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第36話 村人達

「毒を以て毒を制す、という訳か……まさかハンターギルドの子飼になっていたとはな……捕まらんわけだ」


 何やら一人でブツブツと喋りだす村長と思われるおじいちゃん。

 色々知っている風に喋り出しているせいで、周りにいる人達はどう反応したらいいのかわからない、といった表情になっている。

 たぶん私がそっち側に座っていたら、間違いなく「知っているのか雷電!?」とか空気読まずにノリノリで言ってただろう。

 それくらいに、周りの人達の視線が『ちゃんと説明しろよ村長!?』と訴えていた。


「困っている人間を助けに来るなど、ずいぶんとイメージに合わない事をする……」


 あ、このおじいちゃん、周りの人達に説明する気まったく無いな……

 完全に自分の世界に入っちゃってるよ。


「私のイメージというモノがどういったモノなのかは存じませんが、私はただ、私がやりたい事をやっているだけですよ……ギルドの子飼というのも、そんなものになった記憶はないので心外ですね」


 おじいちゃんが、周りに説明する気皆無なんで、私もそれに合わせるようにして、周りはいないものとして話をする。


「なるほど『やりたい事をやっているだけ』、か……儂から見れば、野盗も貴様も大差ないな……」


 なんだこのおじいちゃん?ずいぶんとケンカ腰だな。


「ずいぶんと突っかかってきますね……私が何か気に障る事をアナタにしたでしょうか?」


「親族を貴様に殺された、と言えばこの態度も察してもらえるか?」


 なるほどね。

 裏依頼の対象にでもなったのかな?それとも、その対象の護衛にでもついていて巻添えくらった?いやいや、もしかして懸賞金目的で私に襲い掛かってきて返り討ちにした連中の一人か?


「……心当たりが多すぎて誰がそうだったのかわかりませんね」


 私がボソッとつぶやくと、おじいちゃんは額に青筋を立てて勢いよく立ち上がる。

 怒りで体を震わせているおじいちゃんを、周りの人達がなだめだす。


「ええと、村長がいきなりケンカ腰で対応した事は謝る。すまなかった……気分を害してしまったのはわかるが、お嬢さんも、これ以上村長を煽らないでくれないか?」


 おじいちゃんをなだめていた一人が私へと話しかけてくる。

 う~ん、別に煽ったわけじゃなくて、思った事をうっかり口にしちゃっただけなんだけなぁ……


「いえ、私の方も少々大人げない事を言ってしまいましたね……申し訳ありませんでした」


 とりあえず、謝られたので謝り返しておく。


「それで?いかがいたしましょうか?依頼を受けたのが私では不服なのでしたら帰りますが?」


 冷静に会話ができないおじいちゃんではなく、その周りにいる人達へと向かって話しかける。


「いや、不服はない。俺達はお嬢ちゃんが何者なのかは詳しくは知らないが、強いんだろう?だったら是非野盗討伐をお願いしたい」


「何を勝手に!?コイツは『銀髪の堕天使』といわれている、懸賞金大金貨300枚を超える極悪人だぞ!!おいそれと信用するんじゃない!」


 おじいちゃん鬱陶しいな……

 せっかく話がまとまりそうだったのにふりだしに戻すなよ……


「いいじゃねぇかよ村長。このお嬢さんが勝てばこの村は平和になる。逆にお嬢さんが負ければ村長の恨みが少しは晴れる。村長にとっては良い事しかねぇんだしよ」


「そうだぜ村長。仮にお嬢ちゃんが負けても、このお嬢ちゃんが勝手にやった事にして依頼の事は黙ってれば俺達がこれ以上不利な状態にはならないんだしな」


 必死におじいちゃんを説得している周りの連中。

 でもさ、そういう事は当人目の前にして言っちゃダメなセリフじゃない?


「だいいち何だよ村長。『銀髪の堕天使』って?大金貨300枚の賞金首?この嬢ちゃんが?」


「どうやったらこの若さで、そんな大それた事できるんだ?」


「誰かと勘違いしてんじゃねぇのか村長?もしくはそんな物語の本でも読んで記憶がごっちゃになってんじゃないのか?」


 あ~あ……おじいちゃん間違ってないのに、周りの人達の反応が、完全にボケ老人扱うみたいな感じになっちゃってるよ。


「ええい!もういい!勝手にしろ!どうなっても儂は知らんぞ!!」


 おじいちゃんは怒ってそのまま部屋から出て行ってしまう。

 鬱陶しいおじいちゃんだけど、これはちょっと可哀想かも……


「えっと……それで、私はどうすればいいのでしょうか?」


「ああ、村長から許可は出たから、野盗退治お願いするわお嬢さん」


 おいおい……『許可は出た』って、おじいちゃん『勝手にしろ!』って怒って出て行っただけじゃん!?いいのかそれで?

 ……まぁいいか。この後のこの村での人間関係なんて私は知ったこっちゃないし。


「わかりました、承りましょう。それで、私はどうすればよろしいでしょうか?野盗のねぐらとか教えていただければ乗り込みますが?」


 その方が手っ取り早く終わるので提案してみる。


「いや、日程的に奴等そろそろココに来る時期だから、お嬢ちゃんにはこの村にとどまっていてもらいたい」


「そうだな。奴等が来た時に、嬢ちゃんはこの村に偶然宿泊していた旅人って事にしておいた方がいいな」


「ああ、それならお嬢さんが負けた時、偶然いただけの旅人が余計な手出しをしたってだけで、俺達は関係ないって事にできるしな」


 だからそういうセリフは本人のいない所で喋れよ!?

 この集会にいる連中、村長以外は息ぴったりだなオイ。

 ってか完全に、私が野盗にやられるていで話進めてるだろ。


「はぁ……ツッコミたい事は山ほどありますが、とりあえず私はどちらで待機していればよろしいのでしょうか?」


「ああ、この村にも小さいがちゃんと宿屋があるから、そこまで案内しよう」


 金出して泊まれってのかよ!!?

 こういうのって、誰か村人の家に無料で泊めてもらうのがセオリーなんじゃないの!?


 まぁ金持ってないわけじゃないけど、何か釈然としないなぁ……

 この村救ってやるのやっぱやめちゃおうかな……


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