第48話 激戦の終わり
最古の魔獣の助走をつけての大振り攻撃を大剣で受ける。
カウンター気味に反撃しようと思っていたのだけれど、攻撃の威力を殺しきれずに、再び吹っ飛ばされる。
そして、再度助走をつけての攻撃。剣で受けて吹っ飛ばされる私。
同じ動きを焼き回ししているかのような一連の流れが出来上がる。
「……私に反撃させる暇を与えない作戦ですかね?」
畜生の分際で何とも生意気な。
不老不死だけあって、無駄に知恵をつけているようで、非常に厄介である。
「でも……所詮は浅知恵ですね……」
駆けてくる最古の魔獣を待ち構えてるのではなく、私も大剣を大きく振り上げた状態で、向かってくる最古の魔獣へと走っていく。
そうくるとは思っていなかったのか、少し狼狽えるような動作をとりつつも、急いで私を迎撃しようと、その場で大きく腕を振り上げる。
「遅いですよ……隙だらけになってしまってますよっ!」
私は一言放つと同時に、振り上げてる腕とは逆の腕を、思いっきり斬りつける。
軸足代わりになっていた腕を斬られた最古の魔獣は、自重を支えられなくなり、そのまま前へと転ぶ。
「うげえぇっっ!!!?」
ふところに潜り込んでいた私は、見事に、倒れてきた最古の魔獣に潰される。
重たい!?重たいぃ!!?ってか苦しいぃぃっ!!?
「グギャアアアァァァァーーーー!!!?」
最古の魔獣が、今までにないような叫び声を上げたと同時に、私の体に覆いかぶさっていた重りがなくなる。
何が起こったのか理解できずに、もがき苦しむように暴れている最古の魔獣へと目を向けると、口から大量の血をまき散らしていた。
そして、視線を落として見た私の持つ大剣には、べっとりと最古の魔獣の血液が付着していた。
「な……何がどうなって……?」
呼吸を整えながら、このよくわからない状況を観察してみる。
最古の魔獣をよく見てみると、口から血を吐き出している他にも、顎からも大量の血が流れていた。
もしかしてコレ……
最古の魔獣のヤツ、コケた時私が握っていた大剣の刃の部分に倒れこんできてたのか?
自らの全体重をかけた勢いで、顎が剣の刃に当たって、そのままの勢いで口内まで刃を貫通させた感じなのだろうか?
もう、敵対していた私すらも眼中に収めていないようだった。
ただただ、その痛みに耐えられずに、もがき苦しみ、ひたすら暴れるだけだった。
……うん、すっごい痛そうなのは、はたから見ててもわかるわ。
冷静になって、よく観察してみると、最古の魔獣の鼻からも血が出てるから、たぶん、顎から入った剣先が口内も貫通して、鼻にまで抜けてるんだろうなぁ……そりゃあ痛いよ。少なくとも私は体験したくない。
そして、このタイミングで、先程セットした『リヴァイブ』のチャージが終わる。
う~ん……この状況をみると、もう必要ないかもしれないなぁ……
「リヴァイブ!……エクストリーム・ロックボム、セット」
せっかくセットし終わったので、とりあえずはリヴァイブを使っておき、そのまま次の魔法をセットする。
いやね、もうこの状態まできたら、後は通常物理攻撃だけで倒せるんじゃないか、とか思ったんだけど、さっきから最古の魔獣すごい暴れてて、近づけないんだよね。
攻撃されないけど、コッチからも攻撃できない、って感じになってしまっている。
そんなわけで、遠距離からの魔法攻撃を使わざるを得ない状態である。
「エクストリーム・ロックボム!!」
チャージし終えた魔法を即使用する。
地面からの魔法攻撃を受けた最古の魔獣の身体が、一瞬浮き上がる。
「グガアァッ……!!」
さらに痛みが加わるとは思ってもみなかったのか、突然の魔法攻撃に驚きの声を上げる最古の魔獣。
どんだけ理性無くして暴れてたんだよ?私が生存してここにいる時点で、再攻撃の有無くらいは予想しとけよ……
そして、その魔法による衝撃で、暴れるのを止める最古の魔獣。
「ハイ・ロックスラッシュ!!」
もちろん、そんなスキを見逃す私ではない。
今出せる全力で持ってスキルを、最古の魔獣の首へと向かって放つ。
吸い込まれるように、キレイに首へと入っていった私の剣は、見事に最古の魔獣の首を切り落とした。
「……この世界に転生してきて、初めて死を覚悟しましたよ……誇っていいですよ。アナタは強かったです」
まだ聞こえているのか?そもそもで言葉を理解できるのか?
そのあたりはよくわからなかったが、私は思った事を素直に最古の魔獣へと伝えていた。
そして……
最古の魔獣の口から吐き出された、一冊の分厚い本と、私のレベルが20に上がった事で、最古の魔獣を倒した事を確認する。
私は、疲れた体を引きずるようにして、落ちた分厚い本をゆっくりと拾い上げる。
「うあぁ……血と唾液でベトベトなんですけどコノ本……」
文句を言いつつも『不老不死の書』と書かれた、その本をさっそく開いてみる。
このスキルを目標にやってきたのだ。年甲斐も無く少しワクワクしていた。
『この書には不老不死の秘術を記す。この書を読み終えた時、貴方は不老不死の力を得ているだろう。しかし肝に免じておくがよい。この力は本来おいそれと他人に与えるべきものではない。そのため、貴方が不老不死の力を得た後には、自然とこの書が消滅するように細工してある。』
何やら思わせぶりな前文の後に、ひたすらに不老不死の何たるかが書かれているようだった。
とりあえず、ここまで読んだ時点では、まだ私のスキル欄に不老不死が追加された感じはない。
っていうかちょっと待って!?今、聞き捨てならない一文が書いてなかった?『この書を読み終えた後』!?
まさか……これ、この分厚い本を全部読まないとダメなの!?どんだけ時間かかるの!?
確かにゲーム内だと、スキルの書を読む事で、そのスキルを取得できるって設定になっている……なっているけど……
「こんなに分厚い本になっているなんて聞いてないんですけど!!?」
私以外誰もいない古の幻林4層に私の叫びが響き渡るのだった。




