第76話 新設定
そんなわけでやって来ました。
レベル上げと言えばこの場所『古の幻林』!転移スキルのおかげで、移動時間がだいぶ短縮できるのは非常にありがたい。
この場所はもうおなじみであり、ソロでも何とかなるレベルになっているルカはともかく、同レベル帯でのパーティプレイじゃないとヤバイレベルの愛花からは、若干の緊張が伝わってくる。
もっとも、もっとヤバイレベルだったルカを育てたノウハウがある私が補助に回れば何の心配もないだろう。
愛花よ!大船に乗ったつもりでいるがいい!
「ねぇアンちゃん。西野も一緒になってレベル上げに来てたんじゃ、私と西野の戦力差が変わらないんじゃないの?」
ルカとの戦力差を縮めるためのレベル上げにルカが同伴してる事への疑問を愛花から投げられる。
「実はルカにも、もうちょっと強くなってもらう必要性が出て来たのですよ……それに大丈夫ですよレイナさん。そのための経験値10倍アイテムです」
ルカも経験値3倍アイテムを装備してはいるが、それでも10倍という単位はバカにできない。いずれはルカに追いつくだろう。そして、私の計算が正しければ、追いつくのは、私が望む状態になってからだろう。
ただ、放っておくと、あっさりと追い越してしまうので、強さが同じくらいになったら、2人から経験値倍増アイテムは没収しておく必要があるかもしれないが……
「まぁともかく、レイナさんには、いったん今の職業を極めてもらいます。そしたらその後で、残ってる下級職と中級職を全部極めてもらいます」
「うへぇ~……大変そうだなぁ……」
私の説明を聞いて、若干嫌そうな表情になる愛花。
まぁ、この説明だけを聞くと、果てしなく長く感じるだろう。特に、地道に下級職からコツコツと正攻法でレベルを上げていた愛花には……
でも、ここからは裏技、というよりもチートに近い方法でのレベル上げだ。
どこよりも経験値の多いマップである古の幻林で、私という安全が確保できる存在がいるうえに、経験値は通常の10倍!
もう、インチキだと言わざるを得ない状態だ。
「でもルーナ……私はもうレベル上げなくても、ルーナ以外には負けないと思うんだけど?」
「だよね?ってかアンちゃん。どれくらいまで強くなるかっていう明確な目標は設定されてるの?」
2人から疑問の声が上がる。
まだ説明途中なので、少しは落ち着いて話を聞いてほしいものである。2人ともせっかちすぎじゃないかな?
「まずルカは、上級職のアサシン・ハイウィザードをマスターしているので、今のソーサラーもマスターしてもらって、その後でプリースト系の上級職であるビショップと拳聖を極めてください」
ルカへと指示を出して、その後で愛花の方を向く。
「レイナさんは、下級職・中級職をマスターしたら、ファイター系の上級職のソードマスターとアックスマスター。ナイト系の上級職ロイヤルガード……は今やってましたね。あとはパラディンを極めて、後は新しく設定したスナイパーという上級職をマスターしてください」
昨日徹夜して考えたプランを2人へと発表する。
ちなみにスナイパーは、管理者権限スキルで新たに設定した中級職アーチャーからランクアップが可能になる職で、アーチャーはシーフと同じ特殊中級職扱いになっている。
基本装備は弓矢を設定し、スキルは命中率補正系スキルや、相手の攻撃先読みの回避系スキルを設定している。
「何かとてつもなく途方もない道のりに聞こえてくるなぁ……その辺を極めると私達どうなるの?」
よくぞ聞いてくれた!
それは先程言った上級職を5つずつ極める事で、私が新たに管理者権限スキルで設定した特殊上級職……
「ルカはその5つを極めると『魔王』職。レイナさんは『勇者』職になれるようになります!」
魔王は、味方すらも巻き込むような広範囲の強烈な攻撃魔法スキルや、敵・味方関係なく極端にステータスを下げるデバフスキルを覚える。
そして勇者は、聖属性っぽく見えるが、そんな属性設定してないので、実質無属性の強烈な攻撃魔法スキルや、敵・味方関係なく極端にステータスを上昇させるバフスキルを覚えるように設定している。
「ルーナ……昨日の夜、ずっと一人で何かブツブツ言ってるなぁとは思ってたけど、そんな設定してたの?」
「やる事がガチすぎるよアンちゃん……『魔王』とか『勇者』なんて、他の人から見た称号的な何かって感じでいいじゃん……」
2人から、何やらスゴイ呆れたような表情を向けられる。
え?アレ?私けっこう頑張ったのに褒めてもらえない?
「え?すごくないですか?勇者や魔王といえば、RPGの主役ですよ!そんな主役に名実共になれるんですよ!」
「え?いや……別にそこまでは……」
「あ~……うん、私ゲームとかあんまりやった事なかったからよくわからないけど、アンちゃんが言うならそうなのかもね」
ダメだコイツ等!!?わかってない!?
「ともかくルーナ。レベル上げするなら早くやろう。先は長いんでしょ?」
「だね。無駄話ばっかしてる場合じゃないしね」
む……無駄……
泣いていいかな?私?




