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第7話 遠足

 学校で行われる授業は正直退屈だった。

 読み書きは、生まれた時から予習していたため何も問題はなかったし、ちょっとした数字の計算等の授業は、前世の記憶持ちには不必要な項目だった。

 この世界の情勢や、魔物の生態や生息分布なんかは、設定した当人である私が誰よりもよく知っている。


 あとは実習なのだが、これは各職業に分かれて行われた。


 各自の職業に関しては、この職別クラスわけの際、各個人で自分のステータスを確認して、書類に記入して提出する。その時に学校側で改めて調べるような事はせずに、自己申告である。


 余談なのだが、まだ自分で発言できない赤ん坊の職業を調べる際、冒険者ギルドを通して中級職の人に依頼するのだが、その時に支払う依頼料はそこそこな額らしい。

 それだけ中級職は重宝される立場らしく、一回鑑定スキル使うだけでそこそこな報酬が得られる。

 中級職レベルでそこまで好待遇なら、そりゃあそれ以上強くなる必要性を感じなくなるわけだ。


 ちなみに、何故そんな鑑定スキルを使ってまで、赤ん坊の職業を知りたいのかと言うと、物心つく前から、その職の英才教育をするための貴族のたしなみ、なのだという。


 まぁそんなこんなで、自己申告でクラス分けされる実習授業。

 全職のスキルが使える私は、どこのクラスに行こうかと本気で悩んだ。


 ファイタークラスの実習は木剣を使っての模擬戦がメインとなっている。

 たとえ木剣を使っても、おそらくは力20000の私の攻撃はカスッただけでも致死量になるだろう……未来のある子供の人生に終止符を打つわけにはいかないので却下。


 ナイトクラスの実習は二人一組となり、攻撃側と防御側にわかれる。もちろんメインは防御側で、スキルを使って攻撃を耐える訓練を行う……え?何それ?何が楽しいのソレ?どM育成訓練はちょっと趣味じゃないんで遠慮したい。


 マジシャンクラスは標的となる離れた的に魔法をぶつける練習だ。

 初期魔法のファイアボールでも、魔力20000の私のファイアボールだと、リアルに「今のはメ〇ゾーマではない、メ〇だ」を実践できてしまう。うっかり的を撃ち抜き、その先にある建屋まで燃やしてしまっては大騒ぎになってしまうので、あえなく断念。

 まだ実家からの仕送りは止められたくない。


 そんなわけで、ファイタークラス・ナイトクラスの模擬戦でケガした連中にひたすらヒールをかける、という回復魔法の実習がメインのプリーストクラスを選択した。

 このクラスなら、過剰回復したところで何も問題はないだろう。


 そして、世間的には私の職はプリースト、という事になり、何事もなく平凡で退屈な日々が過ぎていき、私は8歳となった。


 この学年になると、実際に魔物が生息する場所に行き、実戦を行うという一大イベントがある。

 前世の世界でいう、ちょっとした宿泊学習である。


 実戦に行く場所は『オルメヴァスタ大草原』という初心者用の魔物しかいないMAPである。

 というよりも、この世界の全ての国と国を結ぶ道は、全てこの『オルメヴァスタ大草原』なのだ。


 どの種族のどの国から冒険を始めても、とりあえずは倒せる魔物しか出現しないようにするため、この様な仕様にしてある。


 ゲームでは、プレイを開始するとまず、選んだ種族が属する国のハンターとなり、冒険者ギルドの新人ハンターとして冒険が始まる。

 全ての国への移動を可能にするため主要通路は全て初心者用MAPになっている。


 そして、ハンターランクを上げるごとに、より危険度の高い魔物が出る、通路から一歩外れた森や洞窟、砂漠や山岳地帯などの通行許可がおり、最終ランクになる事で『最古の魔獣』が生息する『(いにしえ)幻林(げんりん)』へと行けるようになる、というシステムになってる。


 ゲームの仕様上、魔物は生息地域から出る事はなく、減れば減った分だけ『最古の魔獣』によって再度生み出されるが、絶対数は増える事はない、という設定にしてあった。


 まぁその設定のせいで、各町々に魔物が出現する事もないし、町々を移動する時に出現する、初心者用のザコモンスターを倒せれば生活に支障がない状態になっている。


 そりゃ、この世界にはとんでもなく強い魔物がいても、決して襲ってこない保障があるんならレベル上げもしないよな……この世界に住人が中級職で止まってる最大の理由って、もしかしたらソコなのかな?

 いや、お前等もっと危機感持てよ!?

 今まで大丈夫だったからって言っても、強い魔物が突然襲い掛かって来ないなんて保障がどこにあるんだよ!?


 まぁそれはともかく、魔物との実戦訓練をしに『オルメヴァスタ大草原』行く、といっても、ただたんに町から一歩外に出るだけの行為である。


 とはいえ、初めての実戦である。

 私はやっとゲームと同様の事ができる事に、年甲斐もなくワクワクしていた。

 ……いや「年甲斐」と言っても、今の私の実年齢は8歳なので、別におかしい事じゃないんだけどね。


 もちろん、子供達だけで行くわけではない。

 学校の教員5名と、護衛として冒険者ギルドより5名のハンターが雇われており、そこそこレベルの高い……といっても全員下級職だが……まぁそんな大人達10名に引率されての、半日間の自由行動である。

 う~ん……半日の自由行動って事は、宿泊学習っていうよりも、ただの遠足感覚かもしれない。


 ともかく、何かあると大変なんで10名も引率の大人がいるが、町の入り口付近にいるのは、基本レベル1でも対処可能な魔物だけなんで、子供とはいえ、ちゃんと訓練は受けてるんで問題無く対処できるだろう。


 そう、雇われたハンターが実は誘拐犯で、貴族の子供が多く、バラバラに行動している隙をついて2・3人誘拐して家族に身代金を要求しよう、とか考えたりしていなければ……


「……ん?」


 この機に魔物狩りまくってレベルを上げまくってやろう、とか意気込んでいたタイミングで、隣にいたハズのルカが突然いなくなった。


 私の視線の先には、ルカを抱えて逃走しているハンター5人組の姿。

 そして悲鳴を上げているルカと、一緒にさらわれたその他クラスメイト2名


 ………………


「いや、ちょっと待てよ!!!!?」


 突然の出来事に、おもわず大声でツッコミを入れてしまった。


 いや、ホント何コレ?どういう事よ!?


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