日々
歩きスマホはダメだと頭で分かっていながら、私は構わずにそれを続けた。
「東京 新卒 募集」と検索し、そして画面を見ながらため息をつく。
大学4年の秋、私は就職活動に追われていた。
4年の夏、私は人よりも少し遅れて活動を開始したため、その分努力をせざるを得なかった。
遅れた理由はなんのことはない、社会に出る不安を拭えなかったからだ。
ようやく社会の一員になるための準備を始めようと思った時、周りの人間の多くは、すでに社会へのチケットを手に入れていた。
その遅れのせいなのか、その後の努力の方向性が間違っていたのか。
私は、この時期になっても進路が決定していなかった。
「あれっ、アカリー!久しぶりーっ!」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げる。
そこには、私がいつも大学で一緒だった、前田ユウコがいた。
ユウコは美人で明るく、学内のミスコンにもエントリーされたほどだ。
なぜそんなユウコと私が友達になれたのかと、私は今でも時々疑問に思う。
「心配してたんだよー?LINEしてもアカリ全然返してくれないし…」
ユウコは美人で、明るくて、そして、就職活動も早々に終わらせて。
「あぁ、ごめん。」
そんなユウコに、私は、
「ちょっと、返す気分じゃなくて。」
少しの劣等感を抱くようになっていた。
ユウコに話しかけられても、私は歩きスマホを止めずにいた。
ふと、頭に浮かんだ言葉を検索してみる。
なぜその言葉が頭に浮かんだのか、理由はわからない。
ただ、自分でもよくわからないが調べてみようという気になった。
膿という言葉には、「始末しないとスッキリしないものの例え」、という意味があるらしい。
なるほど、それなら膿とはつまり、自分のことなのかもしれないと、私は思った。




