よ。それにしても奇遇よね、お揃いだなんて」


 なんだその偶然ペアルックになったね、みたいな気軽なノリは。


「それじゃ」

「待て待て」


 慌てて、手首を掴む。


「なに?」

「いや、ちょっと話をしたいんだが」

「別に良いけど、今から?」


 時計を見れば、休み時間は残り五分だ。


「あー、放課後の方がいいか」

「りょーかい。じゃあ放課後、ね」


 疲れた。

 ダンジョン探索とは違う疲労が、肩に重くのしかかる。


 とにかく、放課後になった。俺は隣のクラスの葛篠を訪ねる。


「おーい、葛篠さんよ。早くしてくれ」


 げんなりとした、俺とは違いクラスメイトと会話をしている葛篠を急かす。


「はいはい。ちょっと待ちなさい。じゃ、そういうことだから、また明日」


 友人らしき人物に手を振りつつ、こちらに来た葛篠。


「じゃあ、木塚くん。行きましょ」

「いや、行くってどこに……」

「学校で長話をする訳ないでしょう? そうそう私、最近できた喫茶店のカフェが食べたいのだけれど」


 情報料って訳か。確かに、俺が一方的に詰め寄ってる訳であって。


「オーケー。学校近くに出来てた、アレか」


 歩いて五分もかからんな。

 早速、向かうとしよう。



 ――喫茶店。


「すいませーん。このデラックスイチゴパフェ二つください。で、話ってなあに?」


 何ってそりゃあ……


「角のこと以外あるか?」

「ま、でしょうね」


 ここで頼んだパフェとは別に頼んだコーヒーを店員が持ってくる。

 彼女はそれを一口、飲んでから口を開いた。


「ちょうど良いわ。説明してあげる。まあ、私もパパから聞いた話なんだけど」

「そういや、葛篠の父さんは探索者だとか聞いたことあるな」

「よく知ってるわね」

「噂話をチラッとな」

「ふーん、まあいいわ……で、この角の事ね。パパが言うには、ダンジョンが生まれる時、近くにいた誰か一人だけがそのダンジョンに選ばれることがあるらしいの」


 ダンジョンに選ばれる……


「二十年前のダンジョンが生まれたばかりの頃。生まれるペースが今とは比じゃない位、多かったらしいのだけど、その時にはそれなりに多かったみたいよ」

「ああ、だから最近だと聞かないのか」

「そ。それなりに珍しい現象のようね」


 の、割にはこうして二人揃って角を生やしてるのだが、まあそういう事もあるか。


「ここまでは別にいいのよ。問題はここから」

「問題って……見た目以外に何か不都合があるのか?」

「あるのよ。木塚君、探索者でしょ」


 こいつ、よく知ってるな。


「まあ、そうだけど……それがどうした?」

「この症状になった人はダンジョンに入ってもギフトを得られないの。ある意味、この異形化がギフトの代わりね。実際、そういったギフトもあるのだしおかしな事じゃないわ」


 いや、待て。おかしいぞ。ギフトは誰しも一つだけ開花するものだ。


「気づいたみたいね。ダンジョンに入った事がある探索者が、ダンジョンの誕生と共に異形化する。すると、ギフトを二つ持った探索者の完成よ」


 なるほど。昨日、ダンジョンで調子が良かったのもこの異形化のおかげだったのか。


「だったら良いことだろ? 探索者として手札が増えるのは」

「デメリットがあるらしいわ。パパの知り合いに同じ境遇の人が居るらしいのだけど。その人曰く、長期間ダンジョンに入らないでいると、死ぬらしいのよ」


 ふーん、死ぬのか……って、大問題じゃねえか!

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