第69話 世界の現状
「管理者権限発動……異世界オルメヴァスタの時間の流れを地球基準に変更」『ピンポーン』
とりあえず色々と弊害のあった、時差のズレを管理者権限を使って訂正する。
にしても、成功したかどうかの、この『ピンポーン』って音がだんだん鬱陶しくなってきたな……何でこんな音に設定したんだろう私……
「と、まぁこんな感じで、ゲーム内の設定を自由に変更できるスキルを手に入れたんですよ」
実際にスキルを発動させて、ルカに色々と説明する。
「ルーナ……いくらなんでもソレはやりすぎじゃない?そんな事までできちゃったら、もうこの世界の神様みたいじゃない……」
あ、はい。『みたい』じゃなくて、実際に神様になっちゃってます私。
いや、まだ神様(仮)みたいな感じかもしれない。これで不老不死が加わると(仮)が消える感じなのだろう。
まぁその辺はややこしくなりそうだったので、ルカには説明していない。
「それはそうと、ルーナのステータスが『鑑定不能』ってなってるんだけど、何で?」
さっそくバレた!?何を勝手に人様のステータスをホイホイと覗き見しまくってるんだよコイツ!?
「あ~……これも管理者権限スキルで見れなくしたんですよ。鑑定されるたびに『管理者』職って何?ってつっこまれるのが正直鬱陶しかったので対処したんですよ」
もっともっぽい事を言って、適当に言い訳してみる。
他の人から、私のステータスがどう映っているのかはわからないけれど、神になる事でステータスがバグったせいで鑑定不能になっているのだろう……たぶん。
まぁ確信はないけど、私が自称・神のステータスを鑑定しようとした時みたいに見えているのだろう。
「ふ~ん……まぁそれはともかく、魔物が突然行動範囲広げた理由がルーナの仕業だってのはわかったけど、それで今後はどうするの?」
反応軽いなぁ~……いや、無駄につっこまれるよりはいいんだけどね。
で?何だって?今後?別に何もする気はないかなぁ?
元々、私の作ったこのゲーム世界を、皆が永遠に楽しめればそれでいいと思って行動してたわけだから、今の『魔物との闘いでスリリングな日常』って状況こそ、私が望むべき世界と言ってもいい。
たぶん、管理者権限スキルを使えば、最古の魔獣の不死設定を無くせて討伐が可能になる。いや、それ以前に、管理者権限スキルを使えば、この世界から最古の魔獣含めて全ての魔物をいなくする事もできるだろう。
しかし、そんな事をするつもりは毛頭ない。
私の目的は世界平和なんかじゃなくて、ゲーム世界を永遠に楽しむ事。
魔物が出現しなくてレベルが上げられないのに、対人戦だけはできるRPGって何?
私の作ったゲームを、そんなクソゲーになんてさせるわけにはいかない。
「とりあえずは何もしません……まぁ様子見ですね」
そんなわけで、ルカに今後どうするか、の返答をしておく。
「いいの?その管理者権限スキルっていうの使えば、この世界を平和にできるんじゃないの?」
やっぱりルカも、管理者権限スキル使えば魔物消せる事に気付いてたか……
「平和にしてどうするんですか?魔物の脅威がなくなれば、また貴族共が権力争いし出して、正直者が馬鹿を見る世界が出来上がりますよ」
「あ……」
そこまでは考えていなかったのか、ルカは言葉を失う。
「ルカはこの世界の平和を脅かす存在になる事を望んでたのではなかったのですか?」
既に『魔王』の異名を持ってるから、目標を達成していると言えなくもないけどね……
「そうだった……私、最近は魔物退治ばかりしてたから、力を持たない人達の事ばかりに頭がいってた……」
あ~……まぁそれもそうだよね。
魔物がいて困るのは貴族だけじゃなくて、善良な一般市民もそうだもんね。
どっちを優先するかなんだろうけど……
管理者権限スキル使って、魔物の攻撃対象をハンターと貴族だけに絞ってみる?いや、それはさすがに違和感があるな。
「わかった!私、魔物から力の無い人達を守って、犠牲者を出さないようにして、今の微妙なバランスの平穏を守ってみせる!」
あ、それでいいんだ?
何かルカがやる気だしてるみたいだから、とりあえずは今の状態維持でいいのかな?
「そうですねルカ……権力に固執する貴族がいなくなった時には、私も管理者権限スキルを使って、魔物をこの世から消す事も考えておきます」
考えるだけで、実行するかどうかは別だけどね。
とりあえずはルカが納得するような状態になっていれば文句は出てこないだろうから、適当にお茶を濁しておく。
それにしても『権力に固執する貴族がいなくなったら』ね……自分で言っといて何だけど、そんな時代は、はたしてくるのだろうか?




